ホラー小説のネタバレなし読書感想『屍介護』三浦晴海
こんにちは。
今回、感想をご紹介するのは、小説投稿サイトのカクヨムに掲載され、角川ホラー文庫で書籍化をはたした作品です。
また、本作品は(2024年11月現在)青騎士コミックスで漫画化され、単行本も発売されています。
ネタバレなし、ということで、作品の内容には極力触れずにご紹介します。
「ビジュアルに特化した、映像作品のような自然描写」
先にも書きましたが、本作品は三ト和貴さんの美しい女性画で、主人公の栗谷茜(くりや あかね)が再現されており、その原作である三浦晴海さんの小説も、映像を観ているような、視覚的にイメージしやすい言葉選びがしてあります。
「山奥の洋館で行われる介護、限定された空間と人間関係」
今作は、ヒトコワの要素もふんだんに盛り込まれてあります。
訪問介護ヘルパーとして、主人公は要介護者が住む、山奥の洋館に住み込みで働くことに。
そこで会った同僚との人間関係では冷たくされ、敵視されることもしばしば。
主人公に意地悪をする同僚は、まるでシンデレラの姉のようです。
そして、それよりも恐ろしい秘密が、山奥の洋館には隠されていました。
「『介護』というホラーにはない、斬新な設定を不気味な形で活かす」
寝たきりの要介護者には、秘密がありそうです。
しかし、その介護がまた不気味で(これは本編を読んでから知っていただきたいのですが)なにか底知れぬ闇を秘めています。
洋館の雰囲気は、ホラゲーが好きな方ならお馴染みの「バイオハザードの洋館」のイメージです。
化け物が出そうな、怪しい雰囲気……
携帯電波が届かない、陸の孤島……
そこで行われる、介護と称したなにか……
もう裸足で逃げ出しそうになる、ホラー展開ですね。
「主人公の過去が次第に明かされ、彼女もまた成長していく」
主人公の栗谷茜にも、ひとにいえない秘密がありました。
それは物語が進むにしたがって、明かされていきます。
その秘密にも、彼女の成長と事件の核心に挑む、勇気がフォーカスされています。
おとなしい彼女ですが、いい意味でも悪い意味でも個性的な同僚たちと組みながら、介護の裏にひそむ、陰謀を暴こうと必死です。
「総評」
作者の三浦晴海さんは、「介護」をテーマにした今作に続いて、「煽り運転」や「女性のソロキャンプ問題」など、時事ネタをテーマに作品を書いてらっしゃいます。
これらのテーマは、現代社会の問題を浮き彫りにしているといえるでしょう。
また、ホラー作品としても、謎を散りばめつつ、スリラーの要素(ヒトコワ)も組みこまれています。
時代に乗り遅れないテーマに、映像作品のようにイメージしやすい文章……それらが、読者の恐怖をより盛り上げていき、劇的なクライマックスに導いてくれます。
今までにない読書体験を求めるひとにも、既存のホラーに飽きてきた方々にもオススメの一冊でした。