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食虫草 - 昆虫や小動物をとらえ、消化、吸収して栄養をとる植物の一群 A「彼は波止場のよう…
男はその頃深刻な不眠だった。 「まったく、どうして眠れないんだ」 口に出さなくてはやるせ…
世界は変わらないもので溢れている。粒だてられた変化も誤差に過ぎないことが多い。オゾン層に…
久方ぶりに会う友を見て、僕は自分が歳をとっていることをようやく自覚する。 代わり映えのし…
「夢で唯一出来ないことって、分かる?」 少年は首を振った。 「それは、世界をゼロから生み…
「思い出は、思ったより色褪せているものね」 彼女は小さな溜め息をついた後、遠慮がちに微笑…
あなたは運命と待ち合わせをしているの。運命は自分からしか連絡をしてこないから、あなたは待ち合わせ場所も日時も変更することが出来ない。 あなたが風邪をひいても、交通事故に合って動けなくても、運命は待ち合わせた日時にしかやってこない。電車を三本くらい遅らせても、道に迷って地球の裏側まで行ってしまっても、あなたは待ちぼうける他がない。運命の方から「やっぱり後日にしよう」と言われても、あなたは受け入れる他がない。 それは多分辛いことだ。多くの人は、運命を努めて忘れようとする。痺れ
はじめに月が爆ぜた。前触れもなく、唐突に爆ぜた。もちろん、地球にとって対岸の火事ではなく…
人生は簡単に要約できる。生まれて、生きて、死ぬ。二つの漢字で表現しきれる。たとえば、善く…
宛先のない手紙を書くことが好きだった。宛先がある手紙を書くことは、僕に沢山の杞慮を強いる…
畦道の水面は季節を映す鏡だ。僕はその道を憶えている。市境に跨がる中学校の傍道。時々通る車…
ハンプティダンプティが夢に出てきた。物憂げな表情を浮かべていて、その微笑ましい体躯に似つ…
友人は瀟洒な皮の鞄から、おもむろにピストルを取り出した。 「例えばこれを突きつけられたら…
久方ぶりの帰省も、やはり葬式と重なった。僕は帰省という行為が怖かった。僕が帰省する度に、判で押したように葬式が執り行われるからだ。僕の到着日の一日か二日前に友人や親族が死に、僕は慌てて準備をすることもなく葬式に出席した。 「たまたま、帰省と重なったんです」 しかし人は、何度も繰り返される事柄に必然性を求める。いつしか周囲の人は僕の存在を不吉がるようになった。やがて、死を予知して街へやってくる死神であると僕は噂されていた。僕はもちろん、そのような能力のようなものを持っている