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旅行記いろいろ

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ちょっとした旅行についての小文をまとめました。
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#旅行

聴覚的な旅行記述のすすめ

聴覚的な旅行記述のすすめ

詩人リルケが滞在して傑作『ドゥイノの悲歌』の霊感を得たドゥイノとはどんなところだろうと、中学生の頃から漠然と思っていましたが、いざ行くとなると大変な場所で、それなりに言語に習得して計画を立てていかないと難しい場所にありました。

イタリアの北東部の果て、ほぼスロベニアであり歴史的にはオーストリアでもあったトリエステから、バスで揺られて30分くらいかかります。イタリア的な陽気さは全くない人々が住んで

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雲の都 エディンバラ🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿

雲の都 エディンバラ🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿

この街には半年ほど生活したことがあるので、思い入れは他の都市よりあるかもしれないです。しかしあまりにも暗いので性格に悪影響が出ました。実際のところエディンバラは酒飲みが多く、そうでもないとやっていけないなと思うくらいです。

エディンバラのイメージはほぼ100%、エディンバラ城とその周辺の旧市街に限定されます。この前日本にもコレクションが来た、スコットランド・ナショナル・ギャラリーとて、城の麓にあ

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隠岐ふらり

隠岐ふらり

後鳥羽上皇や後醍醐天皇が流された由緒ある流刑地も、今では最も成功した地方創生の例として、全国の自治体から熱い視線を浴びています。歴史と自然と最新の取り組みなどで、今最もホットな離島です。

海士町へ

大阪伊丹空港から直行便が出ており、それを活用いたしました。

単純に隠岐といっても二つに分かれています。島後と島前で、島後が飛行機や島根県からのフェリーで行くことができる玄関となっています。私は今回

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ヨーク探訪🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿

ヨーク探訪🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿

ロンドンから北に2時間のところにあるヨークは、約2000年の歴史を持つイングランドの古都です。ローマ帝国の最北端、ヴァイキングの拠点、ノルマン・コンクエストで破壊されるもの開運の中心地として繁栄、大聖堂を建てて栄華の極みを達するものの、17世紀の内戦で衰退し、鉄道が敷かれて近代化という街です。

徘徊開始

歴史の色々な事象が詰まっている英国有数の古都であり、ロンドンが国際都市であるのに比べれば格

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会津若松とムッソリーニ

会津若松とムッソリーニ

福島県会津若松市に観光で立ち寄った時、まずこの城を訪れました。中は資料館になっています。やはり展示のメインは戊辰戦争の頃の会津藩についてで、敗者というよりは、忠義を尽くして勇敢に戦ったことが強調されています。教科書の官製の歴史とは違う面から書かれていて、歴史の多面性に思いを馳せました。

同行者は歴史にそこまで興味がなかったので、早急に城を降りて周りの茶室を覗いたら、飯盛山に向かいました。お目当て

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「読書感想文」旅を糧とする芸術家(2006年)

「読書感想文」旅を糧とする芸術家(2006年)

西洋美術史の巨匠たちは旅をどのように作品の進化に活かしたか、また彼らにとって旅はどのような意義があったか、についてまとめられた本。各著者の論考がまとめられている、論文集です。

目次

・美術の展開に果たした芸術家の旅行の意義
小佐野重利 (総論)
・さまよえるヤーコポ・デ・バルバリ
秋山總 (ルネサンス)
・1603年のルーベンスのスペイン行と二点の絵画
中村俊春 (バロック)
・イタリアへの旅

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ブラチスラバに死す。あるいは絶対的な遅れ

ブラチスラバに死す。あるいは絶対的な遅れ

受験生の頃の6月だったか、高校の世界史のアングルが描いた「ベルタン氏」みたいな教員が「いかにもヨーロッパ、みたいな雰囲気を味わいたい場合、フランスとかイギリス、ドイツの観光地より東欧の街の方がいいぞ」と授業中に言っていた。私はとても不真面目な生徒だったので、1年間の授業で今も覚えていることはその言葉だけだ。

しばらくしてウィーンとブダペストでその意味を知ることになるが、では「いかにもヨーロッパ」

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マーストリヒト即興

マーストリヒト即興

気が滅入る曇り空。湿った石畳。「古都」を体感するには知識が必要だと思った。縁が無さすぎたのだ。古いことは分かるがそれが身体の中に沈静することなく目から滑り落ちていく。まったく街の歴史を知らないということは、何も見えないことと同じなのかもしれない。結局のところ知識が時間を掴むのだろうか。知識が感性を左右するのだろうか、とお堅く考えるものの低気圧でダウン…。

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世界で一番ゴージャスなアートフェア⁈  TEFAFレポート 前編

世界で一番ゴージャスなアートフェア⁈ TEFAFレポート 前編

毎年3月に世界最大級のアートフェアがオランダのマーストリヒトで開かれます。TEFAFと呼ばれるそのアートフェアの特徴は古典絵画が中心だということです。日本ではほぼ知られていないようで、日本語の記事を検索しても基本情報以外は出てこないですから、TEFAFの紹介にもなればなと思います。

概要

The European Fine Arts Fairの頭文字をとってTEFAFとなっています。元は197

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