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小説の集い。

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ゾッとするほどつまらない短い物語の集まりです。内容がだいぶカオスな話もありますが、ご容赦ください。
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#ショートショート

VS暴走掃除機。【超短編小説】

「ギュイイイ~~~~~ン」 「ギュオンギュオ~~~ン」 「ギュオオオ~~~~~ン」 コンセントを繋いだ瞬間、突如として掃除機が暴れ出した。奇怪な音色を部屋中に響かせながら、縦横無尽に暴れ回り始めたのである。 この男の部屋の掃除機はコンセントを繋いでいる時に稀に暴れ始める。理由はわからない。決まった規則などなく、何の前触れもなくいつも突然暴走し始めるのである。 そして今日もまた、この男と暴走掃除機との仁義なき戦いの火蓋が切られたのである。 (レディー、ファイッ) まず

『しりとり』 超短編小説

「しりとりしよーぜー」 『え、あー、うん、いいよー』 「リンゴ」 『ゴリラ』 「ラッパ」 『パン』 「!?」 『・・・』 「ンジャメナ」 『!?』 「・・・」 『ナン』 「!?」 『・・・』 「んだんだ」 『!!』

友人Xの逆鱗。 (短編小説)

私には昔から仲の良い友人が一人だけいる。私にとって唯一の友人と言っても過言ではない存在である。 だが先日、そんな友人と一悶着あった。今回はその一件について書き記したいと思う。ここでは仮にその友人を「X」と呼ぶことにする。 Xはとても優しい日本の男である。言動や行動、雰囲気など全てが優しさに包まれており、怒った姿を一度も見たことがない。まさに優しさの権化のような存在である。 私は小学生の時、友人が一人もおらず少々寂しい思いを抱いていた。そんなときに、Xは唯一私に話しかけて

ホップ・ステップ・シャーラップ (超短編小説)

我が家の近所には、御年70ぐらいの少々近寄りがたいオーラを醸し出す、一人のおっちゃんが住んでいる。おっちゃんとは特別何か話したことはないが、たまにすれ違ったりすると軽く挨拶したりする感じの関係である。 そのおっちゃんが、たまに唐突に私に向かって言うのである。 「ホップ・ステップ・シャーラップ!!」と。 私はこの言葉に気圧される。それはそれは本当に気圧される。そうして毎度のごとく、ガクガク震えて地に膝がついてしまいそうなこの貧弱な足で、なんとかその場に立ち続けるのである。

“有料”の肩たたき券 (超短編小説)

最近、肩こりがひどい。パソコンを毎日使っているからだろうか。両肩が共にゴリゴリに凝り固まっていらっしゃる。 こりゃ参った。ため息が漏れる。誰かに肩たたきでもしてもらいたいところだが、あいにく幼稚園児の息子は最近、数独に夢中である。 今日もリビングのテーブルの上で、必死に数独と格闘している。その姿は真剣そのものである。 そんなある日、息子からもらった物。それは“有料”の肩たたき券であった。息子は何も言わず、スッと私の前にそれを差し出し、足早に去って行った。 「有料、か…

ゴルフボールの行く先。 (超短編小説)

私の日課は毎朝の散歩である。今日も今日とて、いつものコースを散歩していた。 すると突然、空から何かが降ってきた。なんと、ゴルフボールである。ゴルフボールが私の眼前に落ちてきたのである。 もし当たっていたら、私はこの世を去っていたのだろうか。それとも、この世とあの世の狭間で彷徨っていたのだろうか。そんなことを考えた。 落ちたゴルフボールは、何度か跳ねた後、コロコロと転がっていった。私はふとゴルフボールの行く先が気になり、後を追ってみることにした。 ゴルフボール(略して、

町内放送、止めどない。 (超短編小説)

私は読書が大好きだ。 特に小説が好きで、いつも決まって休日には、家でのんびりと小説の世界に没入している。この時が私にとっての至福の時間であり、そして一番のストレス解消の時間なのである。私はこれなしでは生きていけないのだ。 だが、今日はいつものように小説に集中できない。いつもならスッと小説の世界に入っていけるのに、今日はまるで門番に侵入を拒否されているかのようである。 一体なぜなのか。心当たりはあった。というか、心当たりしかなかった。それはさっきから、町内放送が止めどない

しゃっくりヒーロー。 (超短編小説)

 私はヒーローを生業としている者である。日々この街に住む人々の平穏を守っている。  今日も、敵に囲まれて困っている少年を発見。相も変わらず、この街は微妙に治安が悪い。若干錆び付いたママチャリを全力で漕ぎ、現場へと急ぐ。  だが、さっきからちょっと気がかりなことがある。何故だか分からないが、しゃっくりが止まらない。 「ヒック、ヒック、・・・、ヒック」  どうしようホントに止まらない。でも、今はそんなことを気にしている場合ではない。一刻も早く敵を制圧して少年を助けなければ

僧侶とファンキーおばあちゃん。 (超短編小説)

僧侶になって早十年。 今日も今日とて瞑想をしている。 長いこと瞑想を続けてきた甲斐あってか、昔よりも集中力が増し、瞑想も幾分上達してきたように思う。 だが、今日は全く集中できない。 気づくとすぐ意識がそれてしまう。 しかも、とある一つの事を何度も何度も考えてしまうのである。 そのとある事とは、約一時間前に出会った、白髪アフロのファンキーおばあちゃんのことである。 その時、私はお寺の境内を掃除していた。 境内には桜の木が植えられており、開花の時期を迎えた桜が綺麗に

そ~い粗茶。 (超短編小説)

今朝のことなんですけど、いつも使ってた自販機がなくなってたんです。 それで、どうしようかと思ってたら、数メートル先に新しい自販機が立っているのを見つけました。 その自販機がちょっと見たことない感じで、中のペットボトルにラベルが貼ってなかったんです。 いくらラベルレスって言っても、まるで何が入っているのか分からないので、困惑してその場をウロウロしてしまいました。 でも付近に他の自販機もなく、もの凄く喉が渇いていたので、おそらくお茶であろうペットボトルを選んだんです。

抗う鉛筆。 (超短編小説)

とある週末。 この小学生の少年には宿題が残っていた。 でも、やりたくない。 嫌だ嫌だと駄々をこねる。 あまりにも嫌すぎて、その場でバーピー運動をし始める。 だが、そんなことをしても状況は何も変わらない。 バーピーを12回ほどしたところで、少年はふと考えた。 「なぜ我々は勉強しなければいけないんだ?」 「いや、そもそも何故、我々は生きなければならないのだろうか」 少年は不必要に哲学的な問いを持ち込もうとするも、そんなことが現状において無意味だということは本人が一番分か

キレる扇風機。 (超短編小説)

この扇風機、風が強い。 いや、強いどころではない。 もはや立っていられないほどの強風だ。 これはもはや、台風の域である。 急にどうしたんだ。 昨日まで通常運行していたはずなのに。 ・・・。 「まさかこの扇風機、キレているのか!?」 そう言ったこの男も、この扇風機に対してキレていた。 あまりの強風に垂直に立っていられないため、前傾姿勢でなんとか踏ん張りながら全力でキレている。 「ふざけるなっ、扇風機がキレるなんて聞いたことないぞ!?」 この男はキレながらも、同時に

パーフェクト・ハエたたき (超短編小説)

男は、とんでもなくうんざりしていた。 昨日からずっと部屋の中でハエが飛んでいるのだ。寝ているときも、ご飯を食べているときも、本を読んでいるときも、どんなときも。 なにかこの状況を打破するものはないのか。男は一縷の望みをかけて、電車に乗り、最寄り駅から数駅先にあるホームセンターへと赴いた。 駅から数分歩くと、大きめのホームセンターに辿り着いた。売り場面積が広く、何がどこにあるのかよく分からないため店員に話しかける。 「昨日から一匹のハエが部屋の中を華麗に舞っているのです

正方形パスタ。 (超短編小説)

あなたは正方形のパスタを見たことがあるだろうか。 私は見てしまったのだ。その正方形のパスタとやらを…。 先日、朝食を食べながらニュース番組を見ていると、番組途中のCMでパスタの広告が流れた。 私は基本的に米派のため、パスタのような麺類には特に興味が無い。今日の朝食も納豆ご飯と味噌汁の和食である。 そんな中、耳を疑う言葉が聞こえてきた。 「正方形パスタ、絶賛発売中!」 有名な俳優さんがナイススマイルで一言。 私は即座にテレビの方に顔を向けた。勢い余って納豆が一粒吹