頭が真っ白になる時
2015(平成27年) 7月6日 記
血の気が引くとか、顔面蒼白なんて言うだろ。俺も言われた事有るよ。
14年前、麻薬特例法の件で東拘から裁判受けに行ったときの事だ。全て認めてんのに裁判は1年以上かかった。
バカな俺は所持も使用もない認定だけでそれほどの求刑をもらうはずはないと思い込んでた。
同部屋の井上も公判が同じ日だったので一緒にバスに乗って出廷した。
あの時、俺、求刑7年来たんだ。ひっくり返りそうになったよ。事の重大さに初めて気付いたって感じだった。帰りにロープにつながれてる時、ずっとむこうで立ってた井上が叫んだよ。
『ごっサン!大丈夫か!顔が真っ白だぞ』
って。笑顔で返す余裕もなかったね。わかるかナ。運動の時、いつも話をしてるとなりの舎房のKサンは特例法で7年行ってたらしくて、帰って2年でパクられた。今回も営利が付いてる事で昔の俺のパターンと同じだ。不安らしくて毎日毎日俺の事を聞いて来た。俺は6年くらい求刑来るんじゃないかって言ったんだ。シャブが5gコークが40。おかしくないだろ?仕方ないなって顔してたけど昨日求刑を受けて一夜明けた本日の運動時間。さっそく俺に言って来た。
『参りましたよ。8年来ましたよ。全然予想と違うんですもん!』
俺言ったんだ。「大丈夫か?顔が真っ白だぞ」
PS
何にもしてなくても、昔から顔色悪いと言われること多かったな。
色白だからか?この色白はお袋譲りのもので、嫌いじゃ無いんだけどなぁ。
さて、俺は1年2ヶ月いた釧路に見切りをつけて羽田空港に降り立った。
釧路では仕事がまず無い。
一生ドカタ仕事やってるわけに行くか。おまけに冬ともなれば会社は休業状態で他の人は内地に出稼ぎ行くんだとさ。
やっぱりさ、60になるまで都会に住んだ俺は、出かける先がイオンしかない土地でなんの発見があるのか!
感動はそこにあるのか!あの人もこの人もしまむらで売ってたジーパン履いてるよって、着るものに頓着のない俺だってバック踏むよ。
部屋を借りるだけの金は貯めたよ。
探し切るまでのホテルも予約した。
ホテルと言ってもゲストハウスのようなもの。カプセルホテルのベッドに畳一畳分のスペースがあって書き物できるが、あそこに行って扉がわりのカーテンを閉めた時、気分はとても落ち込んだな。
俺は残業が長引いたので、少しでも睡眠時間を稼ごうとして家に帰らずホテルをとったという事情があるサラリーマンじゃない。
帰るところがなくてこんなところにいるんだって、そう考えたらなんだかとても惨めでさ。
よく個室ビデオや漫画喫茶を部屋がわりにして連泊してるのがいるけど、あいつらは頼もしいな。
実家はあるのかもしれないがないやつだっているだろ。
俺は睡眠時間が減ったとしても、家に帰るたちだ。
気持ちが休まらないんだよ。
2日目にはもう、鬱病になりかけてたな。閉所恐怖症かもしれない。
部屋は仕事を辞めて北海道から来たやつになんの信用があるのか貸さないよ。貸すわけがない。
先に生活保護の申請書があれば貸せる。そういうことだ。
役所の人間に無責任なアドバイスされてムカついた。
そして何より、保護の申請は船橋市民のためだから、住民票を釧路に移してるやつには手厚い対応はない。
だから、一時千葉のnpo法人の運営する宿舎に入った。ここで数十分のホテル代が浮いた。
するとどうだ。元シャープの社員寮だかホテルだかをいぬきで使ってるので
すごい豪華なんだよ。
大浴場もあって、俺にとってはラッキーだった。
しかしここ、収容人員が80人らしいが、あまり人と出くわさない。
みんなこもったきりなのか。
せっかくの大浴場も80人じゃいつも混んでんだろうなと、ドアを開けるといつも一人だよ。
みんな風呂入んないんかい!
オール個室でクローゼットありの下駄箱ありのクーラー、テレビ付き。
おまけにWi-Fiもある。
面白いことに、狭いカプセルホテルからこっちに移ると、あれだけ苦しかった胸の痛みと呼吸の苦しさからあっという間に解放された。
やっぱりすむところってだいじだよ。
会う人会う人に聞いてみたた。
外で部屋借りようとは思わないんですか。
ここが居心地いいんだってよ。
もう5年いる、4年いるって人も少なくない。
ここの家賃は9万5000円。
保護の金をもらっても20000ほどか手元に残るだけだ。昼飯でないのに大丈夫なのかって。
俺としてはまた少しここから通勤して金貯めるしかないな。。