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ロット割れチャージアップの謎。

東京コレクションブランド破産のニュースを受けて、いかにアパレルブランドのキャッシュフローが厳しいかを目の当たりにしつつ、夢だけでは食っていけない現実を専門学校などでも教えていくべきだという論には概ね賛同します。
ブランドが運営を続けていくための事細かな内訳を書き上げるのは誰かがどこかで書いていると思うので、僕は破産してしまう要因の一つである、『生地仕入れ』の金額について触れてみようかと思います。

特にデザイナーズと呼ばれるブランドは、生地からオリジナルでやりたい傾向があるので、縫製工賃に重ねて、別注生地単価も生産ロットによって単価が大きく動きます。生地在庫を備蓄してくれている問屋さんでさえ、その生地生産ロットを気にして提供単価を均一にすべく、経済ロットというやつをこなしていきます。

経済ロット

じゃ、経済ロットって何だ?って話ですが、下記のリンクを参照しつつ進めていきます。

僕は丸編み屋なので、今回は丸編みで説明しますが、おそらくロジックはどのジャンルでも同じだと思います。

先ほどのリンク内には生地屋さんがどんな感じで生地在庫を作って、みんなからのオーダーを心待ちにしているかということを書いてますが、要は経済ロットって、工場が提示している単価で作りやすい物量のことです。

丸編みで言えば、編み機の口数と糸の買取本数と染色バッチの反数の最小公倍数が経済ミニマムロットということになります。糸屋さん、編み工場さん、染め工場さん、それぞれの場所に於ける、それぞれにとって最小の好都合を組み合わせたロットです。

これを割り込むと、チャージアップといって、一個あたりの単価が上がっていくことになります。まぁ少なければ値段が上がるのは仕方ないと思ってくれてるとは思うんですが、実際にロット割れした時のオーダーに対して提示された金額が想定の範囲を超えて高いって時にちょっと心の中では(そりゃないよ)って思ってムッとしたりすることってありません?思ってない?ほんと?
少なくとも、僕の経験上はムッとしている人がほとんどです。
「今回はこの単価になります」に対して、だいたいのお客さんは「えー!?そんなに上がるの!?なんとかしてよ〜」の応酬です。

チャージアップの正体

そりゃ誰だって元々の提示単価以上で買うのは仕入れ原価を上げることになるから避けたい訳で、生地屋さんだってそんなリアクションされたくないから、できれば同じ単価で出したい気持ちはいっぱいなんだけど、そうは問屋がおろさないチャージアップ。そのカラクリをなるべく伝わりやすいように紐解いていきます。
わからなければ途中で質問してください。twitter→ @HARUKUNI_Yまで

超雑にまとめると、経済ロット単価で経済ロット分生産した時にかかる金額を、実際にオーダーした時の数量で割ったら、チャージアップ単価になります。が、合計で割返したらとんでもない単価になるので、それぞれの経済ロットをそれぞれ割返していく感じになります。

まずは工賃。
それぞれの工程において最小の好都合を下回るわけなので、工業はなるべく本来得られるはずの最小の手間賃を担保する必要があります。

例えば丸編み工場であれば、一台の編み機で一日にいくら稼がないと会社は赤字っていうラインが存在していて、その稼がなければいけない金額を下回ることは運営上認められません。

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