森に広がるこの白い靄は、今の僕の頭の中のようだ。馴染んだ温もりと愛していた誰かが居たことは確かなのに、大事な部分だけ綺麗に切り抜かれていて、手を伸ばせば痛みが走る。光を当てても先は見えない闇。この靄が晴れる頃には、いつかのきみと、失くした左の聴力の理由にも辿り着けるのだろうか。
物見櫓の麓、川沿いにこじんまりとしたログハウスを建てた。短時間で酷使してしまったドローンを労りながら、固形の携帯食糧を齧る。天窓から見える空は薄暗い。明けきらない夜明けが暫く続いたかと思えば、また日が傾いてきた。即席のポタージュを胃に落として熱を抱える。今夜もまた、冷えそうだな。
朝焼けと同時に僕は必要な廃材を集めてクラフトボックスに貯めた。ボタンでドローンを操作して、作り始めたのは物見櫓。巨大樹に間借りして細身で背高い櫓を建て、吹き抜けの屋根に特大のランプ。下から照らされた葉に光が反射して煌めく。これは森の灯台。迷える誰かの道標で在りたい、祈りそのもの。
朝を待っていた。恐らく近辺で一番大きな樹にランタンを担ぎながら登って、靄が広がる一帯とその境界線を見つめていた。朝と夜の狭間。吐く息が白い。ポケットに入れた手紙。置き去りのやさしさは誰に預けたのか。飛び散ったのは硝子だけではなかった気がして、堪らず膝を抱き締めた。日は、昇らない。
区民番号、no.10。ルーン文字が刻まれた守護石のペンダント。ルーンはnied。ニイド、ニード、なるほどね。今の僕には、僕が足りない。キャップとフードを目深に被って歩く、雨だけの街。与えられたものを握り締めて見上げる空。雨音が歓迎のそれに聴こえるのは、きっと気のせいではない、と。
さっきまでいた右も左も雨音に包まれた街とは打って変わって、靄が覆うこの街はとても静かだ。川の近くに立てたテント。木々に囲まれ、風はない。せせらぎが微かに聞こえるだけ。今の僕と同じ、なにもない。寒さを誤魔化すように頭から毛布を被って、でも何故だか不思議と、ちっとも寂しくはないんだ。
記憶の欠片が閃光のように思考を遮る。音もなく、時折稲妻に似た痛みを伴うそれに眉を顰め身を寄せたのは、ずっと雨が降る街。昨日まであった温もりの所在を思い出せないまま与えられた僕の街は、靄に覆われて不気味な、それでいて厳かな静けさに包まれた寒い黒の区画。僕は此処を「冬靄の街」とした。
今日はぷち出張の日だからこれ読むよ!*。٩(ˊᗜˋ*)و*。
【またまたお知らせ】シェアードワールド☆ https://note.mu/snowdool/n/n23b99f6b454d 参加者が6名になりました!!(๑°Д°).∴ウレシッ 参加者さまのOKが出たら ちょっとちゃんとした紹介文書きますね! (*ノ´∀`*)ノ
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 月の皮剥いてつるりと舌の上 つんとくるこの寂しい味の
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 皿のふちちゃんと拭き取るまなざし手つき 眺めてたくてそれ全部おいしい
踏み込むな誰にでもそんな傷はある 輝くまで待て傷は光るもの
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 もしも君、砂利のあのザリッという音が なかったらこの世はモノクロのまま
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 レイチェルは牧師を殺して服を着た 10歳だった、もう祈らない…
死んだ猫には“ヨミチ“という名前をつけることにしてる 寂しさが嘘にならないように この世で一番詩人に近いのは床屋さんだと 教えてくれたのはヨミチだった 「空白を埋めるのはいつだって空を映したような青い血か、頬をつたう赤い涙だよ」 父の青 母の赤 僕らも 青と赤から 生まれた
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 『されば鬼にも心のあるといふ』 琵琶法師 低く静かに 爪弾けば 子を食らふ鬼 涙を流し ※おそらくは 10年以上は 前のもの さしあたりnote 短歌部100件したい
あの、文章で表現してる方々、タグの#文縁の友 気軽につけてねww kusabueさんクラスの人が僕に「つけていいですか?」って遠慮してたなんて……w 僕の許可はいらないのでw 皆さんが「文章で表現してる、文芸に関係ある」って思ったものならどんどんつけてゆる~く繋がって下さいまし♪
ぼんのくぼ 缶で冷やして 夏の息
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 枯れるまでちゃんと叫べたかほんたうに? 老いや死も歌えたか? 残せたのか、種を?
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 しなびれて光り失くしたヒマワリの 八万本のため息を聞く
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 テーブルで笑ってたはずの人形が 後ろから「遊んでよ」笑ってない
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 ぬるくなるどんどんどんどんぬるくなる 夏のじゃぶじゃぶボクはじゃぐち
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 『不倫の代償』 よく冷えたビール片手に音頭とる 上司の家庭に無言電話す
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 〝霊能者〟それがお前の商売か うしろのワシに気づけもせずに
そもそも君のターゲットは誰だね?不特定多数の老若男女?であれば、“それ用”のを書き下ろすべきだった。今の君はニッチな隙間を突くようなものばかり書いておいてウケが悪いと嘆いているようなものだ。100人の見知らぬ誰かのイイネより5人のディープなイイネを最初から狙っていたと思えばいい。
うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 アルパカの泣いてるようなつぶらさで 世界のことを潤ませていこう
してみると歴史も長い長い未完の物語というわけですな 我々はそれを最後まで拝むことができない宿命と? さあて詩人なればその限りではありますまい、彼らは見えない翼で未来を自由に観て来れますからな ふうむ詩人の特権とは左様なもので 如何にも詩群の墓標参りもまた斯くの如し ほう
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 ゆっくりと踏みしめながら味わうの 冷たく朽ちる肌と肌の群れの
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 『世界の人気モノたち』 箱あけて左右確認あるじ留守 やったと飛び出すクマ・ネコ・ネズミ!
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 特別なクラスにいた目のはなれた娘(こ) 馬鹿にする人にまじらないで