ゴトウユタカ

刑務所で、大学ノートに毎日綴った絵日記。どんな生活してたのかは勿論、何をしてここにいる…

ゴトウユタカ

刑務所で、大学ノートに毎日綴った絵日記。どんな生活してたのかは勿論、何をしてここにいるのか、どんな奴らと暮らしていたのか、そしてプライペートな一面まで、お前に見てもらいたくて続けたんだ。馬鹿な男と思われても。

最近の記事

接見禁止って?

2015(平成27年) 5月19日 記  裁判所で拘留が認められただろ。その間に警察での取り調べが有るんだけど、もし俺に共犯だとか、今後逮捕しようと考えている知人が居たりした場合に、ハト飛ばされると困るわけだナ。  ハト飛ばすってのは情報をもらすこと。  手紙で誰々が危ないから気を付けろと発信したり、面会で取り調べが共犯にどれほどおよんでいるか知らせる等、捜査のさまたげになる情報を漏洩する事かな。  こういう恐れのある場合は、拘留中は"接見禁止"ってのが付く。そうなると、面

    • 保護房って?

      2015(平成27年) 5月18日 記  パクられてんだからよォ。気分の良い奴なんて居るか?  だいたい俺はパクられた後の数日はフテ寝するって決まってんだ。  誰とも口をきかず眠ってるか時折、今後どーすりゃいいか真剣に考えたりする。  そーいう時に限ってめんどくせーのが現れる。  今回は留置係の警察官だった。生活音のうるさい奴。ゐるだろ?要は乱暴なんだ。夜中平気で大きな足音たてて、洗濯機回したり、机の引き出しやロッカーはバタンバタン閉じる。  流しに洗面器を投げるように置き

      • 私選・国選って?(他1話)

        2015(平成27年) 5月16日 記  さっそく弁護士の先生がやって来た。  一昨日の拘留質問の際、裁判所に一早くかけつけてくれてすでに挨拶しているので、今日は2度目の対面だ。 被疑者となった俺には弁護士がつく決まりになってる。弁護士の先生には私選といって自費でやとう場合と、国の負担でつく国選の2種類が有る。  俺は過去3回を私選、2回を国選にした。どちらが動いてくれるのか、力を持っているのかは運だ。  金を払ったからって良い弁護士が現れるとは限らない。現に俺の過去の経験

        • 面会の気まずさ

          2015(平成27年) 5月15日 記  マサが面会に来たよ。奴も3回刑務所行ってるけど全て俺の共犯。  しかし今回に限っては奴は潔白だ。  俺だけまたしてもバカなことしてる姿を見せるのはやはり気まずい。 『何が有った⁉職質か?』 『違う。ウチへ来たんだ。ガサ入れだよ。』 『何で?』 『それが判らねエ。最初っから使用のみでやるってハカリだパケだとか持って行こうともしない。』 『どっから足がついたか判んないの?』 『わからない。全く思い当たるフシがない。こんな事有

        接見禁止って?

          身検と勾留質問って?

          2015(平成27年) 5月13日 記  一夜明けて目覚めると、留置場の鉄格子が目に入る。だから慌てて目を閉じるんだナ。  そして恐る恐るもう一度目を開けたとき、昨日の朝と同じ自分の部屋の風景が目に飛び込んで来てくれるよう願う。  パクられた事は、夢であってくれって本気で願うんだ。  でも再び目を開けたとき、いつだってそこに有るのは絶望感だ。この時の胸の苦い思いがなんたって一番辛い。  馬鹿だろ?こんな嫌な体験を、もう何回も繰り返しているんだ。本当に進歩のない人間だよ。  

          身検と勾留質問って?

          鹿児島編(ノートNo.1)逮捕しちゃうぞ

          あーあ。どうしてこんなことになっちまったのかナ。後編とかPart2とかFinalとか、そんなの有っちゃまずいでしょ! 2015(平成27年) 5月12日 記  朝、玄関のカギを掛けて、エレベーターで下に降りると、同じ階に住むオヤジサンに声を掛けられた。 『半ズボン、半そでで寒くないかい?若いネ』 『いやあ。オヤジサンだってまだまだ若いですよ』 『そんなことないよ。もう年だから寒くて寒くて・・・ハハハ』  そして一昨日買ったばかりのチャリンコにまたがったところで4~

          鹿児島編(ノートNo.1)逮捕しちゃうぞ

          俺の獄中絵日記(鹿児島編)その 2

          幻のシャバ4ヶ月間の内の某日。  ところがサァ。有るんだよネ。  今回ガサもれが。  ガサもれ?何のことかって?家宅捜査で探しきれなかった物の事だよ。  前回、平塚警察が来た際、家の前で今回と同じようにやられて、これまた今回と同じで家に戻ってガサ入れされた。  その際、俺の持ち物からはシャブや大麻が出たけれど部屋からは何も出なかった。探し出せなかったんだ。ガサ入れでもれたんだよ。  ガサもれだ。  それが今回は部屋にちゃんと残っていた。思えば中途半端な決意だったんだ。 『

          俺の獄中絵日記(鹿児島編)その 2

          俺の獄中絵日記(鹿児島編)その 1

           俺は帰って来てからそりゃ一生懸命やったさ。お袋安心させてやろうと思ってサ。普通の人。そう、ただ普通の人になろうとしたんだ。 疲れる時もあるよ。 でも、年寄りの世話ってのは、 本当はこんなもんじゃ済まないんだよ。  帰ってきてから家の前のファミレスでマサと会ったよ。  今回も共犯のようなものだけど、奴の方が帰りが早かった。  判決は1年2ヶ月だって。  そんなの軽すぎるだろ。  悪友が近くに住んでると言うだけで仮釈パーにされた俺の立場はどうなるのって感じだよ。 マサの奴

          俺の獄中絵日記(鹿児島編)その 1

          俺の獄中絵日記(鹿児島編)満期出所とエゾシカカレーの味

          2015(平成27年) 1月13日 (前) 読んで字のごとくだ。仮釈が欲しくて、一日も早く帰ろうと思って色々な事がまんしてやって来たのに、満期出所だ。  上訴権まで放棄して挑んだ懲役は無駄に2週間多く懲役やっただけよ。 覚えているか。  領置が預かっておかなきゃならない金を、間違って俺に渡してしまったという1万円を、領置金から差引し引くために横浜拘置からやって来た奴のこと。  あの時確かに出所時にはあなたに渡すものだ。と言ったのに、聞いてみたら、  『知らないな、わか

          俺の獄中絵日記(鹿児島編)満期出所とエゾシカカレーの味

          俺の獄中絵日記(月形編)遂に最終回

           これで俺の2年4ヶ月の実刑は満了を迎え、人生4度目にして最後の刑務所体験を終了しました。  最後の懲役だから、自分へのいましめのためと、たった1人の女性に見てもらおうと続けた絵日記だけど、   人生初めて最後まで何かをやりとげた充実感でいっぱいです。  これからはお袋も一緒に幸せなシャバの思い出作っていこう。  そしてこんなにハッピーになりました。 ・・・と言うはずだったんだよ。  だけどこんなに早くつまづくなんてよォ。  そんなの有りか!  最終回は取消だ。   つら

          俺の獄中絵日記(月形編)遂に最終回

          何に向かっているのか(俺の獄中絵日記月形編最終回)

          2015/1/12 満期日 記  長い長い懲役生活の中ではオヤジの訓辞を数限りなく聞いて来た。  その度ごとに、良い話というのはうなずけるもの有るんだけど、どれもこれも、そのうち記憶の中からうすれていってしまうものだ。  だけどひとつだけ、ずっと心に残ってて、事有る毎にそれは俺の頭に出て来るものが有る。  それは話じゃなく言葉なんだ。府中の時に、俺が降りた工場ですぐに転勤になって居なくなった副担が、最後にあの刑務所特有の、職員の送別セレモニーの中で話をしてたオヤジのセリ

          何に向かっているのか(俺の獄中絵日記月形編最終回)

          シャバで待ってる3つのタイプ

          2015/1/11 記  懲役がやっとの事終ってシャバに帰るとサ。俺を待ってくれてる人たちにはきっちり3つのタイプが居るんだよ。  ひとつ目は、何も言わずに頑張れと金を投げてくれる人。  プレッシャーを与えずイチから出直す俺に対しての心遣いの暖かさを感じる。  こういうタイプの男になりたいと俺も心掛けてるよ。でもなかなかそうはいかないな。  ふたつ目は、金も出すけど小言も言う人。  どうしてもひと言、言わないと気が済まないのだろう。でも、小言なんかより人生やり直す軍資金も必

          シャバで待ってる3つのタイプ

          人生一度きり、好きなように生きろ

          2015/1/10 記 親父の体調が良くないらしい。  お袋の手紙に書いてあった。  「ずい分お前たちに迷惑掛けてきたから、岡山でひとりで何とかやるよ。会ったとしても介護に来るようなものだからそっとしといてくれ」 と言ってるとか。  お袋はそっとしとこうなんて言ってるけど、俺としてはやっぱり出たら一度会いに行こうと思ってる。  でないと、ゆっくり話す機会はなくなってしまうかもしれないから。  今回ここへ来た時に親父の手紙を受け取った。お決まりの説教なら破り捨てるところ

          人生一度きり、好きなように生きろ

          5人の敵がいる

          2015/1/4 記  正月のジャンキー烈伝最終日は、ヨガのインストラクター大ちゃんの話だ。  インドを始めヨガの修業で世界を渡り歩く大ちゃん。草はプロでも薬にヨレる。彼が苦しむのは幻聴で、これまたあまり類の無い複数人登場するパターン。  多くの幻聴の相手はひとりで本人の気に障る事を言って話掛けて来るものだが、彼の場合は5人居て、リーダーは女。それがコソコソ悪口をささやき合うらしい。  ひとりで薬を使用してひと晩も寝ないでいたら、例の男たちが、”こいつはひとりでやること何も

          5人の敵がいる

          廃人への特急券

          2015/1/3 記  同級生のタケシはヤクザになって覚せい剤で商売していた。  武闘派の奴は派手なケンカをする無敗のプロレスラーのようだ。  ところが一旦、薬が体に入ると『ケンカはいけないよ』と180度変わる。  薬でイケイケになる奴は、事件を起こしニュースになったりするが、奴は真逆で家にこもるタイプだ。  良くあるパターンで、やがて自分の限界に挑むかのように薬の量が増えてくると、警察だとか付けられてるとか言い出すようになった。 「尾行してくる怪しい車のナンバーを控えたん

          廃人への特急券

          ライダーの悲劇

          2014/12/30 記  ジャンキー列伝4日目は、もう一丁ヒデさんの話をしたいな。  ヒデさんの趣味は大型のバイクだ。 確かハヤブサとかいう1000cc越えのすげえの乗ってる。…いな、これももう過去形で、乗ってた。が正しい。  ある日ライダースーツに身を包み、バイクにまたがったヒデさん。  この時ヒデさん散々遊んで、一番よれるという方法の、飲み込む方法での摂取だった。  さて、バイクにまたがってフルフェイスのヘルメットを被ったヒデさん、その瞬間に、どこからともなく 「おー

          ライダーの悲劇