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2021年に詠んだ短歌まとめ

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(三年目)
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2021年7月の記事一覧

短歌連作「何もかも受け入れられぬまま時が経つ」 14首

短歌連作「何もかも受け入れられぬまま時が経つ」 14首

顔のない人々の群れ ひらひらと灰によく似た雪の降る街

言えるわけない言葉たちが残ってて景色が剥がれ落ちてく二月

腸を引き抜かれるような別れだ だけど笑って戦わなきゃな

冬のよる空が重くて遠い灯があまりに遠く行くあてはない

楽園のイミテーションだ 地下室の少年がドア強く叩いた

折れている翼で空は飛べないね 当たり前だね 当たり前、だね

皆はもう行ってしまった進めないたったひとりの僕の戦争

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短歌連作「誰もがながい夢を見ている」 14首

短歌連作「誰もがながい夢を見ている」 14首

見ていられない現実があるために誰もがながい夢を見ている

多面体としての他者に着かぬまま脳の迷路を点から点へ

虹ですら赤のほかには見もしない人が見上げる真っ赤な空だ

現実と願望をすり替えたのだ無人の街の怒れる怪盗

話し合うほどに濃霧につつまれて果ては虚空と怒鳴り合ってる

絶滅のケモノの角はアクリルのなかで戦のゆめを見ている

強くなく美しくなく正しくもないケモノらは都市を創った

ビルとい

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短歌連作「まだ欲することに励まされてる」 10首

世の中の細部に秘められてる愛たとえば飛び出す絵本だったり

絵本から飛び出すウサギ     浮き上がる罪悪感だこんな大人で

誰に言うわけでもないが生きていてごめんなさいとよく口にする

ゆうぐれの車窓にうつる鉄橋ととおき叫びと硬質な海

今日だけは沈み込みたいまろやかなキリンラガーの金色の海

発泡酒ではなくビール 爽よりもハーゲンダッツ ひとり飲み会っ

夏季メニューにレモンタルトを書き足した

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