ホラー小説のネタバレなし読書感想『ゆうずどの結末』滝川さり
こんにちは。
前回、背筋さんの『近畿地方のある場所について』というモキュメンタリーホラーを、ややネタバレありで書かせていただいたので、今回はネタバレを極力避けて書かせていただきます。
ご紹介するのは、滝川さりさんの『ゆうずどの結末』です。
今作は、大まかに四つの章で構成されており、各章登場人物が違う、オムニバスホラーとなっております。
しかし、そこで語られるのは、一貫して「ゆうずど」と呼ばれる本の呪い(ひゃ〜!怖いですね!)
怪異が見れるのは、呪われた人間だけだそうで、呪われる条件については、あとがき的な章で書かれてあります。
今作は、叙述トリックも多用されており、ミステリっぽい仕組みも楽しめる、ギミックを駆使されたホラーといえるでしょう。
ちなみに作中で、ゆうずどの作者である、鬼多河りささんのお話は、先ほど書いた、呪われる条件が書かれたあとがきの章で登場しています。
作者ご自身が、呪いに巻き込まれていく姿、そして生み出された呪いが拡散されていく姿が、びっくりドッキリ描かれているので、最後まで超怖くて、面白かったです。
個人的には、第三章で描かれる、トレーディングカードゲームといじめをテーマにした小学生のお話に、心惹かれました。
カードゲームで遊んだことは無かったのですが、子供心に遊んでいる人たちの姿に思わず、見入ってしまうときがあります。
この章でも、そんなカードバトルに夢中になって青春を謳歌している、小学生の友情と……暗いいじめのお話が書いてありました。
現在、滝川さりさんのホラー作品は、『めぐみの家には、小人がいる。』も読んでいるんですが、滝川さんご自身が学校関係のお仕事に就いてらっしゃるらしく、やはり学生や学校でのトラブルを描かれるのが、とってもお上手です。
また「ゆうずど」の四章では、繊細な恋愛話も書かれてあって、こんなしっとりしたお話も書かれるのかと、ホラー作家さんながら、抽斗の多さを感じさせてくれます。
『ゆうずどの結末』は、オムニバスですが、怪異に巻き込まれる主人公たちの苦悶と悲鳴、嗚咽が読み手のこっちにまで伝わってくる、巧みな描写でした。
2024年現在、文庫で1000円もしないので、新刊の購入をオススメします。
表紙や、挿絵として描かれる黒い栞にギョッとしちゃう、と同時に、滝川さんの遊び心にニヤリとさせられてしまいますね。
ここまでのご読了ありがとうございました。
次回は、同作者さんの『めぐみの家には、小人がいる。』の感想文を書かせていただきます。