若園義彦

1947年北海道釧路市生まれ|友人知人に宛てて送っている書評文などをアーカイブしていま…

若園義彦

1947年北海道釧路市生まれ|友人知人に宛てて送っている書評文などをアーカイブしています|元富士見市公民館長、社会教育課長|元鶴ヶ島市立図書館長|1965年北海道立湖陵高校卒業|1969年早稲田大学教育学部卒業|著書に『図書館長の本棚』(郵研社)

最近の記事

「200字の書評」(366) 2024.10.25

こんにちは。 秋です、満月の夜スーパームーンが地平すれすれに姿を表すと、その巨大さを実感します。時折かすめる雲に隠されながらも、その切れ間に見え隠れする金色の輝きに想像が膨らみます。月の科学探査は各国の思惑をのせて進行中ですが、軍事や経済志向であってはなりません。いつまでも夢を膨らませる存在であってほしいものです。 金木犀の香りが漂っています。これまた秋の風情です。 さて、今回の書評は生命をめぐる科学とロマンを追ってみました。 中村桂子「人類はどこで間違えたのか」中公

    • 「200字の書評」(365) 2024.9.25

      残暑は相変わらずなれど、そこはかとなく秋の佇まいを感じる今日この頃です。 夜、窓からひそやかに聞こえるのは虫の音。そして中秋の名月。寝苦しい夜を癒してくれる、自然の恵みです。お元気でしょうか?暑さ寒さも何とやら、夏の疲れは出ていませんか? さて、今回の書評は書店の危機を探ります。 小島俊一「2028年 街から書店が消える日」プレジデント社 2024年 衝撃的なタイトルである。誰もが薄々気が付いていたのではないか。いつかはこんな日が来ると。フッと目についた書店に入ると

      • 「200字の書評」(364) 2024.8.15

        九夏三伏、汗が止まりません。お変わりありませんか。 8月15日は終戦記念日、正しくはポツダム宣言を受諾しての無条件降伏の日です。敗戦を終戦、占領軍を進駐軍と言い換えてみても連合国軍(ほぼ米軍)占領下におかれた事実は隠せません。この日以降も樺太では侵攻してきたソ連軍との戦闘が続いていました。樺太からの引き上げ船3隻がソ連潜水艦の攻撃を受け、約1700人が犠牲になったのは8月22日でした。敗戦の日を日本国民はどのような気持ちで受け止めたのでしょうか。私たちの父母親族はまさに戦

        • 「200字の書評」(363) 2024.7.25

          こんにちは。 暑中お見舞い申し上げます。 異常気象とそれに輪をかけた異常政治に翻弄されているうちに、2024年は半分が過ぎ去っています。元日の能登半島地震は、禍々しい年になるぞとの天の啓示だったのでしょうか。平和と生活の安寧を心から望みます。 さて、今回の書評は地球上の命について考えてみます。 千葉聡「ダーウィンの呪い」講談社現代新書 2024年 高校の生物でダーウィンの進化論は、ビーグル号での航海とともに真理であると印象付けられた。彼の真意とは離れて、人間や社会の

        「200字の書評」(366) 2024.10.25

          「200字の書評」(362) 2024.6.25

          こんにちは、お元気ですか。 急に夏が押し寄せてきた、そのように感じさせる気温と湿度です。2週間遅れの梅雨入り。季節感が曖昧になっている昨今ですが、春と秋がはっきりしないのが不気味です。季節には季節の感覚と風情があったものです。 さて、今回の書評は私たちの大好きな書店についてです。 三宅玲子「本屋のない人生なんて」光文社 2024年 出版不況という逆風の中であえて書店経営に挑む11人を、その志とともに綴っていく。本に拘り自分のテーマに沿った選書をする、商品の幅を広げる

          「200字の書評」(362) 2024.6.25

          「200字の書評」(361) 2024.5.25

          こんにちは。 爽やかな皐月は飄然と走り去ろうとしています。満々と水の張られた田んぼは、いつしか青い穂先が出そろい、風に揺れ始めています。短い春は桜の鮮烈な印象を残して初夏の装いになってしまいました。季節は平たんな道を提供してはくれません。初夏の翌日は晩春が戻り、時には冬物を引っ張り出させるような悪戯さえしてくれます。寒暖差の振れ幅は大きく、老残の身には堪える日々です。国会で民法改正が議決され、共同親権が現実化します。反対したのは共産党とれいわ新選組だけでした。共同親権には

          「200字の書評」(361) 2024.5.25

          「200字の書評」(360) 2024.4.20

          こんにちは。 初夏のような日差しが差し込んでいます。急な気温上昇に体の方はついて行っていますか?桜はいかにも儚くて、葉桜になっています。この短さ故の花見の賑やかさなのでしょうか。散りゆく桜の次には、初夏の花ハナミズキが存在を主張しています。散歩の道すがら民家の庭先で足が止まりました。牡丹の花です。嫣然と身を寄せかけてくるような色香です。ライトアップされた夜桜の凄艶さも迫るものがありますが、昼間の牡丹も魅力においてはひけを取りません。その先のお宅では、プランターいっぱいの鈴

          「200字の書評」(360) 2024.4.20

          「200字の書評」(359) 2024.3.25

          こんにちは。 井上陽水は「だけど問題は今日の雨 傘がない」と歌ったが、昨夜来の氷雨が降り込めています。春というのは何と気まぐれなのでしょう。行ったり来たりの勘違い。いや「一歩前進二歩後退」春物に着替えたり、慌ててダウンを着てみたり、定まらぬ空模様を見上げて嘆いていては被災地の方々や戦火に逃げ惑う人々に申し訳ない。雪混じりの寒風に晒されている地震の避難者には生活再建の展望はあるのか。イスラエルの容赦なき野蛮な攻撃に、生命の危機生きのびるすべさえ奪われているパレスチナの難民は

          「200字の書評」(359) 2024.3.25

          「200字の書評」(358) 2024.2.25

          こんにちは。 晩春の陽気は異常を通り越して、もはや異変です。天気予報にハラハラドキドキ、朝空を眺めては服装選択に悩み、洗濯の可否もまた思案のしどころ。灼熱の中東では雹が降り道路は水路に、一方では熱波に襲われ旱魃も。地球はどこへ向うのか?と問いたくなります。その非難は天から人間に返ってきます。 さて、今回の書評は公共図書館を俯瞰すると何が見えるか、万華鏡的な見方に感動。 中村文孝/小田光雄「私たちが図書館について知っている二、三の事柄」論創社 2022年 正統図書館史

          「200字の書評」(358) 2024.2.25

          「200字の書評」(357) 2024.2.10

          寒風の中に咲く紅白の梅を見る時、春の足音がは近づいているような気がします。 でも、能登半島地震の被災者の心身には寒気のみが沁みているのかもしれません。元旦夕刻、災害からすでにひと月以上、支援の手が行き届いて生活再建の道が見えた人はどのくらいいるのでしょう。心に冷えが忍び込んできます。 前回の番号表示を間違えてしまいました。正しくは(356)でした。その埋め合わせに10日号を送ります。 さて、今回の書評は地球の悠久の歩みを探っています。 尾上哲治「大量絶滅はなぜ起きる

          「200字の書評」(357) 2024.2.10

          「200字の書評」(356) 2024.1.25

          こんにちは。 庭の蝋梅が満開です。蝋細工の様なはかなげな花からほのかに香りが漂っています。元旦の朝に心細げに数輪開き始めているのを発見し、新年の訪れを寿ごうと思いました。それが一転したのは夕方でした。携帯がけたたましく警報音を発し、揺れ始めます。テレビでは能登半島を震源とした強烈な地震だと報じています。まだ、こんな深刻な被害になろうとは予測できませんでした。未だに被害の全容はつかめず、途方に暮れる住民の姿が胸をうちます。すでに4週間が経過しました。被災者への救援、生活イン

          「200字の書評」(356) 2024.1.25

          「200字の書評」(355) 2023.12.25

          いよいよ2023年の終幕が迫ってきました。今年はどんな年だったでしょう。それぞれがそれぞれの思いを重ねた一年だったのだろうと想像します。なるべく良い思い出だけを残そうと思うのですが、痛恨の思いというものは消せず、むしろ胸に深く刻まれていくような気がします。 年末という言葉が身の周りを飛びかっています。2023年を如何にとらえるか、それは歴史に何が刻まれるのかという問いかけと同じなのでしょう。目の前の些事に追われ、近視眼的に結果だけを求めてしまう習性は年齢を重ねてもなくなら

          「200字の書評」(355) 2023.12.25

          「200字の書評」(354) 2023.12.10

          こんにちは。 いよいよ師走、飛び去る時間を引き戻すことはできません。ただ茫然と見送るのみ。無為徒食の日々を如何にしたらよいのでしょう。反省はどうしても暗くなりがち、己自身の充実感の問題であると同時に、世相のあまりの不条理さへの怒りでもあるのでしょう。 などとボヤいてばかりいられません。透き通った青空、無限の虚空に輝く星空を仰いで、もう一度船を出しましょう。 さて、今回の書評は前回の下巻です。トッドという碩学・鬼才(あるいは予言者)に引き込まれ、泥濘の道を歩んでしまいま

          「200字の書評」(354) 2023.12.10

          「200字の書評」(353) 2023.11.25

          冬の風情です。お変わりありませんか。 朝晩の冷え込みと日中の陽射しに随分差があって、服装に気を使ってしまいます。20数℃の日の次には、冬装備が必要な空模様になっています。偏西風の蛇行は何故起きるのでしょう。気まぐれ寒気団にご注意です。 今回の書評はかなり難航しました。トッドです、下巻は鋭意挑戦中。果たしてどこまで迫れるか。 エマニュエル・トッド「我々はどこから来て、今どこにいるのか?」上 文藝春秋 2023年 歴史人口学とは斯くも細密に歴史を照らし出すのだろうか。そ

          「200字の書評」(353) 2023.11.25

          「200字の書評」(352) 2023.10.25

          こんにちは。 理不尽、怒り、悲しみ、情けなさ、そんな感情がこみ上げてくる。連日報じられるガザの惨状です。何故罪もなく安心して暮らせるはずの人びとが、爆撃され命を奪われねばならないのでしょうか。ここに生まれたことが罪なのでしょうか。誰も本気で停めようとしない殺戮、ウクライナ戦争も同様です。世界は物理的にも道徳的にも破滅への道を足早に進んでいるようです。 ハマスの行動は正当化できません。しかし、ガザへの攻撃はパレスチナ人虐殺としか言いようがありません。イギリスの2枚舌政策に

          「200字の書評」(352) 2023.10.25

          「200字の書評」(351) 2023.9.25

          こんにちは。 ここ数日待望の雨が降り、少ししのぎやすくなりました。今朝はかなり涼しく散歩では長袖を着ました。暑さは去るかどうかまだ疑問、コロナは猖獗を極め、インフルエンザも蔓延とか。不安が募る暑い秋です。コロナワクチンの追加接種の通知が届きました。サアーどうする。 さて、今回の書評は社会での自立と自律を考えてみました。   斎藤幸平+松本卓也 編「コモンの『自治』論」集英社 2023年 コモンとは自治を再認識し、広く力を集めて実現する営みである。資本主義が地球上を覆

          「200字の書評」(351) 2023.9.25