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#シロクマ文芸部 夢をみる 望郷

夢をみる、外はしんしん寒いよる
合掌づくりの黒々と、ちろちろ燃ゆるいろり端、父の懐いだかれて、昔がたりの花が咲く
母はいろりのそばにいて、針をつかひて
吾のため、春着るべべをぬふ
顔に囲炉裏の赤々と、まつげに黒き影落とす
雪はさらさら音もなく、ときおり雪の落ちる音
吾は父の懐で、とおい異国の旅にでる
父まだ若くして、腕の太さよ丸太木の            固くて温いしなやかさ
母の乳房の柔らかく、かかる息さえ恋しかり
時流れ、父母逝きし山の底
もの言わぬ石となりました

あぁ吾は今とうきょうの、狭き空を仰ぎ見る
どこに流れてゆくのやら 
どこに押されてゆくのやら

つり革に体つかまりて、ゆられゆられて行く先に、あぁ誰ぞ知る
我が故郷
朽ち果てた廃屋にも
まだ枇杷の実はなるかしらん

そっと瞼を閉じぬれば、目尻に涙のひかりおり

あぁ

どこに流れてゆくのやら
どこに押されてゆくのやら

瞼閉じれば、在りし日の炭火ゆらゆら夢の中

#シロクマ文芸部
#夢をみる
今回は抒情的詩歌に挑戦してみました😊

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