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ボーダーってむずくね?

随分久しぶりの更新になります。丸編み生地製造のお勉強です。

僕のルーツが和歌山の綿中心で無地物がメインだったので、前職時代序盤は先染(糸を染めてから編む)系の仕事に若干の抵抗というか、苦手意識がありました。
とはいえ、お客様は無地は必要だけど、時々ボーダーやジャカードもやりたいよねっていう要望は当然ながらあるわけで、避けては通れない道でした。

今回は先染柄物の基本というか、無地の延長というか、ボーダーについて掘り下げてみたいと思います。

ボーダーといえば、セントジェームスやアニエスなどのフレンチカジュアルの王道ベーシックアイテムとしても定着しています。ブランド立ち上げて無地の定番Tシャツボディができたら、色のレンジ組んだその先にボーダーの展開も・・・なんて話はよくあるので(無地定番決まったら数シーズン後にはボーダー展開の流れがあるな)程度に生産側は心構えする準備はしておいて損はないかと思われます。

まず、ボーダーとは?ってところから。海外生地名とかだとストライプと表現されていることが多いのでボーダーって呼び方は日本だけかもしれません。ここでいうボーダーは横方向にシマシマになっている柄をボーダーと定義して話を進めます。

丸編みにおけるボーダーは、編み機そのものの影響を強く受けるため、依頼者の意図する柄を組み上げることができるかどうか判断するには、丸編み機の構造及び糸の太さと編組織構造の関係など、思ったより知識が必要になります。
最近は作ってしまう前に柄のイメージを編み地の見え方でCGでシミュレーションが容易にできるのですが、コンピュータ上で再現できているからと言って、現実の生産にそのまま移行できるかというと、シミュレーションした人が製造の知識をきちんと持っているかどうかによっては再現不可のシミュレーションが起こせてしまうので注意が必要です。
その辺に関しては下記の記事にまとめてあるので興味があればご一読ください。

えぇいめんどくせぇ!もっと簡単にボーダーできねぇのか!と、早くも痺れを切らしてしまった方は、無地にプリントでボーダー作成されることをお勧めします。プリント版の送りサイズ内であれば、その表現は自由ですので色数版数によって引き起こされる踏みなどを注意したら、思い通りの柄は作れます。顔料染料インクジェットなど手法によってやりたいことに対してできることも変わりますのでプリントの知識は別途必要になりますが、編み地で柄組するよりは感覚的にやれます。

ここからは忍耐強く編み地で柄組みをしていきたい人が読んでいただければ幸いです。

糸番手とゲージの関係

編み地に限らず布地は肉厚などを決める際に糸番手が大きく関係してきます。薄手のものには細い糸、厚手のものを作りたい時は太い糸を使うのがセオリーです。

この関係上、ボーダーの幅も、糸の太さの影響を大きく受けます。

仮に30/1の綿糸を28ゲージにかけた時の天竺の編み目ひとつの大きさが、縦方向に0.4mmの長さがあった時、ボーダーのピッチ幅はこの0.4mmの倍数しか表現できません。つまり柄の一部に1mmのラインを入れたい時、編み目一つが0.4mmである以上、表現としては0.8mmか1.2mmになります。
この例では非常に小さいズレですが、大柄になればなるほど、この誤差は許容の範囲を超えてくる可能性があるので重要なポイントです。

番手とゲージの組み合わせによって編み出された基本になる生地の編み目一個の長さをよく測って一目あたり何ミリかという一番小さい数字を見つけ出すのが大切です。

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