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展覧会まとめ

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観た展覧会の記事をまとめていきます
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トルロニア・コレクション展(ルーヴル美術館)

トルロニア・コレクション展(ルーヴル美術館)

ルーヴルでやっていたトルロニア・コレクション展についてざっくり。日本ではまず観られない水準なのはもちろん、ヨーロッパでも観られません。150年門外不出で公開してなかった特別中の特別なコレクションです。

トルロニア家は例に漏れず豪商から貴族化したタイプの一族で、フランスからイタリアに帰化しました。ナポレオン戦争の混乱期に一気に資産を拡大して、混乱期に衰亡したイタリア貴族から古代彫刻を買い漁りました

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シュルレアリスム展(ポンピドゥーセンター)

シュルレアリスム展(ポンピドゥーセンター)

 詩人のアンドレ・ブルトンが『シュルレアリスム宣言』を発表してから100年という節目に、シュルレアリスムの都パリが満を持して開催するド級の展覧会です。日本でもシュルレアリスムと関連した企画は多く、国際様式と化した美術運動ですが、その総本山の本気が見えます。

概要 作品の豪華さはもちろんですが、導入部の演出からわくわくさせるもので、日常や現実とはここから離れますよ、というテーマパーク的な演出になっ

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Paris 1874 印象派展感想(オルセー美術館)

Paris 1874 印象派展感想(オルセー美術館)

1874年の春、第一回印象派展が開かれ、新たな美術史が始まりました。それから150周年を祝うためオルセー美術館が総力を上げた、今年を代表する展覧会です。

概要いわゆる「印象派展」ではなく「第一回印象派展とは何だったのか展」であり、極度に1874年に焦点が注がれたものです。確かにモネやルノワールはそれらが始まる前から、いわゆる印象主義的な表現には至っていました。本展は彼らの画業を解き明かすというも

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キュビスム展(西美・京セラ)感想

キュビスム展(西美・京セラ)感想

筆者は東京で昨年観ていますが、この夏まで京都京セラ美術館でも展示が続いているので、回想録として書きます。ポンピドゥセンターからの作品を中心に、キュビスムの多様な展開を追うものです。

概要キュビスムの前史としてセザンヌの作品とアフリカの偶像が展示されています。「プリミティヴィスム」についてのキャプションが、今日的にアップデートされたおり、作品の単なる霊感源ではなく、植民地主義的な問題を孕んだ造形で

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空海展感想(奈良国立博物館)

空海展感想(奈良国立博物館)

空海生誕1250年記念ということで空海展。おそらくこの規模では2003の入唐1200年記念の「空海と高野山」展以来のものになると思います。仏像に焦点を当てた展覧会としては2019年の東博が最新ではありますが、空海展となると20年ぶりです。

高野山の名宝名物盛りだくさんだった祝祭的な2003年版に比べれば、「密教とは」「空海のしてきたこととは」と宗教色が強めの展示になっています。美術館だけでなく高

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雪舟伝説(※雪舟展ではない)感想 京都国立博物館

雪舟伝説(※雪舟展ではない)感想 京都国立博物館

今年の上半期を代表する日本美術の展覧会です。企画が発表された時点で話題沸騰でしたから、長蛇の列を心配していたのですが、平日は空いています。

本展は雪舟の芸術を観るということから少し進んで、彼の作品や作風がどのように後進に継承されて「画聖」と呼ばれたかを辿るものです。

概要気分が高まるような有名作品からスタートします。教科書でお馴染みの《秋冬山水図》《山水長巻》に《天橋立図》《慧可断臂》などなど

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「未完の始まり 未来のヴンダーカンマー展」(豊田市美術館)感想

「未完の始まり 未来のヴンダーカンマー展」(豊田市美術館)感想

豊田市美術館で開催されている、現代美術の展覧会です。毎度ワクワクさせてくれる数少ない美術館です。

これまでの展示もぜひ読んで頂きたいです。

概要ヴンダーカンマーとは「脅威の部屋」と訳される、世界中の珍品が集められた部屋のことを指します。特に15〜18世紀にかけて貴族たちが鉱物や貝殻といったものをコレクションし、見せ合っていました。

18世紀に博物学が成熟して、謎のままごちゃ混ぜになっていたも

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ウスター美術館蔵・印象派展 感想

ウスター美術館蔵・印象派展 感想

東京都美術館で開催されている印象派展。ウスター美術館はアメリカ・ボストンから西に進んだところにある、アメリカでも最初期に印象派の絵画を集めていた施設です。

印象派展は山ほど開催されてきましたが、今回はかなり異色の内容だったと思います。モネが2点しかない、ということもありますが、主眼が「印象はどのように国際的な様式として普及したか」というものでした。

概要前半部でコローからモネ・ルノワールなどが

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本阿弥光悦の大宇宙 感想(東京国立博物館)

本阿弥光悦の大宇宙 感想(東京国立博物館)

3月10日まで開催しております。この展覧会は江戸時代初頭に活躍した文化人、本阿弥光悦の業績を総覧できるものです。日本史の教科書に載っている作品もあります。

概要本阿弥光悦とはどのような人間か、いかにして多彩で精力的な創作が可能だったのかを考えるために、本展では①本阿弥家とその周り②法華信仰のふたつの軸を用意し、そのレールによって展覧会は進んでいきます。

序盤は文書から家業の刀剣、日蓮宗との関り

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やまと絵展感想(東京国立博物館)

やまと絵展感想(東京国立博物館)

展示物の国宝や重要文化財率に関していえば、今年最も凄いものでした。以下に書くことはこのブログの内容と重なるところがあるので、目を通してください。読み物としても普通に面白いので。

概要教科書に出てくる作品のオンパレードでした。私は三つに分かれているなかでの最後、後期展示?に行きましたが、カタログだけ見ても凄い作品ばかりです。

その他《源氏物語絵巻》や《伴大納言絵巻》なども前期には出ていたので、全

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フランク・ロイド・ライト展感想(豊田市美術館)

フランク・ロイド・ライト展感想(豊田市美術館)

誰もが知るアメリカ建築の巨匠の回顧展が行われています。26年ぶりとのこと。愛知県のあとは、東京と青森に巡回します。

概要この概要通り、ライトの足跡と思想を辿る世界旅行へ行くことになります。

ライトは駆け出しの頃から浮世絵の蒐集家として有名で、特に広重を熱心に集めていました。シカゴの浮世絵通たちの間では非常に有名であり、ライトの日本文化受容のほどが窺えます。

序盤は浮世絵とライト初期作品の図面

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長沢芦雪展感想(中之島美術館)

長沢芦雪展感想(中之島美術館)

大阪・中之島美術館で開催中の展覧会で、九州国立博物館にも巡回するものです。大阪では初の回顧展で、高い注目を集めていました。私が見たのは前期日程です。後期も行こうかなと思えるくらいの水準ではありました。

概要18世紀後半の京都で活躍した長沢芦雪はまず、写生画の大家である円山応挙に弟子入りします。展覧会はそこから始まり、芦雪の若い頃の作品と応挙の作品が、類似主題のものが並列されて展示されており、師弟

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デイヴィッド・ホックニー展感想(東京都現代美術館)

デイヴィッド・ホックニー展感想(東京都現代美術館)

画業60年越えの、誰もが認める現代絵画の巨匠の展覧会です。現代において絵を描くということはどのようなことなのかを考えるには最高の機会だと思います。絵を描く人や興味がある人はホックニーをあまり知らなくても行く価値があります。

概要1937年生まれで、ロンドンの王立美術学校を出てから、フランシス・ベーコンなど様々な画家の影響の下で絵を出品していきます。第1章は多くの画家から学んで実験している若い絵画

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聖地・南山城展の感想(奈良国立博物館)

聖地・南山城展の感想(奈良国立博物館)

「なんざんじょう」と呼んでしまったことをお詫び申し上げますが「みなみやましろ」という京都南部の、奈良との境あたりにある地域における仏教文化を見ていこうという展覧会です。

ちなみに南山城という美術史的な概念は2014年に京都国立博物館の「南山城の古寺巡礼」で普及したものとのこと。割と近年ホットなところでしょうか。

国宝、浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念の特別展ということもあり、そこから2体の阿弥陀

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