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時間よ止まれ

2015(平成27年) 6月28日 記


なあ。またこんなところで誕生日なんて迎えてしまったよ。
 昔からこの誕生日だとか、何々記念日ってのには全くうとい俺だから、自分が何歳か間違えてた事もあったりしたけど、年取ってくると違ってくるね。
 誕生日が来るのが嫌で嫌で仕方がない。
 シャバに居たなら気にもならないのにサ。
 またひとつ、またひとつって死に近づいてる気がするんだよ。そして人生どんどん短くなっていってるのにもかかわらず、こういう場所で無駄に時を過ごすことにものすごい焦りを感じるわけなんだ。
 ああ、この先2年ちょっと。確実に死に近づきながらも全てがシャバとは無縁の空白の時になる。年だけムダに取って、浦島太郎で戻るのサ。ああ、いっそのこと、俺の体だけ何とか時が止まってくれないかな。

PS
釧路に来た時はさ、およそ3ヶ月全く仕事が見つからなかった。8月から、12月の訓練が始まるまでの間、何もすることがない。ハローワークでさえ無いことわかってんだから、職員もうるさく無い。

「まあ、のんびり行こうや」
と、まるで人ごとのようだ。
 これを東京の保護会で1日でも出かけない様子だと、仕事探してこい。ハロハローワーク行ってこいよ。
若いのに引きこもってんじゃねえよ。やる気あんのかね。なんて言われちゃうよ。
だから来た当初、職員に出掛けないでいるとヤンヤン怒られると思い、毎日カラオケ行ってたよ。
何がなんでも95以上だせるようになりたくてさ。
ところがこれがとても難しい。
 おれが東京帰るってんで、今日は皆んなが、飯とカラオケを奢ってくれた。カラオケは仲良くなった姉さんがいつもVIPなパーティルームに優先してくれる。
 いつもの姉さんに最後の別れを言ったよ。
「上手くなんなかったよ。ただの一度も95点は出せなかった」
「うまいと思うけどなぁ、すごい熱心に練習きてたもんね。娘さんと勝負するために。もう娘さんとは勝負したの」
「ああ、あれは嘘だ。毎日来る理由がないからそう言った。今度ゴトウユタカをGoogle検索してくれる。なんでおれが釧路にいたのかわかるから」
そしたらねーさん、店の階段駆け上がってきて
「ゴトーさーん、もっと早くいってくれたらよかったのに!頑張ってねー」

やっぱりあいつも俺に惚れてたんだな。


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