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ビリーさん集め。

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ビリーさんの書いたもので個人的に大好きなものを集める。
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#旅写真

「残響」

淋しさに慣れるほど、僕らは歳を取ったんだろう、
痛みを忘れたふりするくらい、
記憶を辿れど知った日のこと思い出せない、
幸福さという幻を、呪いにして背を撫でる、
海鳥鳴いて潮風切った、
初夏の日は、残響みたいに過ぎてゆく、
生きゆく四季は絹雨みたいに過ぎてゆく、

【写真】ハロー・マイ・スロウライト

【写真】ハロー・マイ・スロウライト

#slowlight

人格者になろうとなんて思ったことがない。
これからも、そんな薄気味悪いやつには、ならない。

目標は子供食堂をつくること。
なにも教えてはやれないけれど、腹いっぱいに食わせてやれるとは思う。
居場所のない子、お金のない子、泣いている子を集めて、「ごはん食べて行けよ」でいい。
「明日もまた来いよ」って言ってあげられたらいいだろうな。

髪、伸びたね。切ってくれば?
夜はなにを

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借りておいた映画をBGMがわりにして朝食を。徒歩で海まで。そして帰宅。コンビニコーヒーを手にスーパーへ。数日分の食糧を。帰宅して、コロッケを食べながらまた映画。目についた三本を繰り返す。飽きたら返却して、また別の三本を。世の中のことがわからなくなる。それくらいで良いのだと気づく。

「最果て」

「最果て」

最果てにて僕は問う、
地の終わりで君が訊く、
ここに咲いてる花の色は何色なのって、
嬉しいことに色はないから君が好きに塗ればいいって、
砂を掬ってこぼれてゆく粒々に、跳ねる光の滴を想う、
灰色の風景は、どこまでだって続いてしまいそうって君が、

美しいものを求めてしまう、それはほとんどないと気づいた、
愛や恋など幼子が抱くまぼろしだって、いつしか僕らは知ってしまう、
持たない者ほど焦がれちまうもの

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「海岸線」

「海岸線」

手のひらに、かき集めた砂、
再び地に返す、僅かな音が消ゆる午後、
風は止み、遠くに雨雲、
僕はいまから白い月を盗みに行くから、
ほら、手を出して、
海鳥たちの待つ潮騒へ、

歩き疲れた? 踵が鳴らないときもある、
遥か遠く海を想う、幻ひとつを舐めた夜、
風は止み、ほら海が見える、
僕はいまから水平線をつかまえるから、
さあ、荷を捨てて、
夕陽が落ちて永遠の待つ潮騒へ、

「そろそろ眠ろう」ってアン

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「アリアドネの糸」

「アリアドネの糸」

水が光の反射の軌跡を歌う、
覗き込んだ僕らの顔が、映し出されて揺れる鏡面、
熱持つ砂の粒ひとつ、何処かに紛れたアリアドネの糸を探した、
見つからないと知っていてなお、どこかで変われぬ僕たちは、

笑顔がいつも揺れているのは横顔ばかりを見続けたせい、
初めて見下ろす正面は、眠りについているだけみたい、
組み合わされた細い手に、水辺に咲いた花一輪を差し込んだ、
微笑んでいた、苦しむことも悲しむこともも

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「木漏れ日」

「木漏れ日」

朝には藁を編みながら、
昨日までの過去に見た、
美しい季と景、目を閉じ祈る、
変わらず続きますようにと、
人が呪いの言葉を吐いているころ、
記憶を戻せば手のひらに、
慈しみを咲かせることもできるのに、
風に吹かれて手から離れる藁一筋、
そうだった、笑えた日々のことを忘れてた、
雷が、鳴く空の下、
俯けば広がるのは藁の草原、
遥か向こうに微笑む君が、
愛なんて気恥ずかしい、それなのに、
その在処を知

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「ルールルル」

「ルールルル」

逆光の坂道を、三歩進んで振り返り、
浮かべていたのはたぶん笑顔、
影になって見えなかったはずなのに、どうしてだろう眩しいくらい思い出す、

足りないと欲しがって、手に入れると他を欲しがる、
ないものを探し、あるものは忘れ、
そんなことばっかやってるってなんだかさぁ、

砂を噛んで土を飲む、日々日々それを続けてる、
どこを見れども陽は見えるがつかみ取れずに涎を垂らす、
飲み込みたる赤い土、異物が喉を

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「遠雷」

「遠雷」

悪ふざけが許された、若葉の季節は昨日に過ぎて、
いつか笑って話すだろうか、或いは記憶に閉ざすだろうか、
子供のまま生きることは叶わない、
どれほど強く望んだところで生きる以上は背負うものを増やしゆく、

それをどうにか振りほどこうと、置いてゆこうとするもまた、
張り付く影の陰影が、私に不可を知らせているよう、
やはりは叶わぬことを知る、其れを知るのも人で或るが故のこと、

盛夏は赤く澄み渡り、夕陽

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「ユリシーズ」

「ユリシーズ」

沖は紺碧、しかめっ面で空と水を区別していた、
ぼんやり眺めているだけじゃ、それはふたつにわかれなかった、

君は隣で遥か南を漂っている、幽霊船を空想してた、
絶える間際の羽虫がもがく、きれいではない黒い点の一粒を、

夏の終わりに話してくれた、そんな気分だったんだろう、
どうでもいいことだけどって、振り返るのを億劫そうに、

君は照れてはしゃぐの嫌った、真上でお日様見てるからって、
星の時間になる

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「慟哭」

「慟哭」

波飛沫に跳ね廻る、空が溢した揺れる黄金、
星々ならもう眠りについて、いまはたぶん、
生きとし生けるすべてのものから目を逸らそうと離れゆく、
群れ群れから去れ、狗はもう此処に居ぬ、
爪先から伸びる影の長さがいまも、遠ざかる日々を思わせ、

リヴィンストンの冒険譚と、作者不明の航海記を交互に読んで、
高鳴らせた胸なら今はもう、静かに凪いで揺れることを忘れてしまった、
雷鳴るのを待っている、それはほんと

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「冬の口笛」

「冬の口笛」


穴の開いた淡い藍の古いバスタブ、縁から氷柱を尖らせていた、
数秒おきにぽつりと落つる、
透き通ったばかりの水は、天から注ぐ光を連れてふわりと舞う、

キツネの親子が口を開けて待っていた、
まつげを白く凍らせて、乾いた体が成ったばかりの透ける水を待っている、

片目に黒い眼帯の、火吹き男が泣いていた、
零した其れでキャンドル、ライター、マッチまで、
点火の術のすべてを濡らして消していた、

溶けた

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【雑記】(相変わらず)雨男のビバップ。

【雑記】(相変わらず)雨男のビバップ。

 昨日、お世話になっている美容室で、オーナースタイリストさんとあれこれとおしゃべり。
「最近、全然、雨降らんねー」
 と、美容師Sさん。
「昨日、雨降ってたやん……」
 そうやっけ。いい加減な記憶を自ら笑うSさん。とは言え、確かに今年は降雨が少ない気がする。梅雨の後半はあまり降らず、初夏には、ダムの渇水が懸念されて、一級、二級河川の水量の低下から、農家さん向けに「一度に大量の川水を使わないでくださ

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「腑抜けで愚鈍」

「腑抜けで愚鈍」

腑抜け共が凛たる姿の賢人たちを嗤ってた、
けれども賢人たちは賢人たちで、
如何なる術にて隣人たちを欺こうかと台にカードを並べてる、

根無し草の旅人は、根が無い故に花を咲かせることはなかろうが、
世捨て人を決め込んで、百年前のウヰスキー、
瓶のまんま呷ってやがる、喉に火を点けたいだけさと強がった、

呪いの言葉を見つけるたびに木屑にそれを書き出して、
ひとつひとつ炎に焚べた、
腑抜けか賢者か、そん

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