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#シロクマ文芸部 私の作品集

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これまでの作品をまとめてみました。キラリ❇光る作品に出会えるでしょうか
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記事一覧

#シロクマ文芸部 愛猫と [春遠からじ]

#シロクマ文芸部 愛猫と [春遠からじ]

「愛猫とはこの時期でしたかね、八重子さん」
夫、朔太郎は病床から躰をおこし外を眺めた。
立春を過ぎたと言うのにみぞれ混じりの雪が舞っている。
庭に植えられた梅はまだ堅い蕾のままだ。
妻、八重子は台所から顔をのぞかせ
「えぇ、二階の物干し場に最近居るんですよ」
八重子は朔太郎に綿入れの丹前を掛けてやりながら
「鳴き声が耳に障りますか、それなら、猫寄らずでも撒きましょうか」
朔太郎は首を振り
「いや、

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#シロクマ文芸部 寒い日に 短歌

#シロクマ文芸部 寒い日に 短歌

寒い日に寄せて 短歌らしきもの

抱きしめてあげれば良かった雪うさぎ
赤い実残し逃げちゃった

抱きしめてあげれば良かった雪うさぎ
赤い実残し逃げちゃった
(著と刺さった方の俳句)に7・7を付けてみました。

陽だまりの顔のぞかせておかえりと凍えた躰も溶けてゆく

寒い日は温かい言葉が嬉しいもの
家に帰れば楽しい我が家
「あなたぁ~ん、ごはんにする?それともわ、た、し?」
主人…、
「すみません、

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#シロクマ文芸部 シベリアに星が降る

#シロクマ文芸部 シベリアに星が降る

星が降るシベリアの凍土からマンモスがやって来る。地球温暖化の影響で凍土融解して、四百万年前のウーリーマンモスが福岡市科学館に展示されたのは、今から5年前の冬だった。いきなり目の前に現れた等身大のマンモスは
迫力満点

腐る前に凍り、閉じ込められられることでミイラ化している。東ロシアのサハ共和国の首都ヤクーツクは温暖化で永久凍土から大量の象牙が出土し売買されていると聞く。地球の成り立ちや生物を目の当

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#シロクマ文芸部 雪が降る 幻ホテル

#シロクマ文芸部 雪が降る 幻ホテル

雪が降る、ホテルの一室でカアテンを閉めベットに身を沈め、二、三時間 目をつぶって、疲労の果てを待つ、疲労の底に引き込まれ、頭が痺れてくるところから幻が浮かび、心のままに雪が舞うのである。
川端康成の掌(てのひら)の小説の中に、雪と言う掌編小説がある。都内のとあるホテルを自ら、幻ホテルと呼び正月の三が日をホテルの一室で過ごすのである。
ベットに横たわり瞼を閉じれば雪の舞う原野や幻想的な世界へと自由に

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#シロクマ文芸部 夢をみる 望郷

#シロクマ文芸部 夢をみる 望郷

夢をみる、外はしんしん寒いよる
合掌づくりの黒々と、ちろちろ燃ゆるいろり端、父の懐いだかれて、昔がたりの花が咲く
母はいろりのそばにいて、針をつかひて
吾のため、春着るべべをぬふ
顔に囲炉裏の赤々と、まつげに黒き影落とす
雪はさらさら音もなく、ときおり雪の落ちる音
吾は父の懐で、とおい異国の旅にでる
父まだ若くして、腕の太さよ丸太木の            固くて温いしなやかさ
母の乳房の柔らかく

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#シロクマ文芸部 初めての客

#シロクマ文芸部 初めての客

初めての客だと貴美子は挨拶を交わして感じた。海の見える海岸沿いの小さなBarには似合わない垢抜けた青年であった。カウンターに座り見慣れない名前のボトルを目で追いながら何も言い出せず、少し間が空いた。
「お客さん、日本のウイスキーもありますからお好きな銘柄おしゃてください」
青年は顎に手を乗せ指で顔を弾きながら「じゃあラフロイグ、ロックで」
貴美子は少し驚いた顔でスコッチウイスキーのシングルモルトの

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#シロクマ文芸部 冬の夜 ペチカで夜話

#シロクマ文芸部 冬の夜 ペチカで夜話

冬の夜から始まる物語、始まり、始まり。
今日は朝からちらちらと雪が舞い、夜になるとさらさらと音もなく雪が降り積もってきました。そんな夜はペチカのまわりに集まってばあばのお話し聞いてみない。
ちいちゃんや翔太のパパがまだ子どもだったころのお話しよ。
毎週日曜日の夕方から世界名作劇場と言うアニメーションがあってね、ばあばもパパも大ファンだったの。その中で一番可哀想なお話しても良いかな、パパもばあばも泣

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#シロクマ文芸部  マフラーに愛を込めて

#シロクマ文芸部  マフラーに愛を込めて

マフラ-について私の黒歴史をお話しします。(笑ってやって下さい💦)
のどかな田舎で育った私は小学校は1年生から卒業するまで、女子二十四人男子十二人の一クラス、まるで兄妹のように天真爛漫な学校生活でした。
男の子の股ぐらに頭を突っ込んで馬跳び、毛糸のおパンツにスカートを差し込んでゴム跳び、木登り、ドロケイ男女入り乱れて腕白な日々を送っていた。
小学校にも終わりを告げ、家から三キロ離れた中学校に自転

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#シロクマ文芸部 十二月 掛け取り(江戸小話)

#シロクマ文芸部 十二月 掛け取り(江戸小話)

十二月と言えば 師走
江戸の師走は今とはちょいと様子が違ったようですな
小雪がちらつく年の暮れ
どぶ板長屋の米吉夫婦は灯りもつけない部屋で頭付き合わせて何やらひそひそ話
「あんた もうすぐ大家が掛け取りに来るよ 半年分の家賃どうすんのさ」
「ねぇものはねぇーんだからしょーがねぇじやないか」
「お前さんがこの金倍にしてくるからって博打なんかに手ぇ出してあげくにすっからかん 情けないたらありゃしない、

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[#シロクマ文芸部]働いて (働く、歯車になれ)

[#シロクマ文芸部]働いて (働く、歯車になれ)

「働いてみようかな」
僕は 炊事をしている母の背中越しに
ぼそりとつぶやいた。
母は 皿洗いの手を止めて
こちらへ振り返った。
「マナト今なんて言ったの、 働くって言わなかった?」
マナトは慌てて階段を昇りながら
「とりあえず明日からだから 色々聞かないで欲しい」
僕は部屋のドアをバタリと閉めた。
「言えた、」僕はゴクリとつばを飲み込んだ。

僕の人生は中高一貫校 大学 大学院 上級公務員それまで

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#毎週ショートショートnote 風を治す薬

#毎週ショートショートnote 風を治す薬

今年の夏は… クッソ暑かった!
co2削減に務めましょう
待機電力削減
シャーワーは短く
エコバッグを持ちましょう

そんなちっぽけな取り組みじゃあ
この灼熱地獄止まらないって!

今年の偏西風の蛇行見たかよ!
地球を取り巻く風が異常な動きをしてたじゃないか
いや 異常が異常ではなくなる日は既に来ている
じゃあ 毎年あのクッソ暑い夏がマックス焼けクッソ暑い夏になっちまうんですか?
なんとか特効薬は

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#シロクマ文芸部 霧の朝 [やがて霧は晴れ]

#シロクマ文芸部 霧の朝 [やがて霧は晴れ]

霧の朝 私は母を探して庭に飛び出していた。

「かあさん どこにいるの いたら返事して」
私は泣きながら父にしがみついた。
「かあさんがいないの かあさんが」
父は暗く闇を見るような眼で私を見下ろして言った。
「母さんはもう居ない 明け方出て行った」
九つの私にはそれがどういう事か分からなかった。
「かあさん もういない、いない」と頭の中で繰り返すばかりであった。
その朝はいつもより霧が深く町は白

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#シロクマ文芸部 秋と本 『古本と呼ばないで』

#シロクマ文芸部 秋と本 『古本と呼ばないで』

秋と本を探しに 無印良品に向かった。
店内に入った瞬間クロモジのアロマの香りに癒され 天然素材やシンプルなデザインに触れてこれを買いにという目的がなくてもつい足を運びたくなる。
店内の中央に設けられた本棚には絵本や文庫本少し前に話題になった単行本などが品良くセレクトされて本を手にひと息入れたい空間がある。100円のドリンクを買って中庭に設けられた木のベンチに座って読むもよし 子供に読み聞かせをして

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#毎週ショートショートnote それでも地球は曲がってる?

#毎週ショートショートnote それでも地球は曲がってる?

女御 更衣あまた打ち揃いし中で
光る君のたもうた 「天地は 曲がっておる」
それを聞いた あまたの者 皆袖で口を隠し「光る君 御乱心」と噂した
とうとう 安倍晴明の耳にも入り
天をも怖れない不吉な予言となし
その夜 祈祷が始まった
奇しくもその夜は月食の日に当たり
見るみる月は欠けてゆき 辺りは暗闇とかした
晴明 天が怒りをあらわにしたと思い込み 悶絶して意識を失った(ドラマでも 悶絶)『なんのこ

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