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#シロクマ文芸部 秋と本 『古本と呼ばないで』
秋と本を探しに 無印良品に向かった。
店内に入った瞬間クロモジのアロマの香りに癒され 天然素材やシンプルなデザインに触れてこれを買いにという目的がなくてもつい足を運びたくなる。
店内の中央に設けられた本棚には絵本や文庫本少し前に話題になった単行本などが品良くセレクトされて本を手にひと息入れたい空間がある。100円のドリンクを買って中庭に設けられた木のベンチに座って読むもよし 子供に読み聞かせをしている親子もいる。とても緩い時間が流れていた。私が手にしたのは 久世光彦さんの『桃』、少し立ち読みすると 知らない言葉が溢れていて「こんな濃密で妖艶な
文章ついぞ味わったことがないぞ」
と購入を決めた。価格は三百円、本の中に差し込まれた MUJI BOOKSのメッセージに心打たれた。
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本をたすけること
本とくらすこと
わたしは ちょぴり涙ぐみそうになった。このnoteの中で 作家を志し涙ぐましい一つ一つの工程を乗り越えやっと一冊の製本が出来上がる喜びは格別のことであろう。それを思うと直さらである。
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「古紙になるはずだった本」
本が本として生きる
古紙回収に回る本 一日2万冊その内の一万冊を次の読み手につなぐプロジェクト
今の時代に合っていると思う。
大量に吐き出される出版物 一ページも開かれないまま 古紙へと送られる本のなんと多いことか 作者の血の滲むような努力が一瞬に消えてなくなる無念さ
「この本を読んでもう少し生きてみたくなりました」
「最高に面白かったです。次もまた読みたいです」
「子供が寝る前に必ず読んでとせがまれます」
なんて読者から葉書が来たら飛び上がるほど嬉しいに違いない。
筆者の思いの詰まった本が古紙回収に回されず一人でも多くの人に読まれ感動を与えられたら それは凄く意味のあることだ。
私は 思う。
本という大海を縦横無尽に泳ぎ 時には溺れそうになり 時には小島で憩いあらゆる冒険のすえにたどり着いた場所 自分はここにいて良いんだと思える たった一冊の本に巡り会うために
本を読みつづけるのではないのかと、
そんなきっかけを与えてくれる無印良品の取り組みに拍手を送りたい。
読み終えた本を回収するドラムカンが大きな口を開けて待っている。
先のことまで考えている
こんな考えの会社が増えてくれたら
使い捨て時代の終焉に近づけるのにと思う。
秋の夜長 心に小さな灯りを点す
最良の本に巡り会えますように。
了