kiki

社会・環境問題を研究。『持続不可能な社会をどう生きるか』などを執筆。システム思考・脱成長主義・ミニマリスト・ビジネス戦略家。東京大学大学院工学系出身。本質を外した日本のSDGsに強い危機感を持つ。今何をすべきかを悩み、考え、情報を配信。twitterでも活動。

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社会・環境問題を研究。『持続不可能な社会をどう生きるか』などを執筆。システム思考・脱成長主義・ミニマリスト・ビジネス戦略家。東京大学大学院工学系出身。本質を外した日本のSDGsに強い危機感を持つ。今何をすべきかを悩み、考え、情報を配信。twitterでも活動。

マガジン

  • 本気で社会を変えるには

    2021/8/9、IPCCは第6次評価報告書を公表しました。地球温暖化は「人間の活動が原因である」と初めて断定するなど、これまで以上に厳しい形で警告を鳴らしています。私たちは変わらなければならないのにも関わらず、政治的に無力である事実を突きつけられています。どうすれば社会を変えられるのかについて、その方法論をシステム的思考の観点から考察しています。

  • 勉強法

  • ショートシリーズ

  • 持続不可能な社会をどう生きるか

    「地球はすでに限界を超えている」と叫ばれる中、私たち日本人の意識や社会は驚くほど変わっていない。なぜ意識が変わらないのか、社会はどんな姿を目指すべきなのかについて、環境・経済・哲学的な視点から問題の本質を紹介する。全12話。

  • New Normal of Post-Capitalism

    While people say "the earth is already beyond its limits," our consciousness and society have remained surprisingly unchanged. This magazine delves into the essence of the problem from environmental, economic, and philosophical perspectives, asking why consciousness hasn't changed and what society should aspire to be. 12 episodes. English translation version.

最近の記事

#16 本気で社会を変えるにはービジネスと戦う

こうした社会課題の解決の話をすると、個々の自発的な善意に依存するのではなく、ビジネス的に解決すべきだという反論が出てきます。 確かにビジネスが回るように制度設計できれば、その効果は強力です。その仕組みを取り入れることで、より大きな利益を生み出すことができると分かれば、たちまち争うように取り組まれます。獲得した利益の一部を投資に回し、売上を伸ばせます。規模が大きくなればなるほど、効率的に事業運営ができるようになり、利幅は増えます。最初こそうまく仕組みを回すのが大変でも、回すう

    • #15 本気で社会を変えるにはー消えた責任と自由の代償

      人は分業を始めることで、ある限られた領域に集中して打ち込むことができ、それぞれが高度な専門性を磨ける環境が整ったことで、社会を効率的に動かすことができました。一方で専門外のことには全くの素人となり、科学技術が発展するほど、社会全体はブラックボックス(分からないことだらけ)で溢れるようになりました。 全体のことが分からないので、どこへ進んでいるのかも、どこへ進めば良いのかも分かりません。やむなく領域を細かく細分化し、役割と責任を決めました。「あなたの仕事はここまでで、この仕事

      • #14 本気で社会を変えるにはーたった1つの成功

        システムを変えるのは容易ではありません。長い年月を経て、極めて効率的に築き上げられたこと、それに人々が依存し、過剰に適応していった結果、多くの人が精神的な自立も、経済的な自立も失ってしまいました。「政治はプロに任せればいい。私たちには関係ないことだ。」「私たちは何も悪くない。悪いのは政治家だ。」と、そうやってずっと甘えてきたのです。 絶えず日本は信賞必罰の考えに毒されてきました。学校での教育から会社での仕事まで、あらゆることが成績やお金に換算され、周囲から褒められるからする

        • #13 本気で社会を変えるにはーお金によって奪われた話し合う力

          2030年までに、46%二酸化炭素の排出量を削減するという目標を政府が置き、様々なところでSDGsのニュースや動きが出てくるようになりました。「良く分かるSDGs」、「生物多様性を大事にしよう」、という啓蒙活動は分かるのですが、ではどういう社会を目指しているのかは曖昧で、なかなかにどこまで賛成して良いのかが分からない状況です。 高い目標を達成するためには、システムを根本的に変えなければなりません。小手先の努力では46%の削減すら到達不可能でしょう。政権が変わり、方針を変えれ

        • #16 本気で社会を変えるにはービジネスと戦う

        • #15 本気で社会を変えるにはー消えた責任と自由の代償

        • #14 本気で社会を変えるにはーたった1つの成功

        • #13 本気で社会を変えるにはーお金によって奪われた話し合う力

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        記事

          #12 本気で社会を変えるにはー求められる社会像

          著者は今の社会の在り方を良しとしません。この現代社会をどう形容したらいいかと悩むのですが、今のところ"成長を前提とする資本主義"と呼んでいますが、地球が有限である以上、このシステムはいつまでも続けられないおとぎ話だと考えています。俗にいう社会主義や共産主義でもありません。ただ、次のことが前提の社会だろうと思います。 ①物質的に循環した社会であること ②一人一人が自立していること ③情報と意思決定プロセスが透明であること ④失敗を前提に、冗長なシステムを作ること ①は再生し

          #12 本気で社会を変えるにはー求められる社会像

          #11 本気で社会を変えるにはー人生のレールから降りる

          人生のレールという言葉があります。多くの人が長い年月を歩き、踏み固められた通り道で、徹底的に研究、効率化されており、その道をたどるのであれば、ある程度どんな未来が待っているか容易に想像ができます。道に迷うこともなく、怪我をする心配もありません。何も考えず、ただその道に従って進めば良いのですから、これほど楽なことはありません。 一方で人生のレールから降りることは容易なことではありません。舗装された道路を歩くことはできても、獣道を踏み歩くのは常にリスクがつきまといます。誰もガイ

          #11 本気で社会を変えるにはー人生のレールから降りる

          #10 本気で社会を変えるにはー精神的自立と経済的自立

          自分の意志を持ち続けることは大変です。人と違うように考え、行動していると、間違った方向に進んでいるかもしれないと恐怖します。意志を強く持ち続けるためには、精神的・経済的な自立が不可欠です。学校はよく言う職業訓練をする場所ではなく、精神的・経済的な自立を目指す場所であるべきです。 精神的自立とは、相手の考えに流されず、自分自身で考えられる力を指します。常に政府が国民の味方とは限りません。間違えることもあるし、都合の悪い情報をもみ消すこともあります。事実を客観的に判断し、誰でも

          #10 本気で社会を変えるにはー精神的自立と経済的自立

          #9 本気で社会を変えるにはー変わろうとしない穏やかな日常に潜む孤独と葛藤

          気候危機も生態系の崩壊も待ったなしの状態です。小さなぼや(小火)程度であればすぐに消火ができるでしょうが、それが無数に発生し、それぞれがつながって一気に燃え広がれば、人の手にはどうすることもできなくなります。私たちは何もかもしなければならない状態にいながら、何も行動できずにいます。 子供のような純粋な視点に立つと、今の表面的な平和は極めて残酷に見えます。科学者がこれほどの危機を警告しているにも関わらず、大人たちの関心が驚くほど低いのです。大人たちは、自身のことを無力で何もで

          #9 本気で社会を変えるにはー変わろうとしない穏やかな日常に潜む孤独と葛藤

          #8 本気で社会を変えるにはー尊敬すべき対象は?【後編】

          改めてですが、あなたにとって"尊敬"の対象範囲は何でしょうか? ここに、現代社会における問題の本質があります。世間一般の解釈としては、あくまで「人」を対象にしており、「人以外」の存在が認識からごっそり抜け落ちていることが多いのです。その結果、回りまわって「人」そのものの尊厳を揺るがし、社会を不安定化させています。 自然は人類に様々な恩恵をもたらしてくれました。長い歴史の中、互いに食うか食われるかの複雑な関係ではあったものの、地球上で悠久とも言える時間をともに歩んできました

          #8 本気で社会を変えるにはー尊敬すべき対象は?【後編】

          #7 本気で社会を変えるにはー尊敬すべき対象は?【前編】

          歴史を紐解けば、人類史のほとんどは闘争の歴史でした。他国を恐れ、他国よりも強くあろうと軍備を増強します。他社を恐れ、他社よりも少しでも安いもの、良いものを提供しようと血眼になって努力します。受験戦争、就活競争、スポーツなど、あらゆるものが競争の対象で、お金をより多く稼ぐことこそが勝利の証でした。その結果、常に経済は成長が求められ、無秩序な開発は気候危機と環境破壊を生み、軍拡競争は今も際限なく続いています。グローバルな危機に立ち向かうために今必要なのは、競争ではありません。競争

          #7 本気で社会を変えるにはー尊敬すべき対象は?【前編】

          #6 本気で社会を変えるにはー多様性を尊重するとは?

          かつては、自ら考えなくても周囲の人や親の世代を見習って同じように行動すれば、そこそこの成果を得ることができました。学校における教育とは、一方的に講義を聞かされるような受動的なものであり、基本的には上からの指示を正確に読み取り、間違わずに実行できるための基礎力の獲得の場所であったと感じられます。けれど時代は動き、それが成り立っていた前提条件が崩れ始めました。企業寿命は年々短くなり、大企業といえどもあなたが退職するまで安定して存在する保証はありません。常識を疑い、多様な視点からあ

          #6 本気で社会を変えるにはー多様性を尊重するとは?

          #5 本気で社会を変えるにはーなぜ多様性は大事なのか?

          ある組織がより高度なことに挑戦しようとするならば、要素が画一的なものよりも、多様であることが有利です。昨今はビジネスの視点から、個性や多様性が特に注目されるようになりました。 昔から日本では「出る杭は打立てる」と言われるように、個性的なものに否定的な社会です。自分たちと価値観の違うものを警戒し、自己主張を抑えて人に無理やり合わせようとする、そして暗黙のルールに従わない異分子を排除しようとする力学が働きがちです。就活生が見るマニュアルには、髪型から服装・色合い・立ち振る舞いか

          #5 本気で社会を変えるにはーなぜ多様性は大事なのか?

          #4 本気で社会を変えるにはーたった一つの発見で滅びに近づくことがある人間社会の脆弱性

          人が作る社会は、それが高度であるがゆえに驚くほど脆く、十分に注意を払わなければたった一つの発見で滅びに近づくことがあります。それを、仮想話を元にしたいと思います。 ある国には、膨大な化石水が地下深くに眠っていました。化石水とは、『地層が堆積したときに封じ込められ、数万年以上にわたって大気との水循環から切り離された水。』であり、要するに一度使えばなくなってしまう水を指します。 その国は、降雨からの水だけが頼りでした。食料を増産しようにも限りがあり、ある一定以上人口が膨らむと

          #4 本気で社会を変えるにはーたった一つの発見で滅びに近づくことがある人間社会の脆弱性

          #3 本気で社会を変えるにはーシステム思考で見える残酷な一面

          複雑な社会を考えるには、システム思考が欠かせません。システム思考とは『独立した事象に目を奪われずに、各要素間の相互依存性、相互関連性に着目し、全体像とその動きをとらえる思考方法』を指しますが、要約するに、ある行動がどのような結果をもたらすのか、ありとあらゆる要素を含めて、総合的に予測する思考法です。 分かりやすい例に「風が吹けば桶屋(おけや)が儲かる」ということわざを挙げましょう。強い風が吹いて砂ぼこりが舞うと、目に砂が入って失明する人が増え、三味線を弾いて生計を立てる人が

          #3 本気で社会を変えるにはーシステム思考で見える残酷な一面

          #2 本気で社会を変えるにはー投票の意味

          私達はあまり努力もせず、それでいて望ましい結果ばかりをついつい期待してしまいます。複雑になる社会において、全力で何もかもをしなければ、危機に気づくことも、何が正しいかを知ることも、抗って自らが望む未来を勝ち取ることができないにも関わらず・・・ 政府は2021年4月、2030年までに2013年比46%二酸化炭素を削減するという目標を立てました。46%が不十分という声もあるでしょう。十分に高くチャレンジングな目標だと感じる人もいるでしょう。忘れてはいけないのは、人類が排出する二

          #2 本気で社会を変えるにはー投票の意味

          #1 社会を本気で変えるにはー正しくない情報であふれる社会

          テレビや新聞・ネット記事を見ていると、どうしようもない切なさを感じてしまうことがあります。というのも、フェイクニュースとまでは言えないけれど、社会にはあまりに正しくない情報であふれかえっているからです。 営利的に目を引くために、極端に誇張されたものが多々見られます。あからさまな間違いとは断定できないものの、言い過ぎではないか、論理が飛躍していないかと疑われるもの、果ては政府が都合の良いように解釈をねじ曲げたものが多々見られます。 最近とても残念に感じることの一つが、SDG

          #1 社会を本気で変えるにはー正しくない情報であふれる社会