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人間の話

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その辺にいる普通の人間の話
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#小説

いけず石

近所のオッさんが敷地内をはみ出し、家が道に面するコーナーにデカい石をはみ出して置いている。印刷屋の兄ちゃんはカーブする際に車のバンパーを擦り、私道の持ち主は迷惑ながら何も言わない。そんないけず石に持ち主がニスを塗ってピカピカに光らせている事を今日祖父から聞いて笑った。

人生を180度変えた女

医者と結婚したわけでもなく、大金を相続したわけでもなく、女の人生は数年でコロッと変わった。住む事なんか考えた事もなかった関東に住み、車を乗り回し、男に頼る事をやめ女は1人で暮らす場所を見つけた。職を得、仲間を見つけ、女は暗い人生から自ら這い出したのだ。

負けない女

男達の悪事が頭を占拠するときがある。思い出すのは時間の無駄だ。しかしこれを書いている時点でむかつく男達のことを思い出しているというのが事実なのだ。
女は一文字一文字呪いの如く念を込め、文章を書くことで男達に波動を飛ばす。どうか男達の未来が真っ暗闇に包まれますように。

他に女がいた男

地元の友達と飲んでいるというのは常套句だ。男の所在は分からなくなっていたが、今朝私はその男が昔から一緒にウサギを飼っていた女と先週末映画を観に行っていた事を明らかにした。クソくらえである。そしてその現実は写真や私に男の電話番号を即座に消去する勇気を与えたのだ。

独身貴族の話

独身貴族の話

ペースメーカーの男

其の男との連絡を断ち、早9年以上が過ぎた。
男と知り合ったのは、男が当時39歳の時。生きているならば今年の8月に52歳を迎えているはずだ。

生きているならばと表現したのには理由が存在する。男は体が弱く、心臓にはペースメーカーが埋め込まれている。カチカチと無機質な音が刻む鼓動は、エレベーターの狭い空間に響き、静まり返った空間にいる私に死や病を意識させる。

男はシルバーの三菱

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年収800万借金まみれの男の話

年収800万借金まみれの男の話

或る九州男児

男は三年前、地元のある九州を飛び出し
関東に流れ着いた。男と職を共にする女と同学年、同い年であり気安く話しかけてくる偉そうな態度が疎ましい。

男は死にものぐるいで違う世界の仕事を覚え、夜の街を掌握する仕事から、日中陽を浴びて金を稼ぐ仕事に馴染むよう努力を重ねた。

狡猾な男は、自分の欲の為や立場を保つ為に職場の人間関係をクラッシュすることを厭わない。夜の世界で甘いも酸いも味わって

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15年前から知っている男

その男は誰もが認めるエリートだ。頭が良いその男は普通の容姿なのに年齢=彼女いない歴の童貞である。デートの際のスマートな金払いやエスコートに欠け、夕食さえも共にとろうとしない。私を相手に発展的な会話も出来ず、こりゃ魔法使いまっしぐらだわと深く感じた。