ヤマモトハルクニ
繊維製造工業マーケティングシリーズ計20回をまとめたマガジンです。
熟練繊維戦士 「酸いも甘いも言いますけど、酸いも辛いもでしたわ」そう言い残して関西の熟練繊維戦士はこの業界を去っていった。7月のことだ。 この仕事を通して『甘い』思いができることなんて果たしてあるのだろうか? そう思うのも無理はない。表に出ない僕ら繊維製造業者は日々泥に塗れている。そういう星の元に生まれた定めとして受け入れているかのように。 客前に出れば「納期、単価・・・」現場に回れば「できない、やりたくない・・・」の応酬。ようやく調整して物事が動き、売り上げが立つ頃に
ulcloworks SADOBASEの立ち上げ本格稼働から二年がたちました。 クラファンを通して皆様にご協力いただいたおかげで予定計画に大狂いなくここまで来れたこと、心からお礼申し上げます。本当にありがとうございます。(縫製体験をお申し込みの方で未実施の方も有効期限はございませんのでお気軽にお声がけください) さて、ulcloworks Inc.(アルクロワークス株式会社)は2016年5月より始まり、今年で9年目になります。 基幹事業であるOEMも本当にありがたいことに順
このテーマで書くのはおよそ4年ぶりになります。個々の小手先テクニックの枝葉は1~20で書いてますが、最近改めて良い案件が集まるところには集まるというのを実感しており、なんとなく上手くいってないんじゃないかなと感じる部分に関しては自社ブログでも少しだけジャブを打っております。挿絵が使い回しで申し訳ありません。これ以上性格の悪さを隠せる絵を描く自信がありませんでした。 などと、偉そうに語っておりますが、20年近くこの業界に身を置いて様々な会社様のお取り組みを拝見させていただいて
随分久しぶりの更新になります。丸編み生地製造のお勉強です。 僕のルーツが和歌山の綿中心で無地物がメインだったので、前職時代序盤は先染(糸を染めてから編む)系の仕事に若干の抵抗というか、苦手意識がありました。 とはいえ、お客様は無地は必要だけど、時々ボーダーやジャカードもやりたいよねっていう要望は当然ながらあるわけで、避けては通れない道でした。 今回は先染柄物の基本というか、無地の延長というか、ボーダーについて掘り下げてみたいと思います。 ボーダーといえば、セントジェーム
カットソーと一言で片付けがちな編み物生地の大半は丸編み生地だったりします。 カットソーはcut&sewnの意味なので、切って縫えば全部それに当たるのになぜ編み物(とりわけ丸編み)に対して使われているのかは、下記のリンクでご参照いただければと思います。 で、丸編みというのは編みおろした段階では、螺旋で筒状に糸を編んでいくことでぶっといチューブ状の生地が出来上がります。 そこから染色整理工程で片方の耳を切り開くことで、いわゆる反物状態の布になり、皆さんにとって馴染みのある『生地
僕は好き嫌いが多いです。特に食。 これは色々理由があるのですが、別に僕個人のことはどうでも良いかと思うので割愛します。いずれ会社のブログにでも書く気が起きれば書こうかと思います。 この好き嫌いが多いことを表明することで、食事の場面では周囲の方々に気遣いをさせてしまっている事実があり、ありがたくも僕なんかをお食事に誘ってくださる面々に「これ食べられる?」などとお手間を取らせてしまうのは大変に心苦しく思うのです。が、食事のお誘いを頂戴し、僕が参加表明をする場合は概ね、食べ物に興
繊維製品を取り扱う人たちにとって、飛び込みというトラブルは遭遇したことないって人いないのではないでしょうか? それくらい発生する可能性の高い『不良』なわけですが、どうしてなかなか、製造側の人たちに対してその『不良』を『不良』と理解してもらうには少しハードルが高いようです。なぜか? 生地屋さんや工場さんに「繊維とはこういうもん」と冷たくあしらわれた経験もある方は多いと思います。僕もその一人です。この業界に入りたての時は「そういうもん」だらけで、そこに対して「なんで?」を突っ
ultimate=究極の clothing=衣類を works=作り上げる ulcloworks Inc.(アルクロワークス株式会社)の社名の由来です。 大層なことを言っているようですが、僕らが考える"究極の衣類"は、お客様が喜んでくださって、関わってくれる皆さんも幸せになれるような衣類を指します。 何も僕らが作り出す物が、それこそ、どこそこのハイブランド御用達云々、日本国内のどこそこ産生地だから至高的な究極の品質だと誇示したいわけではありません。 それを相当の価値と認め
僕らはいつの間にか、便利に慣れすぎてしまったのかもしれません。 だからと言って、今の便利さを全部捨てて原始時代のような生活を主張をしたいわけでもありません。そんな極端な話ではなく。 便利さに慣れすぎた代わりに、その便利さを生み出してくれている人たちに対する感謝も薄れてしまっていると感じています。今回はそんなお話です。相変わらず長いです。もし気になればお付き合いください。 僕は今、東京は渋谷区で洋服を作る仕事で生計を立てています。繊維業界の方なら、ご存知の方もいらっしゃる
長いです。先に謝っておきます。そして思いつきで後日追記するかもしれません。とりあえず一旦このまま出します。 僕はこの繊維業界に身をおいて、と切り出したものの、生まれた家が既に縫製業だったわけで、自覚がある範囲では、今年で18年目になります。 キャリアで言えば僕なんかより、もっともっと長くこの繊維業界に携わっていて、業界発展のためにご尽力されている方々もたくさんいらっしゃる中、生意気にも「この業界を変える」と意気込んでやらせてもらっております。 そもそもなんでこの業界を「
こちらでは本年初の投稿となります。あけましておめでとうございます。 状況も状況なので焦っても改善できるところは限られております。運営事業に関しては次に向けてしっかりと準備を進めつつ、発信もゆるゆるやって参ります。 自社ブログでも書いたのですが、昨今の繊維製造工業においては、一部大手大量生産に特化している背景を除く、中規模以下の工場が大半を占めている中で、今後は工場を回して加工していく受注スタイルだけではなく、サービスも強化していくことが求められると考えています。 繊維製造
こちらに投稿するのはだいぶご無沙汰してしまっておりますが、ありがたいことにご要望をいただいておりますので、ゆっくり更新していきたいと思います。リハビリもかねて今回は勢いで書いてみたいと思います。 さて、世は大変な状況というのは、流石に製造業の末端まで行き渡って、稼働できないから休みを増やすとか、雇用調整をするとか、いろいろな方法で生き残りを探っている現状です。 そんな中、海の向こう側の製造関係者も営業に熱が入り、今までは見向きもしなかった小ロットにまで受け口を下げてきてい
こちらに記事を書くのは久しぶりですね。 切り込む必要性もないかと思ったんですけど、SDGsの流れから、なんかコットン製品のネガキャンとも取れるような主張を垣間見るので、少しでもそういった根拠の薄い否定を減らすことができたらと思い、今回の内容を書いておこうかと思います。 もちろん、僕は専門家ではないので、コットン製品が環境に悪影響を及ぼす可能性がある部分を全て否定することはしません。ただ、誇大とも言える数値の羅列が多くの場合、根拠がない、もしくは、分母を読み違えている可能性が
東京コレクションブランド破産のニュースを受けて、いかにアパレルブランドのキャッシュフローが厳しいかを目の当たりにしつつ、夢だけでは食っていけない現実を専門学校などでも教えていくべきだという論には概ね賛同します。 ブランドが運営を続けていくための事細かな内訳を書き上げるのは誰かがどこかで書いていると思うので、僕は破産してしまう要因の一つである、『生地仕入れ』の金額について触れてみようかと思います。 特にデザイナーズと呼ばれるブランドは、生地からオリジナルでやりたい傾向があるの
今日は初めてアパレル工業製造機器の合同展示会に行ってきました。やはりテキスタイルやガーメントだけの展示会と違い、それらを作る機械の展示会は当たり前ですが見た目に大きい物が多いので、迫力があったような気はします。 一社、ちょっとお取引させてもらう可能性があって、以前からずっと打ち合わせさせていただいている会社さんからの招待だったので、そちらに顔をだし、会場を一回りして感じたことは、生地展にしてもOEM展にしても、とにかく合同展示会で選ばれて顧客が増えていく会社にはある程度規則
ちょっと取り留めもないので長くなったから普段のブログではなく、noteで書きます。 製造工場を救うためにアパレルブランドを立ち上げる人たちがいるのは目新しことではなくなりました。その思いは素晴らしいと思うのですが、必ずしも、その素晴らしい『思い』が、製造工場にとっての『思い』と同じかと言われたら、それは違います。 『救いたい』という『思い』が強い人たちがいるからこそ、僕はそのギャップをここに認めておこうと思います。これは批判ではなく、現実です。また工場もどうか、そういう『