Complex Catenary

Complex Catenaryです。旅のこと、映画のことを話したい。note始めました。 旅にまつわる etc. 映画をたどる Something 映画をめぐる Adventure

Complex Catenary

Complex Catenaryです。旅のこと、映画のことを話したい。note始めました。 旅にまつわる etc. 映画をたどる Something 映画をめぐる Adventure

最近の記事

愛しているといった瞬間、あなたの愛は終わり、私の愛は始まる。映画「別れる決心」を見る(※ネタバレあり)。

岩山で、男の墜落死体が発見される。 出入国外国人庁の元職員で、岩山登山が趣味だった。 事故か、事件か、自殺か? 妻は、親子ほども年の離れたソンソレ。中国からの入国者である。 夫の死亡事故の容疑者として、刑事のヘジュンの取り調べを受ける。 韓国に住んで、まだ日も浅い。 言葉に慣れていないため、話に普通の使い方とは異なる単語が混じる。 「私の話を聞いて、泣いてくれた“単一“の韓国人だった」と表現する。 フレーズのなかの異質な単語に、刑事は違和感を覚える。 問い質し、やり取りを交

    • まるで夢みたい、すべて現実味がない。映画「迫りくる嵐」を見る(※ネタバレあり)。

      2017年公開の中国映画である。同年の東京国際映画祭において、最優秀男優賞と最優秀芸術貢献賞を獲得した。主演男優は、ドアン・イーホン。監督はドン・ユエ。長編映画として初の監督作品となるという。   最初、話の流れがなかなか理解できない。 白髪交じりの男が、刑務所の出所手続きをしている。身分証明書の発行は来週となること、入手するまで市域を出てはいけないこと、20元の手数料がかかること、などを告げられる。 レンガ塀に沿った通りを歩く。天気は晴れ。振り返ると、誰かがサイドカー付

      • 「わしは賊ら、十一人目のな。」映画「十一人の賊軍」を見る(※ネタバレあり)。

        1.はじめに 監督が白石和彌である。若松孝二に師事し、腕を磨いた。 その後、キャリアを積上げてきた。 白石作品で、大きな外れはないだろう。むしろ期待して観る。   映画は155分間、最初からラストまで、緩みを見せることはない。 高いテンションを保ったまま、ストーリーは一気に進む。 冒頭、山田孝之演じる政が、必死に駆ける。その姿を追いかけるカメラ。 そこから始まって、ラストまで、一直線に走り抜ける疾走感がたまらない。 多少の脱調、ご都合主義、つじつま合わせがあったとしても、

        • わずかに微笑んでいるかのように見えた。映画「薄氷の殺人」を見る(※ネタバレあり)。

          1.天然氷の採取 先日「国境ナイトクルージング」を見た。冒頭、舞台となった延吉の天然氷の切り出し風景が描かれる。池に張った氷の縁に立ち、のこぎりで一定の大きさに切り取る。水の中を移動させ、コンベアで引き上げる。足元を切り、後退していくので、作業者は池に落ちる危険がある。そのため体にロープを巻き、その端を後ろに立つ別の作業員に握らせ、万一に備える。寒冷地だからこそできる天然氷の製造方法である。 そして同じ中国北部を舞台とした、サスペンス映画を思い出した。   英語のタイトルが

        • 愛しているといった瞬間、あなたの愛は終わり、私の愛は始まる。映画「別れる決心」を見る(※ネタバレあり)。

        • まるで夢みたい、すべて現実味がない。映画「迫りくる嵐」を見る(※ネタバレあり)。

        • 「わしは賊ら、十一人目のな。」映画「十一人の賊軍」を見る(※ネタバレあり)。

        • わずかに微笑んでいるかのように見えた。映画「薄氷の殺人」を見る(※ネタバレあり)。

          フィクションのフレームがゆらぎを見せるとき。「ベイビーわるきゅーれ ワンダフルデイズ」を見る(※ネタバレあり)。

          1.そもそも 評価が高いのは、1作目から知っている。配信になって初めて見た。かさにかかったコンビニ店長と、バイトに応募した若い女性の要領を得ないやりとり。これがずっと続くのかと思ったのだが、急転直下の展開。さらにバックヤードから店内に舞台を移し、格闘シーンが続く。 2.格闘シーンの身体性 相手の攻撃をかわし、あるいはかわしきれずに受け、今度はこちらの攻撃に。攻撃は防御に転じ、防御はまた攻撃に転ずる。時にはフェイント。流れるように身をひるがえし、自分のターンと相手のターン

          フィクションのフレームがゆらぎを見せるとき。「ベイビーわるきゅーれ ワンダフルデイズ」を見る(※ネタバレあり)。

          「ツァイツェン」は「再見」と書くけれど。映画「青春×2 君へと続く道」を見る(※ネタバレあり)。

          はじめに この映画のエグゼクティブプロデューサーとして、張震(チャンチェン)の名がクレジットされている。映画「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」で主人公の中学生、小四(シャオスー)を演じた俳優である。 原作となったのは、台湾の人のブログ、実話である。張震は読んで、これを映画にしたいと10年もの間、企画を温めてきた。念願かなって今回のスタッフと出会い、新たな映画を生み出した。 ストーリー 台南の高校生、主人公のジミーは、台北の大学に進学する。大学で知り合った友人と2人で

          「ツァイツェン」は「再見」と書くけれど。映画「青春×2 君へと続く道」を見る(※ネタバレあり)。

          記憶すること、語り継ぐことの大切さ。映画「返校 言葉が消えた日」を見る。(※ネタバレあり)

          はじめに 「返校 言葉が消えた日」は台湾の白色テロ時代を描いた作品だ。戒厳令(1949~87年)のもと、言論の自由が厳しく制限され、相互監視と密告が奨励され、多くの人が政治犯として、投獄、処刑された。白色テロとは、このような政治弾圧を指す。とてもつらい映画である。ホラーの体裁をとった、社会派サスペンスといえる。 1.    発端 教官が監視するなか登校する翠華高校の生徒たち。一人の生徒が呼び止められ、カバンのなかを見せるよう求められる。だがもう一人の生徒、ウェイジョンテ

          記憶すること、語り継ぐことの大切さ。映画「返校 言葉が消えた日」を見る。(※ネタバレあり)

          リメイク版から先に見るとオリジナル版の巧みさが光る。映画「一秒先の彼女」を見る。(※ネタバレあり)

          オリジナル版は、2020年の台湾映画である。2021年、日本での公開を見逃したので、2023年公開のリメイク版から見ることに。 1.リメイク版を先に見る リメイク版であると知っている。 オリジナル版とは男女の役が逆転してることも。 監督が山下敦弘、脚本がクドカン。 これはまずい。 岡田将生と清原果耶の役が逆で、 オリジナルと同じだったら、 ストーカーまがいの映画になるところだ。 これは反対が正解。 ではなぜオリジナル版は成立する? 2.ストーリー(リメイク版に基く)

          リメイク版から先に見るとオリジナル版の巧みさが光る。映画「一秒先の彼女」を見る。(※ネタバレあり)

          名前が奪われること。言葉を押し付けられること。映画「流麻溝十五号」を見る。

          名前を奪われる   名前が奪われる。 「千と千尋の神隠し」では、 千尋という名が奪われ、千として働かされる。 ハクは名前だけでなく記憶も失っていた。 それまでの自分が消滅し、管理されやすく変えられること。 心理的にも束縛されること。 ファンタジーであるがゆえにシンボリックだ。   「流麻溝十五号」を見た。つらい映画である。 1953年、台湾の白書テロ時代の実話に基づいた物語である。 孤島に設けられた、政治犯収容所である新生訓導所。 そこに収監される少女、女性、少年たちの物語

          名前が奪われること。言葉を押し付けられること。映画「流麻溝十五号」を見る。

          「世界で2番目に美しい駅」に行く

          2番目とは 「世界で2番目に美しい」と形容される駅がある。2番目とはどういうことか、自称なのか、気になるところである。調べてみると、2012年アメリカの旅行サイトの美しい駅ランキングで、実際に第2位に選ばれたという。こんなランキングがあること自体驚きであるが、カテゴリを微妙に変えた他の調査もあり、結果は上位常連であるようだ。 駅名は「美麗島駅」。名前からして美しさが伝わってくる。後に述べるが、名前に美しいという字が入るには、理由がある。駅の場所は高雄市。人口が台湾で3番目

          「世界で2番目に美しい駅」に行く

          「悲情城市」九份への旅(※ネタバレあり)

          瑞芳の街並み 台北市から九份に向かう路線バスは、山あいの道路を抜け、やがて市街地に入る。瑞芳(ルイファン)の街である。幹線道路だけではなく、鉄道駅もあり、交通の要衝となっている。景観になんともいえない趣があり、なぜか懐かしさを感じさせる。車窓に寂びれた街並みが続く。九份やその先にある金瓜石で金の採掘が行われていた頃、この街は鉱山会社やそこで働く人々などへ、物資を供給する拠点として発展し、これらの地域と盛衰をともにしてきた。この先また山道が続き、目的地の九份に至る。 「悲情

          「悲情城市」九份への旅(※ネタバレあり)

          「牯嶺街少年殺人事件」をめぐる冒険#3完結編「牯嶺街」(※ネタバレあり)

          これまでのあらすじ 「牯嶺街少年殺人事件」は、1991年に公開された作品である。監督のエドワードヤンは、「悲情城市」を撮ったホウシャオシェンなどとともに、1980~90年代、「台湾ニューシネマ」をけん引した作家のひとりだ。 監督の少年時代に起きた事件に題材を採った。 当時、監督はこの事件に大きな衝撃を受ける。 1960年の台北市を舞台に、建国中学校夜間部に入学した小四(シャオスー) を主人公としてストーリーが展開する。 「大人社会の不安を感じとった少年たちが、脆さを隠

          「牯嶺街少年殺人事件」をめぐる冒険#3完結編「牯嶺街」(※ネタバレあり)

          「牯嶺街少年殺人事件」をめぐる冒険#2屏東編(※ネタバレあり)

          これまでのあらすじ 「牯嶺街少年殺人事件」は、監督エドワードヤンが1991年に発表した映画である。 主人公は、建国中学校夜間部に通う小四(シャオスー)。1960年代の台北市を舞台に、彼を取り巻く幾層もの社会を描く。 ニューヨーク・タイムスは、「この映画には全てがある。」と評した。 そう、全てがある。 少年と少女がいる。 互いの思いの違いは、最後には悲劇に至る。不器用な愛の軌跡が描かれる。 不良少年たちがいる。 グループに分かれ、徒党を組み、小競り合いし、抗争する。出し

          「牯嶺街少年殺人事件」をめぐる冒険#2屏東編(※ネタバレあり)

          「牯嶺街少年殺人事件」をめぐる冒険#1台北編(※ネタバレあり)

          旅にまつわるエトセトラ 台湾を旅した。 目的のひとつは、映画「牯嶺街少年殺人事件」のロケ地を訪ねること。 いわゆる聖地巡礼ってやつだ。 4月の一日、主人公が通う建国中学校に向かう。 映画の何が、これほど人を引き付けるのか確かめたい。 MRT 中正紀念堂駅で降りて、2番出口から地上に上がると、正面には有名な金峰魯肉飯がある。ルーローハンの店で、いつも行列ができる。 右手は数年間の改修工事を経て、昨年オープンした南門市場だ。 ここから南海路をひたすら西に向かう。 「牯

          「牯嶺街少年殺人事件」をめぐる冒険#1台北編(※ネタバレあり)