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飛び込みはなぜ起こる?

繊維製品を取り扱う人たちにとって、飛び込みというトラブルは遭遇したことないって人いないのではないでしょうか?

それくらい発生する可能性の高い『不良』なわけですが、どうしてなかなか、製造側の人たちに対してその『不良』を『不良』と理解してもらうには少しハードルが高いようです。なぜか?

生地屋さんや工場さんに「繊維とはこういうもん」と冷たくあしらわれた経験もある方は多いと思います。僕もその一人です。この業界に入りたての時は「そういうもん」だらけで、そこに対して「なんで?」を突っ込むと煙たがられたものです。
「そういうもん」だけで押し通せてきてしまったことで、そもそもなんでそうなるのか?という原理構造を理解していない人たちが増えてしまったということもあります。

ただ、紐解いていくと、確かに「そういうもん」以外に説明がつかないこともあるので、今回は飛び込みが「そういうもん」の理解を進めていけたらいいなと思います。

飛び込みって

飛び込みとはいわゆる『異物混入』です。丸編みの生地であれば、ヨコ方向にシュッと走る生地色とは違う『何か』がそれです。

飛び込みの規則性として、布地の生地目に沿う性質があります。織物であれば経糸方向か緯糸方向に、丸編みであれば経糸挿入の経糸部分を除いてヨコ方向に、ニットも基本的には編み目に対してヨコ方向、縦編みであれば縦方向に入ります。

これは織布の原理なので、布目を無視したような斜めだったりに異色の不良が出ている場合は飛び込みではなく汚れの可能性が高いです。(ミラニーズやレース、ケーブル編みなどは斜めに目を移していくので斜めに入ることもあります)

飛び込みには大きく分けて二種類あって、僕らはコンタミとフライで呼び分けています。

コンタミ(コンタミネーション)は異物混入で、多くの場合は原糸での混入を指しています。原糸を作っていく過程で他の繊維や、同繊維でも染まりにくい状態だったものや、元々色が付いてしまっているものをコンタミと呼んでいます。

フライは俗語かもしれませんが、ハエの意味で、織布上の工程で生地組織に入り込んでしまうゴミです。

こう見ると「いやいや、入らんようにできるでしょ?」と言われそうですね。そうなんですよ、気をつけてはいるんです。本当に。
生地を選ぶときに防御線を張ってくる営業さんいますよね?「これ飛び込み出やすいんで・・・」的な。じゃそんな生地提案してくれるなって思う人も多いと思います。または、わかってるなら出ないようにしてよって思う人もいますよね。でも出ちゃう。

「こういうもん」だから(´・_・`)

腹立つwww

コンタミはなんで出ちゃうのか

歳とってくると白髪出ますよね。髪の毛の中でも色差はあります。人によって太細の差もあります。天然繊維にはこれと同じことが起こっています。

全ての天然繊維原料が真っ白でキレイならいいんですけど、世界に一つだけの花はナンバーワンよりオンリーワンなので、厳密にいえば、どれひとつとして同じ状態のもので揃えるというのは難しいです。
とはいえ、産業ですから、ある程度の範囲を設けて種類を揃えていくことで商品として整えていく必要があります。

このある程度の範囲の中に、不本意ながら、色が違ったり、成長が未熟なものだったりが混入してしまいます。ここに潜む「こういうもん」

また、天然繊維原料の多くは海外から持ち込む際に嵩を圧縮します。荷姿はビニールなどの外装を施すのですが、原料ワタは重さで取引される都合上、公定水分率検品(水で重さが嵩増しされていないかなどを調べる)などで外装から針を検査する行程を経ます。針が外装を突き破る際にうまくビニールが破れずに伸びて押し込まれ、そのまま繊維と一緒に紡績工程に回ってしまうこともあります。ピンクとか緑とかのプラスチックっぽいやつの正体これで、結構厄介です。熱で溶けて繊維に絡みつくと製品になった後取り除くのが困難です。

また昨今は、リサイクル原料の使用も盛んです。リサイクル原料は落ち綿(紡績行程で出た未使用繊維)や反毛(糸や生地、服などを開繊して繊維にしたもの)は、繊維の細さを限定できないため、紡績工程で不適合な部分を落とし切ることが難しいです。そうなるとどうしても不純物を含みやすく、そもそも綺麗な糸を作るのに適していません。綿カスなどもこれらの糸に多く入り込んでしまう所以です。

このほかにも、繊維にあった紡績方法を取っていないなどの理由で、異素材混紡糸は糸の太細やネップ、異色原料混入などのリスクが高まります。たまに麻混の糸を使って生地にしたとき、亜麻色のフシを『飛び込み』と言われることがありますが、それは麻です。「こういうもん」です(´・_・`)

フライはなんで出ちゃうのか

これが一番、「いやそれ防げるやろ」案件なのではないでしょうか。
フライは織布行程中に取りきれていなかった機械に残った繊維や、織布中に糸に摩擦が起きて出てくるホコリが空気中に舞い、静電気などの影響でシュポッと入り込んでしまう事故です。

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