預死者。
久方ぶりの帰省も、やはり葬式と重なった。僕は帰省という行為が怖かった。僕が帰省する度に、判で押したように葬式が執り行われるからだ。僕の到着日の一日か二日前に友人や親族が死に、僕は慌てて準備をすることもなく葬式に出席した。
「たまたま、帰省と重なったんです」
しかし人は、何度も繰り返される事柄に必然性を求める。いつしか周囲の人は僕の存在を不吉がるようになった。やがて、死を予知して街へやってくる死神であると僕は噂されていた。僕はもちろん、そのような能力のようなものを持っている自覚も、意図して利用しているきらいもなかった。ただ、自分自身でも、100%の偶然とは言い切れないその一致は気味が悪かった。僕は地元を遠ざけ、遠くの国に落ち着いた。ひどく寒くて、夜が訪れない国だ。でも、その身が凍えたつような土地で初めて、僕は暖かい気持ちになることができた。死神と呼ばれる部分が、厚い氷の中に収まったような安堵感だった。
久方ぶりに訪れた故郷で、これは恐らく最後の葬式だった。これまでに両親が死に、兄弟が死に、友人の一人一人が死んだ。初恋の彼女が死んでしまった時、僕は初めてそれを意図して迎えたような気がした。あるいは僕の死を預かり知る者が、そろそろ現れるのかもしれない。僕は焼香の瞬間、そのような予感の類を確かに感じ取った。