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ホラー小説のネタバレなし読書感想

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読了したホラー小説のネタバレなし感想を載せています。
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ブラックコメディ小説のネタバレなし読書感想『ようこそ、自◯用品専門店へ』ジャン・トゥーレ

ブラックコメディ小説のネタバレなし読書感想『ようこそ、自◯用品専門店へ』ジャン・トゥーレ

まず、発想が面白い。人口6817万人(2023年度)のフランスでは、毎年9000人の自◯者が出ているそうだが、今作はそんなお困りごとにネガティヴな助けをする、10代続く自◯用品専門店のお話だ。

普通に考えたら、自◯幇助罪に問われる違法なことだが、それをフィクション世界でユーモラスに、家庭というアットホームな舞台でコメディタッチに描いている。

そして愛らしい。

家族のどのキャラクターも憎めない

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ホラー小説のネタバレなし読書感想『撮ってはいけない家』矢樹純

ホラー小説のネタバレなし読書感想『撮ってはいけない家』矢樹純

ミステリー要素の強いホラー小説です。すべては探偵役のオカルトマニアを好きになれるか、なれないかで評価は決まってくるかもしれません。

ディテールがじつによく描かれていて、そこが本書をホラーでなく、ホラーミステリーとしているところですね。

帯のキャッチコピーで、人気作家の背筋さんが「怖い」を連呼していますが、正直そこまで怖くはありません。

ミステリーが好きなかた、探偵小説やサスペンス小説を好んで

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ホラー小説のネタバレなし読書感想『四谷怪談』高橋克彦

ホラー小説のネタバレなし読書感想『四谷怪談』高橋克彦

お岩さんとご主人の民谷伊右衛門(たみや いえもん)の愛憎劇。その原作は、江戸時代の歌舞伎にもなった鶴屋南北の芝居用脚本からです。作者の高橋克彦さんは、幼少時代から『四谷怪談』のホラー映画に親しみながら育ったそうです。

作家業を初めてからは、鶴屋南北の原作を読み、その面白さを崩さずに一年をかけて今作ができました。

わたしは趣味兼、個人的な学習のためにXのスペースで朗読会を開いているのですが、そこ

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ミステリー小説のネタバレなし読書感想『変な絵』雨穴

ミステリー小説のネタバレなし読書感想『変な絵』雨穴

パズルのように、各章のお話と登場人物たちが組み合わさって、最後に全体としての絵が見えてくるお話です。テーマは「絵の謎」なんですが、それを描かれたのはなんと、作者の雨穴さんだそうで。

他人が見てわかる絵を描くのは難しいんですよ、お上手ですね。

それぞれの章で、登場人物たちが変わっていって、視点も様変わりします。

最後まで読んで、はあ〜納得!、といった感じのより集まったピースが、一枚絵になる痛快

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ホラー小説のネタバレなし読書感想『歪つ火』三浦晴海

ホラー小説のネタバレなし読書感想『歪つ火』三浦晴海

処女作『屍介護』に続き、こちらも三浦晴海さんの得意とされているジャンル、*ソリッド・シチュエーションです。同作者さんの『走る凶気が私を殺りにくる』も、車内という限定された環境での出来事なのである意味、ソリッド・シチュエーションかもしれません。

三浦晴海さんは、「介護」「煽り運転」「女性のソロキャンプ問題」など、時事ネタをテーマにした、ホラー作品を手掛けています。

今作は、「生きることの醜さ」も

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ダークファンタジーのネタバレなし読書感想『コララインとボタンの魔女』ニール・ゲイマン

ダークファンタジーのネタバレなし読書感想『コララインとボタンの魔女』ニール・ゲイマン

登場人物の少ない、不思議の国のアリスのようなお話です。

アリスの夢の国の探索をよりアットホームにして、悪役との対決を中心に描いたような。

思春期の少女のもどかしい、大人たちとの関係がよく描かれています。

悪役もまた、悪い部類に入る大人です。

主人公のコララインは賢い女の子です。

空想も好きな彼女の視点で、児童文学的なストーリーが描かれていきます。

裏表紙の内側にも書かれていますが、作者

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ホラー小説のネタバレなし読書感想『お孵り』滝川さり

ホラー小説のネタバレなし読書感想『お孵り』滝川さり

展開に飽きがこない、スピーディな作品です。参考文献にも書かれていますが、作者の滝川さりさんは、昭和初期に起きた津山三十人殺しから、今作の着想を得てらっしゃいます。

横溝正史ミステリ&ホラー大賞の読者賞を受賞して書籍化された今作は、公募されるにあたって、賞のタイトルにもなった横溝正史氏の「八つ墓村」を意識されたのが伝わってきます。

過疎化した村で起きる、因習や村八分からの復讐などは、使い古された

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スリラー小説の読書感想『隣の家の少女』ジャック・ケッチャム

スリラー小説の読書感想『隣の家の少女』ジャック・ケッチャム

読了後の虚脱感はハンパなかったです。

流れる川に隣接する田舎の景色は美しく、そこで語られる少年たちの青春劇は、映画「スタンド・バイ・ミー」を匂わせる叙情豊かな文章で語られていきますが、希望があるのは「表のスタンド・バイ・ミー」のみ。

本著を絶賛しているスティーブン・キングもあとがきで語っているように、今作は、絶望の未来が約束された「闇のスタンド・バイ・ミー」です。

大人になった主人公デイヴィ

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ホラー小説のネタバレなし読書感想『血腐れ』矢樹純

ホラー小説のネタバレなし読書感想『血腐れ』矢樹純

マジで怖かった〜〜〜!!ホラーはいくつか読みましたが、不穏さを感じつつ終える後味の悪さもふくめて、本作は見事にホラーをやっていました。

それも単に怪異が出てきて暴れまわるような、サメ映画ではなく、人間の業の深さを描いた「ヒトコワ」の要素アリアリです。

本作は全6篇のオムニバスホラーとなっていますが、ミステリー要素あり、ヒトコワのサイコパスあり、そこに襲いかかる怪異のホラーありと、一話一話に恐怖

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ホラー小説のネタバレなし読書感想『屍介護』三浦晴海

ホラー小説のネタバレなし読書感想『屍介護』三浦晴海

こんにちは。今回、感想をご紹介するのは、小説投稿サイトのカクヨムに掲載され、角川ホラー文庫で書籍化をはたした作品です。

また、本作品は(2024年11月現在)青騎士コミックスで漫画化され、単行本も発売されています。

ネタバレなし、ということで、作品の内容には極力触れずにご紹介します。

「ビジュアルに特化した、映像作品のような自然描写」先にも書きましたが、本作品は三ト和貴さんの美しい女性画で、

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ホラー小説のネタバレなし読書感想『死体でも愛してる』大石圭

ホラー小説のネタバレなし読書感想『死体でも愛してる』大石圭

こんにちは。間が空きましたが、今回、感想をご紹介するのも角川ホラー文庫からです。

ジャンルとしては、サイコスリラーに近い、作風ですね。

『呪怨』や『死人を恋う』などでも有名な、大石圭さんの『死体でも愛してる』のご紹介です。

オムニバス(聞き手となる人物のお話と、各章で違う登場人物)で描かれた、今作を表すなら「4つの愛の物語」です。

四季の名前で4つに分けられた章のそれぞれに登場する人物たち

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ホラー小説のネタバレなし読書感想『めぐみの家には、小人がいる。』滝川さり

ホラー小説のネタバレなし読書感想『めぐみの家には、小人がいる。』滝川さり

こんにちは。前回の『ゆうずどの結末』に続いて、同作者である、滝川さりさんのホラー小説『めぐみの家には、小人がいる。』の読書感想をご紹介いたします。

今回も、極力ネタバレは避けて、作品の良かったところ、ここが面白かったというところをピックアップしていけたらと思います。

残酷なグリム童話のような怪異を、現代社会で描く。とはいっても、まったく情報を開示せずに話を進めるのも、不親切なので、ネタバレに該

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ホラー小説のネタバレなし読書感想『ゆうずどの結末』滝川さり

ホラー小説のネタバレなし読書感想『ゆうずどの結末』滝川さり

こんにちは。

前回、背筋さんの『近畿地方のある場所について』というモキュメンタリーホラーを、ややネタバレありで書かせていただいたので、今回はネタバレを極力避けて書かせていただきます。

ご紹介するのは、滝川さりさんの『ゆうずどの結末』です。

今作は、大まかに四つの章で構成されており、各章登場人物が違う、オムニバスホラーとなっております。

しかし、そこで語られるのは、一貫して「ゆうずど」と呼ば

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ホラー小説の読書感想『近畿地方のある場所について』背筋

ホラー小説の読書感想『近畿地方のある場所について』背筋

こんにちは。今回から、ホラー小説の読書感想をご紹介させていただきます。

第一回は、背筋先生の『近畿地方のある場所について』です。

作者ご本人がいってらっしゃるように、今作は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』などのモキュメンタリー映画を参考に作られております。

ちなみに、モキュメンタリーとは、ドキュメンタリータッチの映画や小説作品、つまり取材からの実録作品のようなスタイルで、創作をおこなう手法

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