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門の向こう

   1
 
 こんな夢を見た。
 私はリュックサックを背負って、たまに行く神社にいた。これまで私が行った時は参拝に訪れている人を一度も見たことがない稲荷神社だ。それなのに立ち並ぶ鳥居から境内までは、いつ行っても綺麗に保たれている。珍珠の木々が境内を囲み、夏は涼しく感じる。参拝して、隣りにある猿田彦神を祀る拝殿に行き、そこでも参拝した。
 あたりを見回し、誰も見ていないことを確認して、私は拝殿の階段を上がって、猿田彦神を祀る拝殿の中に入った。鯉が滝を登る絵が天井から下げられて左右に飾られていて、右の鯉の絵の隣には大麻(おおぬさ)の絵が飾られている。靴を脱いでさらに中に入り、薄暗い部屋の中で、リュックサックから手のひらに乗るくらいの薄い石版を取り出した。大事に扱わなければ割れそうなほど薄いが、硬い石でできているらしくよほどでなければ割れそうもない。表面には象形文字のような、楔形文字のようなものが彫られているが、調べてみたら神代文字の一種だった。
それぞれの文字を調べて見たが、意味のわからない言葉だった。しかし、私にはなぜか、何を言えばいいのかわかっていた。両手に石を乗せ、目をつむり一言。
「門よ、開け」
 石が白光を放ち、空間に白く光る球が現れ、球の中央が徐々に開いていく。やがて白く光る門の形になったが、門の向こうは今いる部屋の向こうと変わらない。ふすまと柱が見えるだけだ。
「誰だ、中に入ったのは」
 拝殿の入口から初老の男の声がした。
 私は急いで門を潜った。
 そこで目が覚めた。
 
 夢を見た数日後、私は夢で見た神社とは違う神社に、自転車で参拝に行った。
 暑い夏の日で、境内の木々からは無数の油蝉の声が聞こえていた。今の時期は観光客も訪れる神社なのだが、誰もいなかった。大きな鳥居で一礼して中に入ると、直角に右に
曲がる所に、今度は大きな石の鳥居がある。そこでも一礼して顔を上げると、一人の女性が参拝を終えたところだった。どうやら人がいないと思いこんでいたせいか、私にはその女性が見えていなかったらしい。
 緑色のロングスカートに白の長袖のブラウス。暑くないのだろうか。
 立ち止まって見ていて、不審に思われてはいけないと思い、境内に入った。耳の下までの髪は艷やかで毛先は軽く内側に巻いている。整った顔立ちで、まったく汗をかいていなかった。
 すれ違う時に私が軽く会釈をすると、女性がこういったように聞こえた。
「おつかれさまです。お待ちしておりました」
 立ち止まって女性の言葉を反芻し、どういうことですかと聞こうと思って振り返ると、女性はすでに鳥居でこちらを向いて会釈していた。私と目が会うと微笑み、そのまま歩きだして木の大鳥居に向かった。やはりどういうことかと聞こうと、すぐに振り返ったら、女性は姿を消していた。
 幽霊ならもっと嫌な気持ちがするだろうと思いながらも、それでは女性は何だったのかと考えても答えは出ない。しかたがないので、私は拝殿で鈴を鳴らし、大きな賽銭箱に百円を入れ。風がないのに紙垂が一つだけ揺れた。参拝を終え、境内を見渡す。
 静かだ。
 油蝉の声だけが聞こえる。
 石の鳥居をくぐり、会釈して大鳥居に向かっていると、どこからともなくアゲハ蝶がやってきて、目の前を舞い飛び、さらに私の周りを一周りすると、拝殿の奥の本殿へ飛んでいった。
 人は誰もいない。
 とにかく参拝は終わったので、帰ろうと思って神社を出ると、私の自転車の隣に三毛猫がいた。後脚を曲げ、前脚を立てて私を見ている。口になにかくわえていた。動物とは目を合わせないほうがいいと言うが、私は子供の頃から犬以外の動物とはよく目を合わせて遊んでいた。犬だけは私を見るなり、いや、私の気配を感じ取った瞬間から、威嚇するように吠えたり唸ったりする。鳥はほとんどは眼の前や隣を飛んだり、私が通り過ぎるときだけ鳴いたりすることが多いが、これまでの人生で数度、肩や頭に止まったり、自転車に乗っていて信号待ちしている時にハンドルやカゴに止まったことがある。その時も鳥は私をまっすぐ見ていた。
 三毛猫は私が近づくと、どうぞと言わんばかりに加えていたものを、私に差し出すように地面に置いた。そして、私に向かってにゃあと一声鳴くと、役目は終わったとばかりに暑そうにゆっくりと歩いて境内に向かっていった。またいなくなっているのではと思って、振り返ったが、猫はいて、振り返りもせずに歩いていた。
 猫からもらったものを手に取ると、それは夢で見た石版だった。
 家に帰ってから、パソコンの電源を入れて、神代文字を検索した。夢と同じものなら、この神代文字の読み方もわかるはずだ。神代文字を調べ、古語も参考にしたが、わかったのは「たがいおなじきくに」。そのまま読むと違う同じ国。パラレルワールドのことなのだろうか。
 そんな馬鹿なと否定しようとしたが、夢でもあの光の門の向こうは同じ拝殿の部屋の景色のままだったことを思い出した。
 まずは夢を見た。そして今日だ。
 神社で出会い、消えた女性。アゲハ蝶。観光地でもある神社なのに、参拝中に誰もいなかったこと。参拝しよとした時に風がないのに紙垂が揺れたこと。そして猫。この石版。
 さらに夢で見たのは、お稲荷さんではなく、相(あい)殿(どの)神(しん)とはいえ、猿田彦神を祀っている神社だ。猿田彦神は導きの神。
 すべて吉兆と言われることが続いたし、導き、道開きの神様だ。
 そこで私は迷った。
 夢はあくまでも夢だ。この石版を持っていったところで、現実に夢で見たような、映画やアニメのようなことが起きるのか。
 いや、今日起きたことはすでに現実離れしているじゃないか。
 じっさい今、私の手には石版がある。
 
   2
 
 このまま生きていても、それはそれでいいと思っていた。
 しかし状況が変わった。
 勤め先の吸収合併されることになり、効率化の下、事業所の縮小と人員削減が行われた。私が務めていた事務所は閉鎖。再就職先の紹介はなかった。わずかな退職金をもらい、はれて私は無職になった。
 雇用保険はもちろんすぐにもらえたが、五〇歳を過ぎてからの再就職は厳しい。社員として雇ってもらえるところはなく、そうこうしているうちに雇用保険の受給期間も過ぎていく。
 内心、焦っていた。
 同時にいざとなればどこでもいいとも思っていた。社員として働くより、パートで働いて生活費さえ稼げれば生きていくことはできる。そうして生活を繋ぎながら次を探したっていいじゃないか。
 わずかな退職金にはなるべく手を付けたくなかった。人生何が起きるかわからないとはいえ、いや、だからこそ手を付けずに残しておきたい。
 コップに氷を三個入れ、冷蔵庫から一本八十八円のペットボトルのアイスコーヒーを取り出して注いだ。アイスコーヒーはすぐに冷蔵庫に入れる。タバコに火を点ける。
 タバコもずいぶん値上がりしたなぁ。
 二十年くらい前は今の半額で買えた。仕事がなくなり、この際だからと家の中を断舎離したときにジッポが出てきたので、久しぶりに使おうかとオイルと着火用の石を買いに行ったら、どちらも値上がりしていた。以前吸っていたタバコはたまに買うくらいで、今では一番安いタバコを吸っている。
 アイスコーヒーを飲んでため息をついた。
 ふとかつての妻の顔が浮かんだ。
 二十七歳の時、結婚した。ふたりとも本と音楽が好きで、好きな作家や歌手も何人か同じ人だったこともあり、話は尽きなかった。デートも毎回楽しく過ごせたし、体の相性も、悪くないのでも、まあまあでもなく、とても合っていた。
 しかし、ふたりとも一人の時間が好きだったし、互いの生活習慣も生活リズムも違いすぎた。
 はじめのうちはお互いにそれぞれのリズムでいればいいと思っていたが、どちらかの仕事が忙しかったり、疲れていたり体調が良くないときは気になる。それが積もり積もって、明日こそ話し合おうと思っていたその日、向こうから離婚話をされた。
 明け方まで話し合ったが、向こうは別れると決めていて、一歩も譲らず、そのまま離婚することになった。
 とはいえ、別れたあともたまに会って、本や音楽の話をした。結婚前に戻ったといえばいいのだろうか。体の関係も続いた。
 数年後のある日、相手が結婚することになったと言ってきた。私はおめでとうとしか言えなかった。相手への好意は持ち続けていたが、互いに生活習慣も生活リズムも変えないまま、時は過ぎていた。また一緒になっても同じことが繰り返されるだろうと思った。
 吸い終わったタバコをもみ消し、残っているアイスコーヒーを一気に飲んだ。
 流しでコップを洗い、仏壇の前に座った。両親がそれぞれなくなる数年前の笑顔で私を見ている。なんの親孝行もできなかった。生まれただけですでに親孝行は終わっているという人もいる。子供は生まれたくて生まれたわけではない。そういう人もいる。それなら親孝行ではなく、恩返しができなかったといえばいいだろうか。
 私は帝王切開で生まれ、子どものときは、いや、二十代まではよく風邪をひき、最初に出る症状が発熱であることが多かった。鼻血もよく出ていた記憶がある。小学校低学年までは、そのたびに病院に連れて行ってもらったし、共働きだったが母親はそのたびに仕事を早退したり欠勤していた。どれだけ大変なことか、職場にとって迷惑をかけたか、それが理解できたのは自分が働くようになってからだ。
 父親が何の仕事をしていたのか、よくわかっていない。私が中学二年生の時に、仕事中の事故で亡くなったということは知らされている。私が何度母親に聞いても、母親はいつも言葉を濁していた。もしかしたら、母親もよくわかっていなかったのかもしれない。
 母は私が離婚し、かつての妻が再婚した次の年に交通事故で亡くなった。運転手が居眠り運転をしていたのが原因だった。車通りが少ない道を、母親は自転車でちゃんと左側を走っていた。そこへ、居眠り運転をしていた運転手が後ろから母をはねた。母は自転車から跳ね飛ばされ、十メートルほど飛び、電信柱に頭を強打した。
 夜中だったが、線香に火を点け、ふたりの遺影に手を合わせながらふたりに言った。
「なあ、俺、もしかしたらここじゃないところに行くことになるかもしれないけど、いいよね。このままここにいたところで未練も何もないし」
 もちろんふたりは何も言わずに私を見ているだけだった。
 
   3
 
 目が覚めたのは十時過ぎだった。こんなにも寝たのは久しぶりだった。とてものどが渇いていたが、毎朝の習慣を崩す気になれず、まずは歯を磨き、仏壇の水を替えてから、コップ二杯分の水を一気に飲んだ。カップ入りのヨーグルトとバナナを並べ、食パンにジャムを塗る。スマホで動画を見ながら朝食を取り、コップに氷を三個入れてペットボトルのアイスコーヒーを注ぎ、タバコを吸いながら飲む。暑い日が続いているので、エアコンはずっとつけっぱなしにしている。そのほうが結果的に電気代が安くつくと、複数の動画で見たからだ。あれだけの人が言ってたら、嘘ではないだろう。
 天気予報は晴れ。最高気温は三十三度。
 ベージュのチノパンに緑の半袖のポロシャツを着た。リュックサックに石版を入れて、チノパンの前ポケットの左にタバコとライター右にスマホ、後ろポケットに財布をいれる。
 とりあえずこれだけ持っていけば、あとはなんとかなるだろう。向こうがどんな世界なのかはわからない。いや、それ以前にいまだに本当に違う世界に行けるのか確証がない。スマホで石版を写して検索してみたが、久しぶりに該当する結果はありませんでしたという言葉を見た。じっさいに行って、やってみて、何も起きずに、誰かが入ってくるのだけが正夢だったとしたら、おかしな大人だと思われようが、正直に言って謝ればいい。
 とにかくなんでもいい、今を、この現状を変えるきっかけがほしい。
 それがどれだけ馬鹿げたことであったとしても。
 冷蔵庫から再びアイスコーヒーを取り出し、直接残りを飲みながら、タバコをもう一本。
 エアコンのスイッチを切り、玄関のドアに鍵をかけた。自転車だと、防犯登録番号で身元がバレるので、バスで行くことにした。
 誰かが加工したような青い空に大きな真っ白な雲が浮かんでいる。
 あちこちで蝉が鳴き、その中に烏と雀と鳶の鳴き声が交じる。いつもなら、私が家の前を通り過ぎるだけで、屋内から鳴く犬が今日は静かだ。十字路で見たことがない白猫が私の前を通り過ぎ、私が向かう方に歩いていく。
 停留所の前に来て、バスの時間を見ると、次のバスまで三十分もあった。歩いていくとバスが来る前に神社に着く。この暑さの中、歩くのも嫌だったが、ここで30分待つわけにもいかない。そこへ紋黄蝶が飛んできて、私が向かう方にひらひらと飛んでいく。
 私は歩き出した。
 途中、コンビニでペットボトルの水を買い、少しずつ飲みながら神社に向かう。紋黄蝶はすでに姿を消した。
 おかしい。
 今は夏休みだ。それなのに、家を出てから人を見たのはコンビニだけだ。いや、たまたまだろう。車は少ないとはいえ、たまに追い越したり通り過ぎる。
 角を曲がり、神社まで二百メートルほどの真っ直ぐな道に入った時、違和感はさらに強くなった。
 静かすぎる。
 さっきまで鳴いていた蝉がまったく鳴いていない。相変わらず人がいない。いや、車すら走っていない。まったく音がしない。空を見上げると、雲もまったく動かないし形を変えない。
 静止画の中に入り込んだようだ。
 もしかしたら私は本当に違う世界に行こうとしているのではないだろうか。今いるここは、今までいた世界とこれから行く世界の境界にいるのではないか。
 タバコが吸いたい。それと、神社に行く前にトイレにも行きたかった。出掛に飲んだアイスコーヒーが効いてきたらしい。確かコンビニがあったはずだと、視線を上げると、コンビニの看板があった。
 飲み干したペットボトルをコンビニのゴミ箱に捨て、トイレで用を足し、店内に出た。客も店員もいない。店員は奥で揚げ物をしているか、なにか仕事があるのかもしれない。店の外に出ると、当たり前だが、駐車場には一台も車は停まっていない。端の方に置いていある灰皿の脇に立ち、タバコに火を点けた。最後くらいは以前吸っていたタバコを吸いたかったが、本当に誰もいなかったらと思ったら、店員を呼ぶのが怖かった。
「さて」
 タバコを消しながら自分に言い聞かせ、神社に向かう。
 鳥居の前に立ち、一礼して中に入る。
 立ち並ぶ鳥居の下を歩き、境内に入った。
 外とは違う静けさの中にいた。厳かで張り詰めている気配。
 主神であるお稲荷さんに参拝し、隣の猿田彦神を祀る神社に向かう。参拝をすませ、あたりを見回し、人がいないこと、周りの家の窓が開いていないことを確認して、拝殿の中に入った。静かに引き戸を閉め中からもう一度外を確認したが、誰もいない。
 夢で見た通りに、鯉の滝登りの絵と紙垂の絵が飾ってある。
 私は靴を脱ぎ、中に上がった。
 夢ではこの後、誰かが来ることになっていた。その前にすませなければいけない。
 正座してリュックサックから石版を取り出し、両手に乗せ、目をつむり、夢で唱えていた言葉を言う。
「門よ、開け」
 石版が光った。
 光の球が門の形を作り上げた。
 誰かが来る前にこの門を潜らなければ。
 私は立ち上がり、見たところ何も代わり映えのない門の向こうの光景を見た。門は三歩も行けば通り抜けれられる。
 一歩踏み出した。
「誰だ、中に入ったのは」
 夢で見たときと同じ初老の男の声がした。
 引き戸が開いた。
 私は門を潜らなければという思いが強く、男を振り返らずに門を潜った。そこで振り返ると、総白髪だがまったく皺がない白袴を着た男が門の向こうでこっちを見ていた。
 私の顔はぎりぎり光が届かない位置にあったので、向こうからは私の体しか見えていないはずだ。
「お前、門を潜ったのか。まだ間に合う。閉じる前にこっちに戻ってきなさい」
 男が低く力強い声で言った。
 その時私は気づいた。門の向こうにいる男は見えるが、門の外に男の体が見えるはずなのに、見えない。
 部屋の景色は同じなのに、見えるものと見えないものがある。
「どうやってここで門を開放した」
 そこで男は私が持っている石版に気づいたらしい。
「それをどこで手に入れた。こっちにあるはずがないものなのに」
 私は始終無言で立っていた。答えてはいけない、いや、声を出してはいけない気がした。声を出した途端、向こうに戻されるような気がしたからだ。
「おい、聞こえてるんだろ、何か言ってくれ。せめてその石版をどこで手に入れただけでもいい」
 男はこちら側には来る気配はない門の向こうで話しているだけだ。
「門が閉じるぞ。本当にいいんだな。二度とこっちには帰ってこれないんだぞ」
 門が閉じていく。
 向こうの景色が、男の顔が見えなくなり、門は光の球になり、石版に戻った。
 そして、石版も光を放つのをやめた。
 
   4
 
 拝殿の中から外を見て、誰もいないことを確認して外に出た。
 静けさの気配が変わっていた。
 穏やかで清々しい気配に満ちている。
 向き直り、深く一礼して、主神を祀る拝殿の前でも一礼した。帰ろうと振り向くと、あの時の女性が、あのときと同じ姿で微笑みながらこちらに向かってきた。私も歩きだす。
 すれ違いざま、女性は言った。
「お待ちしておりました。おつかれさまでした」
 私は狛狐の間を通り、最初の鳥居を潜って、一礼しようと振り向いた。
 思ったとおり、女性は姿を消していた。ただ、花のない境内に、揚羽蝶が飛んでいた。
 再び振り返ると、立ち並ぶ鳥居の出口の中央に、今度はあの時の三毛猫が、あのときと同じく後脚を曲げ、前脚を立てて私を見ている。口には何もくわえていない。
 鳥居を潜り終ようとしたとき、三毛猫はにゃあと一声鳴いて、私の脇を通り過ぎた。外に出て、振り返ると、三毛猫は境内に向かってゆっくりと歩いていた。
 ゆっくりと深く一礼。
 空を見上げると、夏の青空に白く大きな雲がゆっくりと動いていた。
 歩き出そうとした時、蜻蛉が私の眼の前を通り過ぎ、上から鳥の鳴き声が聞こえた。
 見上げると、電線に止まっているセキレイが元気よく鳴いていた。
 私は姿勢を正し、一歩ずつしっかりと踏みしめて歩いた。
 同じ景色の違う世界を。

  終

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