じょりじょりする

今朝ヒゲを剃るのを忘れた。池上線の高架下を歩きながら、あごの横のえらのところを触ったらじょりっとした。朝起きて、髪を濡らして、ヒゲを剃って、髪を乾かす。たったこれだけがぼくの朝の決まりごとなのに、今朝はヒゲを剃るのを忘れた。じょりじょりしながら池上線のフクロウを見上げつつ会社に向かう。

今日は病院に行く予定だ。先月の健康診断でＥ判定だったので、再検査を受けるべしとのお手紙が届いていた。「Ｅ」というのがどのくらい悪いのか知らないけど、血液中の脂質が多いということらしい。
しかたがないので二次検査の予約をいれた。検査にいくらかかるのかわからなくて、念のため銀行でお金をおろす。

いちおう出社はしたものの、やるべき仕事が見つからなくて、明日は休でもいいんじゃないかなどと考えはじめているのだが、明日のことより今のこの持て余した時間をなんとかしなくては。こっそり抜け出して、近くのベローチェで本でも読めるといいのだが。

バッグの中には、「フラニーとゾーイー」（野崎訳）が入っている。ぼくはゾーイーがバスルームでタバコを吸うシーンにあこがれて、高校生のときに自宅の風呂場で真似をした。あとで母がすごく嫌そうな顔をしていたのを覚えている。なぜかぼくも悲しかった。

病院で待っている間に本を読む。フラニーが倒れて、ゾーイーが浴室で手紙を読むシーンにさしかかったところで検査は終わった。血を一本抜かれた。
検査結果がどうあれ、肉よりも魚を食べて、ちゃんと運動をしろと言われて、1,080円を払って病院を出た。外は雨が降りはじめていた。会社に戻ったら明日の休暇申請をしようと思う。ヒゲをじょりじょりしながら目黒川沿いを傘をさして歩いた。