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マグカップの茶渋

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マグカップについた茶渋のような、雑でリアルな人生。薄暗くて、じめっとしてて、でもなんだか悪くない。
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2020年2月の記事一覧

四年一度の日に、一年に一度の衝動が来たお話。

四年一度の日に、一年に一度の衝動が来たお話。

わたしは、とてもお酒に弱い。
お酒の味は好きなのに、アルコールに極端に弱く、顔が真っ赤になる。それから、とても眠くなる。あと、日によって陽気になったり、泣きっぽくなったり、まあ、典型的なあれこれになる。

はたして、どれくらい弱いのかと言うと、『ほろよい』三分の一も飲めば顔が真っ赤になるレベルである。ちなみに、ほろ酔いを一缶、無理して飲むと、しばらく廊下で死体のように倒れるという前科を持っている。

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カッコつけとアイス

カッコつけとアイス

突然だけれども、わたしはカッコつけである。

いや、見た目の話ではなく。私の服装は全体的に「襟が付いていればまともっぽく見られるだろう」みたいな打算的な考え方と安いという理由で採用されるユニクロで構成されているので、見た目にかかる費用ってほとんどない。

わたしのカッコつけは、振る舞いや、口調にある。

よく見られたい~!と思っている。人間が根源的にもっているそういう感情から果たしてどれほど逸脱し

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友がみな我よりえらくみゆる日よ

友がみな我よりえらくみゆる日よ

石川啄木って、すごいな。

でも、「花を買いきて」、一緒にたしなむ「妻」がいないので、私の憂鬱には啄木もお手上げに違いなかろう。

  〇

さてさて今日は、なにについて書きましょうかと、noteの上をあちこちふらふらしていた。時間のかかりそうな話ばかり思い浮かぶので、全て元気に下書きに行っていただいた。どうにも、ギリギリにならなければ書かないけれど、ギリギリに書けるほど書く能力がない。

先日、

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エンドロールのない人生を生きている

たとえば、映画を見終わったとき。
エンドロールが流れ終わり、徐々にシアター全体が明るくなっていく。スクリーンから現実へと引き戻されて、あちらこちらで観客が帰る準備を始める。
列を作ってシアターの出口を目指す。手には飲み終わったコーラ、それに食べ残したポップコーン。口々に、あちこちで感想を言い合う。一緒に見に来た家族に、友人に、恋人に、「いい映画だった」とか、「最悪な駄作だよ」とか。「あのシーンは必

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スコップを強く握りなおす夜/なまけdays#11-200223

スコップを強く握りなおす夜/なまけdays#11-200223

・人にお会いして少し疲れたので、まとまらない感じでいきます。普段からまとまってない、等の苦情は受け付けておりませんのであしからず。

・研究の最先端を走るような方のお話を伺いました。いい夜でした。

・「本当に好きなら、ひとりでやるだろう」って、そういう風に言う人がいる。もちろん、勝手に一人で進められちゃうような人もいるのだろうなあ、と思う。

・だけれども、私は弱いので、一人ぼっちで砂漠に穴を掘

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片腕がないあの先生に学んだこと

片腕がないあの先生に学んだこと

ふと、中学校の国語で学んだ「ゼブラ」について思い出した。
あらすじは、たしかこんなかんじ。

走るのが好きだった少年が、事故にあう。そのため、もう以前のように走ることはできなくなる。腕を骨折してギプスで止めて、指が少し動く程度……だったきがする。そんな彼が通う学校に、新任で美術の教師が来る。その先生は、左腕がなかった。
少年は、先生の授業を通して自分の失ったものやトラウマと向き合う術を得る。そして

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『家族の物語』ということ/リメンバー・ミーを見た夜に。

『家族の物語』ということ/リメンバー・ミーを見た夜に。

金曜ロードショーでリメンバー・ミーが放送された。

とくに楽しみにしていたわけでもないが、夕食後に母と一緒に見始めたら、これが、驚くほどに面白い。すごくいい映画だ。見終わるころには、もっと早く見なかった自分と、『いいぞ』って教えてくれなかった周囲に腹を立てながら涙ぐんでいた。
嘘、マイフレンズたちは『いいぞ』って呟いていたような気がするので、やっぱり全面的に私が悪いです。

  〇

音楽がとても

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庚子如月はつかの日に寄せて。

庚子如月はつかの日に寄せて。

そういえば、今日は二十日(はつか)だな、とふと思った。
こんばんわ、はつかと申します。二十日に更新をするはつかです。

「はつか」というユーザーネームには、正直大した意味合いはない。二十日生まれでもなければ、二十日だいこんに深い思い入れがあるわけでもない。ただ、なんとなく、語感が悪くないな。みたいな理由でつけた。

なので、今日が二月二十日でも、2と0がデジタル時計に並ぼうとも、あまりなにも思わな

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短くて力強い文章に、いつもあこがれている。 (追記あり)

短くて力強い文章に、いつもあこがれている。 (追記あり)

 文章を書こうとすると、どうしても長くなってしまう悪癖がある。悪癖、と言ったが、それが悪癖かどうかはわからない。ただ、助長だなと感じる時がある。

 小説を書く時、筆の半分は情景描写へと傾いていく。光の様子、時間の経過、季節の移りかわり。登場人物が出てきて、なにか物事が動く前に執拗に場面の説明をしているのではないかと、読み返すたびに感じる。
 それは、自分の脳みその中で幾度となく再生している映像を

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昼のセント牛乳。

昼のセント牛乳。

湯上りの身体に、冷たい牛乳瓶が心地いい。
一口のむと、乾いた身体にしみわたっていくのを感じた。

ああ、今日は良い日だな。

そう思える自分が、すこしだけ誇らしかった。

  〇

今日の午前中、古い知人と待ち合わせをした。駅前のドトールで、コーヒーを飲みながら少し近況報告をして、善意のアドバイスを全身に浴びた。

向上心を持つことも、将来を考えることも、大事なことはわかっている。それから逃げるつ

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オチのない話をする勇気

オチのない話をする勇気

自分の文章のパターンって、誰にでもある。

それで、私の文章のパターンは、たいてい最後に「でも」ってつく。でも、たまにはいいじゃん。でも、今は。でも、大人になったので。

別に全部が全部嘘なわけってわけじゃないんだけれども、これって結局、取り繕いなんだよな。

  〇

noteを利用しだして、一月と半分くらい。一月とはんぶんって言うと短いな。なんだか、ずっと続けていたような気がする。一日の最後に

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あの言葉を拾いに。

あの言葉を拾いに。

土曜日の午前授業が終わった教室。早便のスクールバスはもう出発していて、教室内はがらんと静かだ。高い位置にある太陽が、人のいない教室をいつもより明るく照らしている気がした。まだ四月のはじめ、定期考査は先。そんな時期に高校に残って勉強をする同級生はおらず、いつもは居心地がいいとは言えないここも、人がいなければ気分がいい。

窓際に並べられた背の低いロッカーの上に、ごろんと横になる。春先の心地いい風がカ

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布団の中の自由。

布団の中の自由。

朝起きて、やっぱり、と思った。
いつもなら、起きてお茶を電子レンジで温める。温めている間にお手洗いを済ませて、温かいお茶を飲んで身体を起こす。それから、お湯を沸かして珈琲を淹れたり、パンを焼いたりする。
だけれども今日は、やっぱり、身体がひとつも動かなかった。

昨日の疲れが、完全に体に残っている。お手洗いにいくことすら、だるい。身体は重いのに二度寝がなかなかできなくて、外出する母が声をかけてくる

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安眠のための失敗談。

安眠のための失敗談。

不運と失敗が重なって、パンッと久方ぶりに風船が弾けた。思えば、一月頭くらいからひと月、どちらかというと情緒は安定していた。

というのも、母の体調がある程度安定する傾向を見せ始めたからである。

私の情緒は、基本的に母からの言葉に左右される。これは、本当に望ましくないことなのだけれど。いつまで経っても、思春期に責め立てられた記憶が抜けないのだ。

母が少しの金切り声をあげて、私を責める姿勢を見せる

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