中間業者として実際にやっていること。
こちらでは本年初の投稿となります。あけましておめでとうございます。
状況も状況なので焦っても改善できるところは限られております。運営事業に関しては次に向けてしっかりと準備を進めつつ、発信もゆるゆるやって参ります。
自社ブログでも書いたのですが、昨今の繊維製造工業においては、一部大手大量生産に特化している背景を除く、中規模以下の工場が大半を占めている中で、今後は工場を回して加工していく受注スタイルだけではなく、サービスも強化していくことが求められると考えています。
繊維製造工業の中には、既にサービスを格段に強化して苦しい市況の中でも活路を見出している企業はたくさんあります。ですが多くの小規模工業は未だに依頼者のレベルに左右される現状が続いています。
ここで言う依頼者のレベルと言うのは、発注数量や製造原価の融通、また依頼者が展開している市場の状況、そして依頼者の製造に対する知識量や仕入先に対するモラルなど総合的なレベルです。
日本のものづくりのレベルが高いと言う点は僕自身もよく理解しているつもりです。ただ、そのレベルの高い商品が、『レベルが高い商品だ』と万人から認められて、収益性を向上させてくれる唯一の方法かと言うとそうではないと考えています。
依頼者のレベルに左右されて自社の舵取りができないのは辛いものがあります。過去に投稿を続けてきた『繊維製造工業マーケティングのすすめ。』でも書いていますが、ものが良いのはもう当たり前で、そこからさらに価格が安い方へと仕事が集まっていきます。安値止まりの次は、クオリティの部分以外でいかに仕入先が依頼に対する融通が効くかというところに目が向かいます。
余程、他所で作れないオンリーワン商品で、更に需要がしっかりと見込めるものでない限り、作り手の言い値で買い上げてくれるお客さんはいません。
そして悲しいことに、繊維製造に関しては機械設備である程度のレベルまではクオリティが揃ってしまうので、ある程度の数を求めると当然のように安価な価格を提示した方へと仕事が流れていってしまいます。『熟練工の匠』と言いたいところではありますが、従来の関係性がない人たちを新たに取り込んでいきたいと考えた時に、それを求めてきてくれるお客さんというのはごく少数(または非常に小口)ということです。
工場設備の都合で、小口の対応が難しいと運営の判断をする以上、設備維持費や人件費を賄った上で収益を見込む高単価受注を得ていくには、商品クオリティはもちろん、それ以上に求められる(非常に面倒な)ことが現実問題としてあるということを認識していく必要があります。
そしてその面倒なことを実践して受注を得ているのが弊社含む中間業者の存在です。
シンプルに考えてみると、依頼者側に相当の製造知識があれば中間業者など不要で、工業と直接受発注できる関係性がつくれるはずですが、製造知識豊富な大口の依頼者は基本的に安価な製造背景を求めます。これはモラルの問題ではなく、購入者が意思決定をしていく際に普通に起こる現象です。
これを読んでくださっている繊維製造工業従事者の皆様の中にも家電製品を買う時に店頭でスペック確認をした後、同商品をインターネットで探して最安のところから買うという行動を日常的にしている方はいらっしゃるはずです。これと同じです。
『得られる価値』が同じなら、安価なところから買うのは当たり前です。
ここで書く『得られる価値』というのは、商品のクオリティに限らず、『依頼者の努力が不要』な点なども含みます。
『依頼者の努力が不要』というのは、簡単に、そして極端にいうと、服の絵を描いたら、特段指示せずともイメージ通りの服を作ってくれるような状態に近いです。もっというと曖昧なイメージから具体的な提案をくれる人たちを求めています。
しかし残念なことに、多くの繊維製造工業は、この『得られる価値』を商品のクオリティにのみ見出そうとします。その点を無視しろというのではなく、その点以上に、サービスの補完を必要とされているということを述べたいのです。
そのサービスを提供しているのがご周知の通り中間業者というわけです。
もちろん中間業者にもピンキリありますので、中間業者がいても工業側の努力が必要以上に求められている現状もあります。その場合は「中間業者を不要とする動きを工業から自発的にとっていきましょうよ」という呼びかけを以前から主張させていただいているわけであります。
長い前置きになりましたが、では具体的に、僕たち中間業者がどういう運動をしてサービスを提供しているか詳しく書いていきたいと思います。
相手を知る
これは前述の『繊維製造工業マーケティングのすすめ。』でも書いている通りですが、商売をしていくに当たって相手のことを知らないまま一方的に自社商品を提案しても、成約に繋がる確率は低いです。
万が一仮に、商談のアポが取れた場合、相手の貴重な時間をいただく以上は、相手にとって意味のある時間にするのが最低条件です。ここをしくじると次のアポイントチャンスはあり得ません。
相手がどんな市場で、どんな商品で、どんな価格帯で商売しているのか。また、可能であれば、競合はどこか、メインの仕入先はどういったところかなど、商談テーブルに着く前に知っておいた方が、見当違いな提案をするリスクを防げます。
相手先のメイン仕入先まで知ることができたら、その仕入先がどういう動きをしてその相手と商売を続けているのかという分析までできます。
その運動量をもって、競争した上で自社に収益性がある相手かどうか見極めることもでき、不釣り合いだと判断できれば、自分たちも無駄な動きをせずに済む場合もあります。
僕らの具体的な手法としては、まずインターネットを通して相手のホームページを検索し、次いで実際に店頭などを訪れ、そのお店に来ているお客さんたちの様子などを観察します。そして売れ行きの良さそうな商品(よく手に取られているもの)と、店頭で目立っている商品を中心に素材や価格帯を調べます。
そして可能であれば繊維企業年鑑などを調べ、売上高、純利益、事業内容、主要取引先など出来る限りの情報を得ます。
自発的に商売したいと思った相手を調べていくので、基本的に不釣り合いだと感じることは少ないですが、調べてみると、財務状況なども含めて、興味はあったけどやめといた方が良さそうなどわかり、無闇に営業をかけるより効率は良いです。
自分を知る
これは相手を知った上で、当然といえば当然のことですが、自社のできることを知らなければ、相手に提案する内容が相手にとって意味のあることかどうか判断できないからです。
地方で繊維製造工業に従事している事業者で、依頼主が創業以来ほぼ変わらないまま収益が減少している場合、重い腰を上げ新規獲得に動こうとすると、根性論で手当たり次第に名のあるところへアプローチしがちです。
業界のことを知っているつもりで名門へアタックするのは常套手段のように見えますが、誤解を恐れずに言うと『井の中の蛙』です。
自社のできることがその人たちにとって必要なことかどうかを、まずは知る必要があるので、自分たちが出来ることで相手にとってメリットと感じてもらえるであろう『自社の強み』を把握しておくのは必須です。
もし仮に、特段強みが見出せず、いわゆる製造加工業だと感じた場合は余計に、冒頭で申し上げた通り、サービスを強化して、サービスを商品として訴求していくことが必要になります。
弊社の場合、取り扱い商品が丸編み生地がメイン商材になりますので、その点を特化ポイントとし、更に生地を作って売るだけではなく、服に仕立てていく一連をワンストップで提供出来るというところがメインの商材になります。
ですが、このままだと巷のOEMメーカーと何ら変わりがないので、原料知識を活かした詳細なフォローや、依頼者の努力が不要になる発注後のスキーム、そしてこれは多くのOEM業者がやっていることですが、最終納品時にしか発生しない請求などのファイナンス面などがあります。
クオリティーコントロールのフォロー
ものづくりは色々と事故が起こるものです。完璧なオペレーションで製造に入って納品までいっても、完全に完璧なものしか納品されていないなどという保証はどこにもありません。万が一不良品が出てしまった時は素直に認めて相手の納得ができるフォローをするのが商売を継続させていく上で必要になります。
悪意のあるクレームは論外ですが、これは事前の取引先に対するアプローチの段階で調査することで、ある程度は防げます。
(商取引のモラルが)きちんとしたお取引先さんとの商売で、起こってしまった事態に対しての誠実なフォロー体勢というのは、実はどんなアプローチよりも重要だったりします。クレーム処理で絆が深まるとよく言われますが、本当にその通りだと実感します。
いくら製造リスクを説明しても、相手が了承しているようで、理解しきっていないケースはいくらでもあります。進行してしまったあとの責任の所在は一切製造側にあるという意識を常に持った方が、相手に不満を持つような後腐れはありません。
この点が「製造が弱い立場にある」とよく言われるところかと思いますが、逆に製造リスクはゼロに出来ないのであれば、ロスの範囲に勘定して見積もり提出して単価が通っていれば、事が起きても相手に迷惑をかけずに処理しきれますし、きちんと納まればその分利益も増えます。
いかに余裕を持っておくかということに尽きるかと思われますが、この余裕を持つために必要な見積もりを許されるには、やはりモノ以上の、お客さんの体感価値を向上させるサービスの面を強化していく事が必須になります。
『依頼者の努力が不要』の具体化
ここまでくると、商談に当たって双方にストレスが生まれることは特にありませんが、成約となると、もう一押し必要です。
自分を知る中でサービスが強みとする場合、避けて通れないのは依頼者の努力を極力減らすということです。具体的にどういうことをしているか例を上げていきます。
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