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小ロットの落とし穴。

こちらに投稿するのはだいぶご無沙汰してしまっておりますが、ありがたいことにご要望をいただいておりますので、ゆっくり更新していきたいと思います。リハビリもかねて今回は勢いで書いてみたいと思います。

さて、世は大変な状況というのは、流石に製造業の末端まで行き渡って、稼働できないから休みを増やすとか、雇用調整をするとか、いろいろな方法で生き残りを探っている現状です。

そんな中、海の向こう側の製造関係者も営業に熱が入り、今までは見向きもしなかった小ロットにまで受け口を下げてきています。これ自体は、生き残りをかけて止む無しといった気もするんですが、経営上かなり難しい判断をしなければならないところです。

発注側も市場が買い気旺盛でないことは承知していますので、大きく腹はってドーンとはいけず、かと言って小ロット生産に移行すれば、原価が上がり利益率は圧迫され、上代を上げられるかといえばそういうわけでもなく、売れなかった時のリスクというのが大きくなる一方で、しかし商品を作らないわけにもいかない。なんとも苦しい状況です。
そこへ「小ロット生産を低コストでやりますよ!」って手を差し伸べれば、商談のテーブルに上がることは難しくありませんし、営業は大きな風呂敷を広げますから、成約の確率もぐんと上がります。

昨今の風潮から、大量生産に対する風当たりも強いし、在庫を抑制しながら商品を展開していけるのですから、噂の廃棄問題にも一役買うのではないかと、小ロット生産に対する期待値は僕が思っている以上に、巷では非常に熱量が高い気がしています。
ここに、僕は一抹の不安というか、どこか腑に落ちない違和感を感じるのです。

小ロット対応すると・・・

たくさんの方が、小ロット生産のカラクリを、材料面のリスクで保たれているという主張をされていて、改めて僕がいうことではないですが、おっしゃる通り、服になる前に、材料が各原材料メーカーによってある程度見込み生産がされ備蓄されています。服になるのは、それらを必要数量ピックアップして組み上げているので、服での在庫問題は解消したように見えますが、原材料では解消していません。

なんでこうなるかというと、過去の投稿でも何度も触れていますが、製造工業というのは、設備(製造すること)を止めてしまうと途端にコストが上昇し(正しくは維持コストは一定だが、商品を作らなくなるので維持コストを個数で割り返した時に単価が跳ね上がる)、普段はなんでもないと思われているような材料でさえ、非常に高価なものになってしまうからです。

仮に発注が一件しかなくて、時間と生産能力が一定とした場合↓

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仮に通常ロットが上の絵的な感じだったとして、小ロット生産のイメージは下の絵のようになります。

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イメージ伝わりますかね?

普通はこんな感じである程度ミニマム製造ベースがあってそれを下回ると固定費はそのまま、個数が減れば単価に跳ね返るのですが、それでは買い手は困ってしまうわけです。
だって今までは原材料費の単価4/個で買えていたものが単価10/個になるということは2.5倍ですから、そのまま小売単価を据置で売ったら大赤字です。じゃ市場価格を上げれば解決ですよね。ということで小売単価を上げてくれるかと言ったら、その値段で買ってくれる人が世の中でどれくらいいるのか?という話になって、売れなかったらそもそも仕入れしない方が良いじゃんっていうのが今仕入れむずいよねっていう空気になるわけです。

ましてやこれが服作り全部を通していくとなると糸や生地から別注対応したらそれぞれのポイントでそれぞれに同じ現象が起こって、原価は大変なことになります。

そこへ、「小ロットでも安くやりますよ!」っていう人が現れる。商品企画を出しあぐねているメーカーさんへ向けて、既存の仕入先さんたちから商売をひっくり返しにいく案件だったり、昨今流行りの製造小売をやりたい小規模事業者に向けて間口を広げていくスタイルです。

これ、結構ありがたいですよね。実際にもうそういう業者さんたちにお願いして助かってる人たち多いのではないでしょうか。

でもちょっと冷静に考えてみたら、なんで安くできるのか心配になりませんか?あんまりそういうのならないタイプですか?

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