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「わしは賊ら、十一人目のな。」映画「十一人の賊軍」を見る(※ネタバレあり)。

目次
1.はじめに
2.あらすじ
3.鷲尾兵士郎
4.政
5.「わしは賊ら。」
6.エンディング

1.はじめに

監督が白石和彌である。若松孝二に師事し、腕を磨いた。
その後、キャリアを積上げてきた。
白石作品で、大きな外れはないだろう。むしろ期待して観る。
 
映画は155分間、最初からラストまで、緩みを見せることはない。
高いテンションを保ったまま、ストーリーは一気に進む。
冒頭、山田孝之演じる政が、必死に駆ける。その姿を追いかけるカメラ。
そこから始まって、ラストまで、一直線に走り抜ける疾走感がたまらない。
多少の脱調、ご都合主義、つじつま合わせがあったとしても、
力づくでねじ伏せてしまう。
 

2.あらすじ


官軍と奥羽列藩同盟、どちらからも圧力を受ける小藩の新発田藩。
そのうえ藩主は少年。
奇策とも、卑怯ともいえる策略で、綱渡りのように生き残りを図る。
その中心を担うのが、阿部サダヲ演じる上代家老の溝口。
映画中でも、藩は城下を戦火から守ったことで、その功績が語られる。
 
策略とは、10人の死罪を含む罪人の部隊を編成し、官軍から峠を守ること。生き残れば無罪放免とする条件が与えられる。
 

3.鷲尾兵士郎


3人の藩士が罪人の、いわばお目付け役として、行動を共にする。
だが仲野太賀演じる、鷲尾兵士郎にだけ知らされない事実がある。
無罪放免の約束。
それは噓で、ミッションが終われば、全員口封じのために殺される。
鷲尾の助力を直々に求めたのは家老の溝口。
本当のことを伝えると、まっすぐな性格ゆえ、距絶すると考えてのことだ。



 

4.政


罪人のうち誰か一人でも逃亡すれば、皆の無罪放免が取りやめとなる。
だが政は、隙あらば、逃走しようとする。
妻を犯した藩士を殺した罪で死罪となった。武士を全く信用していない。
 

5.「わしは賊ら。」


罪人たちは藩の偽りに、憤りながら死んでいく。
藩を救う道がこれしかなかったと溝口は言う。
だが騙され、使い捨てられる10人の罪人たちには、それは関係がない。
 
藩の理不尽なふるまいに、最後には鷲尾も「わしは賊ら。十一人目のな」と大見えを切って、藩の武士の大群に挑む。
  
卑劣な策を弄して、人を死に追いやる藩の姿。
傷ついても、仲間を思い、死んでいく罪人たち。
彼らとともに戦ったが故に、乞われても藩に戻る気はない。
 
多勢に無勢、敵わぬと判っていても、一矢報いて、意地を見せる。
もはやうまく握ることも叶わぬゆえ、掌に刀を縛り付けて、戦いに挑む。
  
鷲尾の行動は、功利からではない。合理的な判断とも言えない。
だが己が心に恥ずることなく生きる。
誇りを持って生きるためなら、死をもいとわない。
 
武士の嫌いな政である。
だが、藩の武士の大群に、たった一人で立ち向かっていく鷲尾の姿。
感じるものがないはずはない。
戦いの中で生まれた感情の命ずるまま、助けたい一心で行動する。
 

6.エンディング


溝口の陣羽織に描かれた、新発田藩の家紋、五階菱、別名を溝口菱。
いわば象徴(シンボル)を切り裂く。
鷲尾は意地を見せた。
 
オープニングに登場する東映の三角マーク。
袈裟懸けに切られて映画がスタートする。
オープニングとエンディングが見事に呼応する。
映画が完結する。



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