ホラー小説のネタバレなし読書感想『めぐみの家には、小人がいる。』滝川さり
こんにちは。
前回の『ゆうずどの結末』に続いて、同作者である、滝川さりさんのホラー小説『めぐみの家には、小人がいる。』の読書感想をご紹介いたします。
今回も、極力ネタバレは避けて、作品の良かったところ、ここが面白かったというところをピックアップしていけたらと思います。
残酷なグリム童話のような怪異を、現代社会で描く。
とはいっても、まったく情報を開示せずに話を進めるのも、不親切なので、ネタバレに該当しない程度に作品世界のことも書いてみます。
舞台となる、神海(こうみ)市立喜多野小学校に勤める、立野美咲は小学校時代にいじめを経験したことのある、女性教諭。
彼女が受け持つクラスでは、いじめをするグループと、モンスターペアレンツの親が結託して、小紫めぐみという少女がいじめられて、不登校になっていた。
めぐみの家に訪問した美咲は、彼女と交換日記をするうちに、「小人」と称される異様な存在が、旧ゲオルグ邸(めぐみの家)で起きた不審死と関わりを持っていることに気づき……。
学校と家庭を舞台に、いじめやトラウマ、人間社会の暗黒面を描きつつ、そこに怪異という要素を取り入れる。
学校内での出来事や、そこで描かれる問題を扱うことが、巧みな作家さんですが、そこに怪異が現れ、作中でとんでもない事件を起こしていきます。
ジェットコースターに乗ったような、疾走する恐怖と戦慄。
『ゆうずどの結末』もそうでしたが、滝川さりさんは、展開を盛り上げるためには登場人物に容赦しない、ファンサービス旺盛な作家さんです。
今作も、怪異が大暴れしてくれて、佳境からクライマックス、結末までの疾走感が凄まじかったです。
とくに、主人公の立野美咲のトラウマが、怪異と繋がっているところが良く出来ていました。
小さな穴や点々の集合体に、吐き気をもよおすほどの恐怖が呼び醒まされる、集合体恐怖症(トライポフォビア)の美咲。
それは、今作の怪異をより醜悪に描くことに一役買っております。
常軌を逸したモンスターペアレンツの親も現れ、学校と家庭を行き交うトラブルが、終盤になるほど、増大して歯止めが効かなくなっていく様が、残酷に描かれています。
今作の魅せ場は、この吐き気をもよおすほどクレイジーな、モンスターペアレンツのヒトコワ要素ありありでした。
不気味な怪異と、クレイジーなモンスターペアレンツ……
もう、この二者だけでお腹いっぱい、恐怖感満腹の大満足なホラー作品です。
滝川さりさんの作品は、読みやすさも、怖さも大満足の出来なので、今回も超オススメします。
ここまでのご読了ありがとうございました!