世界創造。
「夢で唯一出来ないことって、分かる?」
少年は首を振った。
「それは、世界をゼロから生み出す事よ」
明晰夢を手に入れた少年は、世界の創造を目論んだ。しかし駄目だった。どんなに石を積み上げても、精緻な設計図を引いても、世界を生み出すことは叶わなかった。夢に意識が移るその瞬間から世界はそこにあったし、破壊することもできようがなかった。
少年は自分が神になれないことを自覚し、明晰夢を利己的に使用した。しかし満たされようがなかった。何でもできる(たった一つの世界創造を除けば)ということは、何でも満たされないということと同義だ。それは壮大な徒労だった。現実の方もどんどん色あせていき、少年は荒んだ。そうして、少年は大人になった。
思うに、神様が最も人を殺している。