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スポーツでの腰痛

どのスポーツでも腰痛を起こすことが多くあります。

スポーツでの腰痛の場合、その競技の特有な動作の負荷の蓄積によって起こる場合がほとんどです。

私は、東京にあるU-12・U-14バレーボールチームのアスレティックトレーナーでもあり、自分がプレーしていた競技ということもあってバレーボールに関しては得意分野です。

ただ、野球、サッカー、バスケットボール、ゴルフ、ラグビー、陸上(短距離、長距離)、水泳などの選手の腰痛も当院で多くみてきました。

とくに高校生と大学生のスポーツ選手が多く、それぐらいスポーツで腰痛を訴える選手が多かったです。

今回は、スポーツでの腰痛について解説させて頂きます。


1.スポーツでの腰痛の分類


スポーツでの腰痛の分類では、動作での分類が使われることが多くあり、以下の3つとなります。

① 屈曲型腰痛
② 伸展型腰痛
③ 回旋型腰痛


① 屈曲型腰痛


体幹を前屈(屈曲)すると痛みが出る腰痛のことです。

体を前かがみした時に、椎間板に圧迫したストレスが加わり痛みが生じたり、腰背部の筋肉が伸ばされることで生じたり、あるいはお尻の筋群、ハムストリングス(太ももの裏の筋群)が伸ばされることが原因となります。

屈曲型腰痛の一般的な疾患には、筋・筋膜性腰痛、椎間板性腰痛、腰椎椎間板ヘルニアがあります。

典型的な姿勢は、腰背部が曲がる(腰椎後弯)、骨盤が後傾、膝が曲がる姿勢となります。


② 伸展型腰痛


体幹を後屈(伸展)すると痛みが出る腰痛のことです。

体を反った時に、椎間関節や仙腸関節にストレスが加わり痛み生じたり、腸腰筋や大腿筋膜張筋などの股関節の前側の筋群が伸ばされることが原因となります。

伸展型腰痛の一般的な疾患には、椎間関節性腰痛、仙腸関節性腰痛、腰椎分離症・すべり症があります。

典型的な姿勢は、腰背部が真っ直ぐまたは反りが強い(腰椎前弯)、骨盤の前傾が強い姿勢となります。


③ 回旋型腰痛


体幹を捻る(回旋)と痛みが出る腰痛のことです。

体を捻った時に、腹筋群の緊張によって骨盤の前傾が強くなり、腰椎の椎間関節や仙腸関節にストレスが加わり痛みが生じると考えられています。

また、胸椎・股関節の柔軟性低下によっても、腰椎の椎間関節や仙腸関節にストレスが加わり腰痛が生じることもあります。

伸展型腰痛と併用して起こることが多いです。

回旋型腰痛の一般的な疾患には、椎間関節性腰痛、仙腸関節性腰痛、腰椎分離症・すべり症があります。

典型的な姿勢は、体幹の左右のアンバランスにより、左右の傾きがみられる姿勢となることが多いです。


2.腰椎分離症


腰椎椎間板ヘルニアがスポーツで起こしてしまうかについては医学的根拠はないといわれています。

ですので、ここでは腰椎椎間板ヘルニアについては解説せず、スポーツでの腰痛で一番気をつけたい「腰椎分離症」について解説させて頂きます。

腰椎分離症は、成長期のスポーツ選手に多い腰痛で、発症してしまうと今後のスポーツ競技に支障が出ることもあるので、気をつけたい腰痛です。

なぜなら、3~6ヶ月のスポーツでのプレー禁止を余儀なくされて、長期離脱をする可能性がある腰痛だからです。

子どもによっては最悪の場合、スポーツを辞めてしまうことにも繋がってしまうため、注意が必要です。


① 腰椎分離症とは

小学生高学年、中学生ぐらいにジャンプや回旋を行うことで、腰椎の後方部分の骨に亀裂(疲労骨折)が入って起こります。
「ケガ」のように1回で起こるわけではなく、スポーツの練習などで繰り返して腰を反らしたり、回したりすることで起こります。
一般の人では5%程度に腰椎分離症の人がいますが、スポーツ選手では30~40%の人が腰椎分離症になっているといわれています。
腰椎分離症は10歳代で起こりますが、それが原因となってその後徐々に「腰椎分離・すべり症」に進行していく場合があります(腰椎の両側分離の場合)。

公益社団法人 日本整形外科学会
公益社団法人 日本整形外科学会より(腰椎分離症)


② 症 状

  • 腰痛(腰のベルトのあたりの痛み)、またはお尻や太ももあたりの痛みが生じることもある

  • 腰を反ったり、捻ったりすると腰痛が生じる

  • まれに、坐骨神経痛(脚への痛み・しびれ)が生じることがある


③ 病期での分類(CT検査)

  • 初期 → CT検査で一般の人では、わかりにくい骨の亀裂

  • 進行期 → CT検査で一般の人でもわかる骨折線

  • 終末期 → CT検査で一般の人でもわかる骨折線(偽関節)、かつMRI検査での所見がみられない

※ 現在では、MRI検査で「超初期」が判明できるとされている
※ レントゲン検査では、初期を判明するのは困難といわれている


④ 病名の判断

  • レントゲン検査で側面、斜め方向で分離像が確認される(進行期・終末期)

  • 早期診断にはレントゲン検査ではなく、CTやMR検査が有用とされている


⑤ 治 療

  • 腰椎分離症の治療方針のポイントは、骨の癒合(くっつく)を優先させるのか❓痛みをコントロールさせるのか❓目的をはっきりさせることが重要

  • 骨の癒合を目的とした場合、基本治療は安静、硬い装具での固定。

  • 痛みをコントロールさせる目的の場合、物理療法、鍼などを行うが、手技療法を行う場合は注意が必要(傷口を広げてしまう可能性があるため)

  • 胸郭(肋骨や胸椎)や股関節の柔軟性を高めることが大事

※ 安静にしていても骨の癒合が得られる可能性がゼロなのに、硬い装具を装着して何ヶ月もスポーツ中止をさせられている子ども達が多くいるのも事実です。
したがって、骨の癒合が得られるかどうかの見極めが重要で、もし骨の癒合する可能性が少ない場合は、痛みがなければスポーツを再開させることも考えなければなりません。

硬い装具(コルセット)


3.スポーツでの腰痛の対処法


屈曲型、伸展型、回旋型腰痛は施術も大事ですが、共通していえることは胸郭(肋骨・胸椎)と股関節の柔軟性を高めることです。

具体的には、アスレティックトレーナー的にコンディショ二ングでストレッチ、体操法が一般的になり、長期的での腰痛の予防法は、腰まわりの安定性を高めるために体幹トレーニングを実施することが重要です。

成長期の子どもに関しては、腰椎分離症にならないように予防する上記の方法やオーバーユース(過剰負荷)にならなくするための練習方法を考えなければなりません。

大人の場合は、施術も必要になってきますが、セルフコンディショ二ングも取り入れることが大事です。

コンディショ二ング方法、トレーニング方法に関しては、YouTubeで様々なトレーナーの方が紹介しておりますので、そちらをご覧頂ければと思います。

私のコンディショ二ング方法やトレーニング方法に関しては、別のnoteで詳しく解説させて頂きます。



以上でスポーツでの腰痛について解説させて頂きましたが、スポーツでの腰痛で注意することは、成長期の子どもが腰痛を訴えた時です。

成長期の子どもが腰痛を訴えた場合、まずは腰椎分離症があると思って対応していくのが無難であり重要となります。

現在の日本でのスポーツ環境はだいぶ良くはなりましたが、まだオーバーユース(過剰負荷)の練習をやっているスポーツ競技も多くあります。

とくに小学生、中学生での練習強度には注意をはらう必要があります。

成人以降のスポーツでの腰痛に関しては、施術やセルフケアをしっかりやっていくことが大事となります。

是非、参考にして頂ければと思います。


まとめとポイント

  • スポーツでの腰痛は、そのスポーツ競技の動作での負荷の蓄積によって起こることが多い

  • スポーツでの腰痛の分類は、屈曲型腰痛・伸展型腰痛・回旋型腰痛で分けられる

  • 成長期の子どものスポーツでの腰痛は、腰椎分離症に注意をする

  • 腰椎分離症は初期でみつかれば良いが、レントゲンで初期をみつけることは困難なことが多い

  • 腰痛の予防は、胸椎・股関節の柔軟性を高めることが大事で、ストレッチ・体操法がある

  • 体幹の安定性を高めるために、体幹トレーニングも有用



参考文献

  • 腰椎分離症のミカタ(文光堂)



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