#250「ビジネス頭の体操」 今週前半のケーススタディ(3月22日〜3月24日分)
はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。
→部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。
3月22日(月) ミネラルウォーターの産地、シェア3位はあの県!?
1992(平成4)年の国連総会で決定し、翌1993(平成5)年から実施した「地球と水を考える日」です。
地球的な視点から水の大切さ、貴重さを世界中の人々がともに見詰め直す日とされています。
水。
記念日の趣旨からすると水資源の確保などが正しいのでしょうが、今回は身近なところでミネラルウォーターについてみていきます。
まず、そもそも「水と安全はタダ」という日本で水を買うようになったのはいつ頃からなのでしょうか?
サントリーHPによると、ミネラルウォーターは1980年代の健康意識の高まり、水道水の質の問題、海外旅行でミネラルウォーターに触れたこと、などによって家庭用の市場が立ち上がったそうです。途中、1994年の猛暑・水不足や災害時の備蓄意識の高まりもあり、市場は拡大を続けました(下図)。
上記のデータは12年までですが、2019年までのデータもありましたので転載します(食品産業新聞社)。
2019年は20年ぶりの前年割れとなっていて、これは冷夏と価格改定が要因です(2018年は猛暑で10%以上伸びた揺り戻しもありそうです)。ただし、金額ベースでは増加しており、2019年のミネラルウォーター市場規模は、約3,200億円となっています。
このミネラルウォーターの一人当たり消費量ですが、諸外国に比べると少なく、水道水の質が高い日本の特質が現れています(同新聞社)。
ミネラルウォーターのうち、1割弱は輸入品です。
国別では、以下のようにTOP3で9割以上を占めています。
☑️ 1位 フランス 55.1%
☑️ 2位 アメリカ 32.1%
☑️ 3位 イタリア 6.3%
ちなみに、国産のミネラルウォーターの生産地、何県のシェアが高いでしょう?
1位はなんとなく予想つくと思いますが、TOP3は以下の通りです。
☑️ 1位 山梨県 40.7%
☑️ 2位 静岡県 15.4%
☑️ 3位 鳥取県 9.5%
(いずれも出典は日本ミネラルウォーター協会HP)
家庭用の水、というと、自宅にサーバーを置き、そこに詰め替え用のボトルが届けられる、宅配水という商品もあります。
「日本宅配水&サーバー協会」によると、2007年には280億円だった市場規模は、2020年には1,772億円、2021年推計は1,790億円となっています。
牛乳なども含む日本の飲料全体の市場規模は約5.1兆円ですので、「水」関連市場はその1割を占める存在、ということが分かります。
→水。商材として差別化が難しいと考えられるが、メーカーはどのようなマーケティングを行い、消費者はどのような選択を行なっているのだろうか?
3月23日(火) 「気象マーケティング」は「感覚マーケティング」へ!?
世界気象機関(WMO)が、発足10周年を記念して1960(昭和35)年に制定した「世界気象デー」です。
1950(昭和25)年のこの日、世界気象機関条約が発効し、WMOが発足しました。
WMOは、加盟諸国の気象観測通報の調整、気象観測や気象資料の交換を行っている世界組織で、日本は1953(昭和28)年に加盟しました。
気象。
実は2月16日が「天気図記念日」ということで、気象庁と気象協会、ウェザーニューズという「天気予報会社」についてご紹介しました(下リンク)。
天気は人々の生活に大きく影響するものです。
近年では、この天気をさまざまなサービスやマーケティングに活用しようとする動きが活発です。
そこで今回は「気象ビジネス」について調べてみました。
国土交通省の交通政策審議会第30回気象分科会(令和2年4月)の資料(36枚ありますが、気象に関する規制緩和から体制、民間での活用状況まで非常によく纏まった資料です)から、気象データの活用の広がりがわかるデータをご紹介します。
その前提として、日本の気象に関する規制は平成5年の気象業務法改正により大きく転換したことを押さえる必要があります(下図)。
従来、自治体や関係機関(主に日本気象協会ですね)、報道機関が独占していた気象庁の観測データに、民間気象業務支援センターを通じて民間事業者がさまざまなサービスに活用することができる体制になりました。
この気象データを活用する事業者の数ですが、増加傾向にあることが分かります(下図)。
自らの事業に気象庁のデータを活用している事業者が増えていることが伺えます。
気象庁のデータを、事業に活用って?と思われるかもしれませんが、以下のようなことに活用されているそうです(同資料より)。
実際、IBMは2017年3月から企業向け気象予報サービスに参入しています。
また、この分野での起業も目立ちます。一例として2016年に設立されたClimaCellは「気象テクノロジープラットフォームのリーダー」を目指す、としていて、2019年4月にはソフトバンクグループであるSBエナジーが出資をしています。顧客にはウーバーやユナイテッド航空、フォード、全米オープンテニス、などが名を連ねています。
この企業は、気象情報の提供ではなく、それをどう解釈し、どうアクションすべきか、までを提供するところを差別化としているそうです。
また、報道などでも、食材のロスを減らすために気象データを活用して弁当や食品の需要を予測し、生産をコントロールする技術のことが紹介されることがありますが、日本気象協会と全国小売店のデータを持つインテージとが「気象データによる商品需要予測」サービスを提供していたりします。
こうした動きは、当然マーケティングにも活用され、三井物産が作成した「気象データを活用したビジネスの現状と可能性」という資料によると、「気象マーケティング」から「感覚マーケティング」へ展開していくと予想されています(下図)。
→気象はさまざまなビジネスチャンスがあるようだ。身の回りでどのようなサービスがあるだろうか?また、今後どのようなサービスがあれば普及すると考えられるだろうか?
3月24日(水) 結核で亡くなる人は今でも年間○○○○人いる!?
世界保健機関が1997年に制定した「世界結核デー」です。
1882年のこの日、ロベルト・コッホ博士が結核菌を発見しました。
克服されたかに見えていた結核が、再び猛威を振い始めたことから、結核の撲滅を世界に呼びかけています。
結核。
昔の小説などを読んでいると、結核=不治の病、という時代があったことが分かります。実際、正岡子規、樋口一葉、石川啄木といった文豪も結核で亡くなっています。
あくまで昔の話、と思っていたら、現在でも亡くなる方はいるそうです。厚生労働省のHPには結核についてのページがあり、「令和2年度啓発の背景」として以下の記述があります。
* 結核は、患者数及び罹患率(人口あたりの新規結核患者数)は順調に減少しているものの、今でも年間15,000人以上の新しい患者が発生し、約2,000人が命を落としている日本の主要な感染症です。
* 近年、我が国においては外国生まれの患者数が増加傾向にあり、平成30年の新規登録結核患者数のうち外国生まれの患者数は1,667人(前年比137人増)です。
なんと、今でも年間1.5万人が結核になり、2千人が亡くなっている、というのです。
政府広報HPから「結核による死亡者・死亡率の推移」データを見てみましょう。
(縮尺の関係から分割して作成してる点、ご留意ください)
また、人口10万対と罹患率がわかりやすいデータを厚生労働省「2019年結核登録者情報調査年報集計結果」から転載します。
このように、順調に減少していた結核罹患率ですが、1980年代から減少ペースが落ち始め、1997年には増加に転じたことがわかります。その後の対策などで減少しつつありますが、まだ撲滅できていない病気、ということです。
都道府県別では、罹患率が高いのは比較的関西地区の大都市圏、中でも大阪府が高いく、東北が低い傾向です(下図)。
なお、世界各国と比較したデータをみると、欧米は罹患率は低く、近隣アジア諸国が高いことがわかります(下図)。
結核は、ご存知の通り空気感染です。新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う人々の行動変容は結核にどのような影響があるでしょうか?結核研究所の資料に2019年と2020年の1月から4月の新規結核患者登録数がありました(下図)。
これによると、全体では12%、潜在性結核感染症用治療者は29%と大幅な減少となっていてコロナ対策が結核の対策にもなっていることが分かります。
→結核、一体なぜ減少ペースが落ちてしまったのだろうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
一つでも頭の体操になるものがあれば嬉しいです。
昨年7月から同様の投稿をしています。かなり溜まってきました。
へぇ〜というものが必ずあると思いますのでご興味とお時間があれば過去分もご覧ください。