やまちゃんはヴィンテージのジーンズのお尻のポケットに、いつも同じ文庫本を入れていた。待ち合わせのときなんかに彼はたいてい先に着いていて、壁に寄りかかって立ったまま、その本を読んでいた。ポケットの中にあったのは、ジャック・ケルアックの『路上』。その頃、ぼくらは20代の半ばに差しかかろうとしていた。ふたりとも無職だった。 ケルアックのことも、『路上』のことも、ぼくは何も知らなかった。ぼくはやまちゃんがただ格好つけるためだけに、その本を持ち歩いているのだと思っていた。それでも、そ
ぼくの大好きな本に『理想的な朝の様子ー続 谷川俊太郎の33の質問』というのがあります。今日はこの33の質問に自分なりに答えてみようと思います。谷川さんが本当に聴いてくれているかのようにイメージしながら答えたいと思います。数が多いので3回に分けて投稿します。今回は第3回。 もし人を殺すとしたら、どんな手段を選びますか? 毒殺…かな。人を殺すことになるなんて、よほどのことがあったのだと思うけど、それでも、血を見るのも、痛いのもいやなので、静かに眠りながら逝っていただきたい。逃
ぼくの大好きな本に『理想的な朝の様子ー続 谷川俊太郎の33の質問』というのがあります。今日はこの33の質問に自分なりに答えてみようと思います。谷川さんが本当に聴いてくれているかのようにイメージしながら答えたいと思います。数が多いので3回に分けて投稿しますね。今回は第2回。 一日が二十五時間だったら、余った一時間を何に使いますか? 昼寝したい。と思ったけど、もし、朝昼夕のどの時間帯の一時間にするかを選択できるのなら、朝の一時間を増やして、その時間を使ってジョギングをします。
ぼくの大好きな本に『理想的な朝の様子ー続 谷川俊太郎の33の質問』というのがあります。今日はこの33の質問に自分なりに答えてみようと思います。谷川さんが本当に聴いてくれているかのようにイメージしながら答えたいと思います。数が多いので3回に分けて投稿しますね。 金、銀、鉄、アルミニウムのうち、もっとも好きなのはどれですか? アルミニウムが好きです。 英語だとアルミナムと発音されるようですね。金、銀、鉄には金属の種類ということ以外にも、優劣や価値を伴ういろんな意味を詮索してし
ここ数年、とある情報誌の取材で、東京の立川周辺に数えきれないほど足を運んだ。昭和記念公園がかつて米軍基地だった頃の話や、玉川上水駅近くにも基地があった話を聴いた。当時は基地で働く日本人も大勢いて、話をしてくれた中華料理店のご主人も若い時分に基地内のレストランで料理の修行をしたらしい。床屋の店主のお父様は、米兵の髪を切るために基地に通っていたという。彼らにとってはアメリカは目と鼻の先だったのだ。 立川市のとなり福生市には、今もなお現役の横田基地がある。この「福生」という地名が
9月のある日の夕方、西日暮里ブックアパートメントで、ぼくは一日店長をしていた。その日、知り合いが店に来てくれた。その人とはスタンドエフエムという音声配信プラットホームで知り合った。耳ごこちのよいおしゃべりで、読書感想なんかを配信されている素敵な大人の女性だ。たまにコラボ配信で声の共演をすることはあるが、実際に彼女に会うのはこれが初めてだった。彼女はこれまでも何度か店に足を運んでくれていて、すでにお気に入りの棚もあるようだった。この日もお目当ての棚を見たあとで、本を何冊か手に持
「アメリカングラフィティ」という映画がある。ぼくが高校生の頃、テレビで放送されたものをVHSのビデオテープに録画して何度も観た映画だ。サントラ盤をカセットテープにダビングして聴きまくった。歌詞カードなんかなかったから、どの曲も正しい英語の発音を覚えるより先に、耳コピだけのむちゃくちゃな英語で口ずさんでいた。ハイスクールを卒業して都会に旅立つ若者が、その土地で過ごす最後の夜の物語。ぼくはその若者たちの気持ちになってみたかった。あの頃ぼくは、アメリカをとても近くに感じていたような
通勤通学にはじまり、ショッピングや会食などの用事のために、人はバスに乗って町から町へ移動する。電車やタクシーと同じで、バスも交通手段のひとつとして、人々をいろんな町へと運んでくれる。 いま読んでいる本「スバらしきバス」の著者、平田俊子さんにとってのバスは、ちょっと様子が違う。居酒屋の赤提灯に誘われるように、空き箱を見つけた猫がくるくると箱の中に収まるように、あの大きくて四角い乗り物を見ると、平田さんの足はバスのステップを昇る。そこには目的地など必要ない。なぜなら彼女にとって
以前読んだ本「さよなら、男社会」尹雄大(ゆんうんで)著と「マチズモを削り取れ」武田砂鉄著は、男性性について考えるきっかけだったり、男性優位社会の現在位置を知ることができる本だ。この二冊を読んでぼくは何度も大きく頷いた。 ほくは50代の男だからこの日本社会では圧倒的な優位な立場に立っている。そんなマチズモ真っ只中のぼくですら、中年男性たちの言動や立ち振舞いに、いい加減嫌気がさしている。例えて言うなら、自分もタバコは吸うけど他の人の煙は嫌い、とかそういう感じに似ているのかもしれ
三連休には妻とよくケンカする。一緒に過ごす時間がいつもより長くなるから、その分互いに地雷を踏んでしまう確率が増えるというしくみだ。ケンカになるとすぐに話が噛み合わなくなり、気がつけば事の発端がなんだったのか分からなくなる。いま何の話をしているのか、真剣に考えれば考えるほど気が狂いそうになる。 妻はわりと早い段階で結論にたどり着くようだが、ぼくは解消されていない疑問が一つでも残っていると、結論めいたものが見えていたとしても、ゴールテープを切りたくないのだ。だいたいケンカの終盤
ジェシー・ハリスのライブがあることを知ったのは先週のこと。慌ててチケットをとった。ゲストに阿部芙蓉美というシンガーソングライターが出るらしいことも知った。この一週間、阿部芙蓉美を聴きまくった。11年ぶりにリリースしたという「Super Legend」というアルバムを聴きたおした。めちゃくちゃいい。全9曲34分、頭から最後まで通しで聴くためのアルバムだ。 ついさっきステージに立つ阿部芙蓉美を観てきたばかりだ。ステージ上の彼女は多くを語らず、曲の合間にため息をつきながらギターの
「サイン チョン ジュセヨ」 Duolingoという外国語学習アプリで韓国語の勉強をしているとよく出てくる言葉で「サインをください」という意味。推しにサインをねだる時に使えるフレーズということなのか。ぼくには推しはいないが、今朝もまたリビングでひとりスマホに向かって「サイン チョン ジュセヨ」を連呼する。 サインといえば野球のサインボールを思い出す。実家には原辰徳のレプリカサインボールと、姉の母校が甲子園に出場したときに、姉が憧れの先輩にもらったサインボールが並んで飾ってあ
いま朝の4時です。さっき目が覚めてトイレに行って、またベッドに戻ってきて横になる。二度寝チャレンジしながらスマホでこれを書いてる。リビングにある時計の針がカチカチとうるさい。どうやら時が進んでいるということらしい。でもぼくはだまされたりしない。 先日「時間は存在しない」という本を読んだ。カルロ・ロヴェッリというイタリアの頭のいい人が書いた本だ。最後まで読んだけど、ぼくには難しすぎてほとんど何を言っているのか分からなかった。 ぼくはずっと前から時間なんてものは幻想のようなも
今朝ヒゲを剃るのを忘れた。池上線の高架下を歩きながら、あごの横のえらのところを触ったらじょりっとした。朝起きて、髪を濡らして、ヒゲを剃って、髪を乾かす。たったこれだけがぼくの朝の決まりごとなのに、今朝はヒゲを剃るのを忘れた。じょりじょりしながら池上線のフクロウを見上げつつ会社に向かう。 今日は病院に行く予定だ。先月の健康診断でE判定だったので、再検査を受けるべしとのお手紙が届いていた。「E」というのがどのくらい悪いのか知らないけど、血液中の脂質が多いということらしい。 しか