原田龍一

作家・詩人。創作大賞2024にオールカテゴリ部門に詩で参加。 お仕事の依頼はこちら ryuichiharada813@gmail.com standfmやってます。https://stand.fm/channels/6082d242eeca46c0abb0221d

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    私が書いた物語で、朗読配信にお使いいただける作品を集めています。 注意事項を守っていただければ、私への了承は必要ありません。

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時に人はモノに呼ばれる

恋の悩みや迷いを抱えたり、プレゼントに困った若い男女たちが、ふと見かけた小さなアンティークショップ。 気持ちのフォトスタンド、思い出を切るペーパーナイフ、天使、天秤などにまつわる物語。 これらの物に、時に考えさせられ、時にそっと背中を押され、それぞれが再び前を向いて歩いていく。 大人になったあなたにも読んでほしい連作掌編・短編集。 ★ペーパーバック版 https://amzn.to/3LKeaAD ★電子書籍版 https://amzn.to/3r4APQc ★A

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       注意:この作品は一部暴力的な描写があります。     苦手な方はご遠慮下さい。   1  月が出ていない満天の星空、黒い世界に波の音。  男は砂浜に立ち、故郷の星がある方角を見ている。  男は大きな罪を犯し、二十年前にこの星に送られてきた。模範囚として三年前に条件付きで出所。条件は故郷の星に死後も戻らない、戻れないこと。AIの監視下の元で生活すること。監視下と言っても二四時間ずっと見られているわけではない。外出時と通信がすべて監視される。つまり住居の中にいて、なんらかの通

      • ※この物語はホラー要素・怪談要素が含まれます。苦手な方はご遠慮ください。  八月も終わりだと言うのに最高気温は30度超えの日々が続いていた。私とTは、お互い仕事が休みの日に、スーパーで何種類か酒を買い、私の部屋に入った。エアコンをつけっぱなしにしていたので、心地よい。とはいえ喉が渇いていたので、二人で袋からとりあえずビールを出して、缶のまま、おざなりに乾杯をして飲んだ。 「知ってるか、日本では年間に8万5千件の行方不明届が出されているって」  Tはそう言って残りのビールを一

        • 彼方の図書室

           残暑が厳しい秋の薄く霞んだ青空に、緋色の孔雀が飛んでいる。  私は鉄筋コンクリート造の巨大な建物の入口に向かう。自動ドアが開き、外とは違って肌寒さを感じる、薄暗い屋内に入った。  窓はない。  左右にドアが並ぶ廊下は、歩くのに困らない程度の間隔に設置されている光に照らされている。  私は目的の場所も経路も知っている。  正面はむき出しのコンクリートの壁。廊下は左右に伸びている。右に進む。  長く薄暗い廊下。左右には等間隔にドア。ドアの中からは何も聞こえない。廊下は音がしない

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          24本

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          餞(はなむけ)

          ※この物語はホラー要素・怪談要素が含まれます。苦手な方はご遠慮ください。  久しぶりに会った友人と居酒屋で飲んでいた。近況報告が一段落し、そろそろ次の店に行こうという時だった。 「なあ、餞婆さんって知ってるか」  友人が真剣な顔で言ってきた。 「おい、この歳になってそういう都市伝説はないだろ」  私が笑い半分で言うと、友人は真剣な表情のまま続けた。 「知らないんだな」  急に様子が変わったので、私は少し気おされた。 「あ、ああ。初耳だな」 「ある日突然、灰青の和服をしっかり

          餞(はなむけ)

          翻案 蛇性の淫

          はじめに  この物語は上田秋成『雨月物語』収録「蛇性の淫」を現代に置き換えて書いてみました。元が淫靡な作品なので、その要素はありますが、もちろんあからさまな表現はしていないつもりです。  最初に以上をお断りしておきます。  著者 翻案 蛇性の淫    1  あの夏の夕方。久渡寺の参拝の帰りなのか、麓の店の帰りなのか。ほとんどは車かバスに乗って行ってしまうのに、その人は晴れていて機嫌が良かったのか、微笑みながら空や周囲の山や畑を見ながら歩いていました。  彼を一目見て、

          翻案 蛇性の淫

          陽炎

          ※この物語にはホラー要素・怪談要素が含まれます。苦手な方はご遠慮ください。  山の麓までの一本道は、辿り着くまで登り坂が続く。  今日の予想最高気温は35度。道路には陽炎がゆらゆらと立ち上り、そこを陽炎を揺らせた車が走っている。  私は頭から全身に汗をかきながら自転車をこいでいた。気を抜くとそれどころか、歩くのさえ嫌になりそうだった。  ここまで来て思い出したのだが、ここからあとは山の麓まで店も自販機もない。最後に見た自販機まで戻るにも距離がある。このまま山に向かおう。  

          ※この物語はホラー要素・怪談要素が含まれます。苦手な方はご遠慮ください。  世の中には自分に似た人が三人いるという。  どうやら僕に似た人が同じ市内にいるらしいと知ったのは、中学校一年生のときだった。  あの頃はファミコンが出たばかりで、テレビに繋いで遊んでいたのだが、画面も音もゲームセンターのゲームの方が格段に良かったので、小遣いを貯めてはゲームセンターに行ったりしていた。  その日、僕は一人で百貨店の最上階にあるゲームコーナーで1ゲーム50円のゲームで遊んでいた。新台は

          門の向こう

             1    こんな夢を見た。  私はリュックサックを背負って、たまに行く神社にいた。これまで私が行った時は参拝に訪れている人を一度も見たことがない稲荷神社だ。それなのに立ち並ぶ鳥居から境内までは、いつ行っても綺麗に保たれている。珍珠の木々が境内を囲み、夏は涼しく感じる。参拝して、隣りにある猿田彦神を祀る拝殿に行き、そこでも参拝した。  あたりを見回し、誰も見ていないことを確認して、私は拝殿の階段を上がって、猿田彦神を祀る拝殿の中に入った。鯉が滝を登る絵が天井から下げられて

          門の向こう

          ねがいだけ

          まえがき-本編だけ読みたい方は飛ばして下さい  私は50歳をちょっと過ぎたおっさんだ。  先日ふと、なんの脈絡も前兆もなくこの小説のことを思い出した(仕事中に)。それで帰宅してからパソコンの中を漁ったり検索したけれど見つからず、もしやと思って押入れの中にある段ボール箱を開けて、数十年間読み返すどころか、開いてもいないノートや原稿用紙をぺらぺらとめくった。  見つかった。しかもけっこう早く。  残っているノートと原稿用紙の山を読み返すような、自分で自分を辱めることはせずに、こ

          ねがいだけ

          一年 ~詩六篇~

           1 残照 桜散って咲く花水木 紋白蝶舞う菜の花畑 黄色い花に天道虫 そよぐ風 微笑む君 君が作った弁当 暖かな陽の光 時は一瞬で 時は永遠だった いつしか夕暮れ 誰もいなくなった菜の花畑 紋白蝶も姿を消し 朱い西に紺の東 時は一瞬で 時は永遠だった そよぐ風 微笑む君 陽は沈み 残照が残っていた  2 夏祭り 綿飴射的金魚掬い 紺の浴衣に咲く花火 結い上げた髪 白い首 長い睫毛 朱い唇 夏祭りの道を離れ 満月輝く公園へ 虫の音 風の音 君の声 花火が夜空を彩っ

          一年 ~詩六篇~

          四月の雨

           カーテンを開けるとくもりガラスの向こうは灰色だった。  二重サッシの内側を開けると、窓ガラスいっぱいについた雨粒の向こうに一面の鈍色が広がっていた。僕は今日のために久しぶりに買ったマールボロに火をつけ、深く煙を吸って、ため息と共に一気に吐き出した。  桜は散ってしまっただろうか。それともまだぎりぎり満開前で持ちこたえているのだろうか。仕事の休日と満開の予定日が重なっていたので、久しぶりに弘前公園に見に行こうと決めていた。  今年は桜月(さつき)の七回忌。桜月が癌で、この世界

          自作詩・自作掌編『終冬』

             自作詩『終冬』  桜鮮やかな春空  執念深い雪の舞  留まったのか飛び立ち損ねたのか  池に空を眺める白鳥が一羽  遠い仲間を思うのか  ここにいる自分への後悔か  白鳥は舞い降りる雪を眺めている  春風が吹き雪を散らす  白鳥は首を縦に振り鳴き出す  大きく翼を広げ水面を走り  春風に向かって飛び立つ  ただ一羽鳴く声は  ここにいる そこへ行く  白鳥の声に聞こえたその声は  私の声だった  雪がやんだ青空  鮮やかに桜咲く  白鳥はすでに見えず  ただ その

          自作詩・自作掌編『終冬』

          線香花火

            一  窓を開けた。  外には積もった雪と雪かきで積み上げた雪が、一階の天井ほどまであった。  空は晴れ渡り、風もない。  毎年一番厳しい二月に、このような天気は珍しい。  他にやることはあるにはあったのだが、急いでやることでもなく、年末は仕事が忙しくて大掃除をしていなかったので、せめて旧暦の正月までにはやっておこうと朝早くからあちこちを拭いたり掃いたりしていた。  長年勤めた仕事を一月末で辞め、役所とハローワークへの手続きも終わり、とりあえずは次の仕事を探すだけ。もちろ

          ¥130〜
          割引あり

          線香花火

          ¥130〜

          深海より

           かつて陸地だった深海に聳え立つ数千メートルの山の頂。そこにある高さ三十メートルの、巨人たちが建てた日本の神社のような石造りの神殿。沈黙。光の届かぬ世界では見ることはできず、時おり巨大な何かが動いている気配がする。  目を閉じて視ながら数十メートルの鳥居をくぐり拝殿に立ち、この世界、いや、この宇宙、いや、すべての宇宙の、すべての次元の宇宙の永劫の平和と安寧と調和を祈る。沈黙。再び巨大な何かがやってきては頭上を通り過ぎる。しかし、沈黙。  その時、拝殿の奥が朦朧と光り人類以前の

          もういちど一緒に。それだけ。

           霞がかつた青空に、斑のような雲。  先週降り積もった雪はすつかり溶け、春のような陽気が三日続いています。林檎も木蓮もすつかり葉を落とし、木蓮の枝には白く短い毛に覆われた冬芽が出ていました。春に綺麗に咲いていた紫陽花は花も葉も枝も全てが焦茶色に染まつています。  黒のロングコートのポケットに入れてきた手袋は必要なさそうです。  車も自転車も歩行者も少く、時折見かけるだけ。自転車に乗ろうかと思いましたが、なんとなく歩きたい気分で買い物も少ないこともあり、散歩がてら外に出ました。

          もういちど一緒に。それだけ。