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積みくずし日記|2024年11月8日

こんな時間に目覚めたこと、人生で2回くらいしかないかもしれない。
朝4時、半同居人にとっては最悪な時間に目覚ましが鳴る。

私は早起きが苦手で寝起きも悪い方なのだが、こういう時折ある「どうしても早く起きなければならない場面」みたいなものには強い。
そもそも寝れてないとかではなく、パッっと入眠して、ぱちッと目が覚める感じで、イメージでいうと眠気のスイッチがON/OFF切り替えられる感じ。

聞こえはいいけど、普段からこの能力が発揮できるわけではなく、イレギュラーな状況への危機感とお金が関わっている切迫感がなせる技である。

そう、何を隠そうこの日は単発アルバイトのためにこんな早起きをしたのだ。
昨日合格したアルバイトの面接日程が先でお財布状況が若干不安になった私は、巷で話題のタイミーではなく「メルカリハロ」で単発バイトデビューを飾ることにしたのである。

今回選んだのは荷物仕分けのアルバイト。
始業が6時かつ、作業場所が家から30分と勘違いして応募したところ、1時間ほどかかると発覚し悲しみながら朝4時に起きる羽目になった。

準備は事前にしていたので、意外と余裕を持って家を出れそう。
4時に起きなくてもよかったかもな、とか思ったけれどそうするときっと寝坊していたので、つくづく自分が信用できない。
眉間に皺を寄せて眠る半同居人に声をかけ、まだ暗い道のりを最寄り駅まで向かう。

私の近所の人は比較的朝方の人が多いと思うけど、さすがにまだ人通りが少ない。
それでも、早朝シフトに向かうかと思しき人や大きなキャリーを転がしている人を見かける。

まだ暗い道を歩くのが少し心細く感じていたけれど、意外なお店がすでにシャッターを開けていたり、開店に向け荷物を搬入していたり、普段動くことのない時間帯に活動し始めるのは私が知っている街と異なる表情が見れて悪くないなと思った。

最寄りの駅から行ったことのないエリアへ向かう。電車を乗り継いで移動していると、温かい車内で頭の中の眠気スイッチが押されるのを感じる。
車内にはこれから働きに行く人やこれから帰宅するらしき人が居て、みんなの覚醒具合もさまざま。
どの人かわからないけど20分ほどずっとアラームが鳴り続けている人がいて、ここまで起きないって相当深い眠りだなあと思った。

目的地の最寄り駅へ到着。
元々あまり降車人数の多くない駅のようで、私のほか降りたのは5人ほど。
改札の外もまだ暗く、日の出の気配もない。
地図で指定場所を確認するとここから15分程度歩くらしい。

ちょっと怖いなあ…と思いつつ歩き始めると、わたしの仄かな恐怖心に反してこれから駅に向かう人が向かいから何人も歩いてくるのが見えて安心した。
この人たちからすると私は何目的の人に見えているんだろうと考える。何も思われてないのかもしれない。

迷わないよう地図と睨めっこしていると、15分前に指定場所に着いてしまった。
思っていたより近かったので、歩きながらつまんだクッキーが口の中から消えてくれない。
慌てて飲み込んだけど、クッキーのかけらが口に残っていそうで心配だ…。

現地に着いたらインターホンで知らせてください、と事前に指示されていたのだけれど、事務所はすでに全開で、今日一緒に働く方らしき人がいる。
声をかけると奥に座っているよう指示を受け、今回が初?と聞かれる。
このバイトも、バイトアプリ自体使うのが初めてです、と答えると、少しぶっきらぼうな感じで「ああそう」と返事が返ってきた。
この時点で私の不安はピークに達していて、このまま帰れと言われたらどうしよう…なんの作業をするんだろうか…とおろおろしていた。
すると開始時間の7分前くらいに2名ほど別の方が事務所へ入ってきて、私と同じバイトアプリを使っていて、経験のある方だという。

不安感から急に安堵感に転じ、なんだか2人が光っているように感じながら、社員さんから声をかけられるまでここで待っていて、と休憩スペースへ案内された。
しかし待てど暮らせど来ない。

さすがに焦って作業場へ入り、一番最初に挨拶をした方へ現状を訴えると、ざっくりした指示で持ち場へ入るように言われた。
あまりにも全員自分の作業に集中してます、みたいな雰囲気で心が折れそうになったけど、ここでへこたれる無職ではありません。
すでに経験のある単発バイターさんを捕まえ、社員さんが来ないので作業場に来ました、何をするのか教えてください、と引き下がってみた。
たぶんすごく面倒くさかったと思うけど、簡単にやり方を教えてくれたのでとりあえず動いてみることにする。

作業内容は比較的シンプルで、カーゴの中にある荷物を住所と配達希望日で仕分けをして、割り振られているトラックや別のカーゴにどんどん置いていくというもの。

ただ見分け方や割り振られている置き場所のメモ内容が最初は掴めず、その度に同じ作業場の人を捕まえてはしつこく聞いた(ごめんなさい)。
おそらく新卒で入社したてだった私であれば、ここで挫けて泣いていたかもしれないしそうでもないかもしれない。
でも確実にあの時より精神が図太くなっているので、「じゃあちゃんと教えてくれよ!」のメンタルでいけたのがよかった。

最初めんどくさそうだった同じ作業場のおじさま2人は、通常荷物を終えて冷蔵・冷凍荷物の仕分けを終える頃には笑顔を見せてくれるようになった。
しかもいつの間にか外が明るくなってる!

3時間はあっという間で、気づいたら終わっていた。
腕はすでに筋肉痛がやってきそうな気配がしているけど、目はびっくりするくらい冴えている。

9時になった途端、私以外の2人はさささっと退勤していき、それがこの作業場へきた人の流儀なんだなあ…と横目で追いかけながら私も退勤。
作業場の外にはこれから出勤の人がたくさん居て、陽の光が目に痛いくらい。

結構オンラインで買い物をすることが多い方だと思うけど、たくさんの人が手で仕分けて、運んで自分の手元に来ていること、もっと感謝しなきゃなあと思った。ポチッと押してすぐ手元に、なんて簡単なことじゃないのだ。
再配達になったものはまた仕分けなおしたりしているし…。

早起きして体を動かしたので、お腹が減ってしまった。
家に帰るまで我慢しよう…と思っていたのだけれど、乗り換え駅でお蕎麦屋さんの前を通ったら出汁の香りで脳みそが支配されてしまった。
もう無理だ。

ということで大好きな駒込の「一○そば」さんに寄り道。
朝5時半から15時まで営業されているお蕎麦屋さんで、コシのある太そばがびっくりするくらいお値打ち価格で食べられる。

温そばととり天

し、しみる〜〜ッ!

最後冷凍製品の仕分けを担当したことで何となく体が冷えていたので、温かいお出汁を飲むと脳みその緊張と、体のこわばりが緩んでいくのを感じる。
おいしい、来てよかった。

10時半ごろ、ようやく帰宅。
服についてしまった謎の汚れと格闘したあと、気づいたら寝てしまい、起きたら12時半。
せっかく早起きにしたのに...!!
なんとなくだらだらしてしまった後悔が込み上げたが、こればっかりはしょうがない。
むしろまだ昼過ぎなことに感謝をしよう。

母から先日の奈良旅行と東京観光の写真を印刷したと連絡があった。
なぜか1枚、東大寺の大仏の写真だけ印刷をミスったようで、大仏の人中からデコルテが大写しになっていた。何の写真だ。

大阪・奈良旅行の記録

寅さん祭りにいた謎のキャラクターの写真まである。

「オオタさん!右足上げれる!?」と言われていた。
ご苦労様です...

私が腹痛でうめいていた横を台車で運搬されていく姿は印象的だった。

寅さんフェスの記録

他にも私と父が寝ている姿を写したものなど、いつの間にこんなものを撮ったんだ?というものもある。寝相がそっくりで親子だなあと思った。

本の買取を依頼していた古書店から買取金額の連絡があったので受け取りに行くことに。

本の買取依頼をした日の記録

道中、母と電話をしていると今日は高祖母の命日だという。

蒸しパンとチーズが大好きな人で、亡くなった日の夜、チーズグラタンと蒸しパンを食べて幸せだ、思い残すことはないと言っていたのだという。
そのあとお風呂に入って、心臓が苦しいと訴え亡くなってしまったそうだ。
その日もこれくらいの急に寒くなる時期で、今思うとヒートショック現象だったんだよね、と母は寂しそうに呟いていた。

蒸しパンとチーズが好きなひいひいおばあちゃん。
会ってみたかったな。

古書店に到着し店内に入ると、想像していたより賑わっていた。
大変失礼な話ではあるけども、いつ行ってもお客さんがあんまりいないなあと勝手に思っているお店も、私はピークタイムに来店してないだけなんだよな、と最近つくづく思う。
自分の見えている範囲だけで判断してはダメだよね、ほんとに。

カウンターにはいつものおじさまでも先日会った美女でもなく、見たことのないお兄さんが座っていた。
時代が時代なら書生、現代だったら劇団でそこそこ名の知れた俳優...みたいな雰囲気の人だった。
一体ここは何人のスタッフがいるんだ...。

聞きたい気持ちを堪えながら、買取の件を伝える。
改めて金額を伝えられ、問題なければ個人情報をカードに記入するよう指示を受けた。
小さな紙面には名前と、職業と住所の記入欄。

仕事に就いていないとき、こうした一瞬のできごとで、ピシャッと冷水を浴びせられた気分になる。そして同時に、自分がいわゆる枠組みから外れてしまったみたいな、なんとなく心細くて居心地の悪い思いを味わうことになる。

無職と書く選択肢が頭をよぎったけれど、面接の結果をもらっていたことを思い出してアルバイトと記入した。まだ受かっただけだけれど、嘘ではないだろう。

大学時代、卒業論文のため使った映画研究関連の洋書が7冊ほどだったが、合計で3000円くらいになった。
かなりニッチな資料だし、なかなか買い手も付きづらいだろう、買い取ってくれて大変ありがたい。

そのまま帰宅すればいいところを、いつもの悪い癖で店内を物色してしまう。
そしてこういう時に限って欲しい本が見つかるのだ。

結局誘惑に負け、3冊を購入。
・いしいしんじ「ポーの話
・川上弘美「大好きな本:川上弘美書評集
・多和田葉子「太陽諸島

ほんのり罪悪感を抱えつつ、本の選定には満足した気持ちで帰宅。

玄関前に何かが届いている。
驚きつつ確認すると母が送ってくれた窓の断熱用のプチプチロールだった。

私の住んでいる部屋は防寒設備が本当にお粗末なので、冬場は窓枠に手を当てるとほんのり入り込んでくる冷気を感じ取れる。
しかもベッドを置いている側の壁にも腰窓があり、こちらも大変気に入ってはいるのだが寒さを防げていないので、早朝、顔に弱い冷気を感じて目覚めることもある。
冬以外の季節に部屋探しをするみなさん、防寒のことも考えて選んだ方がいいですよ…(難しいよね)。

早起きして、体を動かしてなんだか充実した1日だった。
肩の筋肉痛だけひどくなりそうで心配だけど。

ではまた。

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蟹類
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