雨の日の美術館Ⅶ
「雨の日の美術館」は、2017年のレールガン開発の顛末(サドガシマ作戦の4、5年前)を書いたものですが、なぜか、日本人男女のお付き合いという脱線になってます。
エレーナ少佐のサドガシマ作戦、時系列 R1
マガジン『エレーナ少佐のサドガシマ作戦』
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雨の日の美術館Ⅶ
2017年9月のある日、智子
★ 真人と智子
真人が初めてガールズバーに行ったのは会社の飲み会だった。渋谷のハチ公から5分ほど歩いたところにあった。社の2年先輩の行きつけのバーで、同僚二人、四人で行った。彼はガールズバーは行ったことがなく、どんな店なのかというイメージがなかった。酒の飲めるメイド喫茶みたいなもので、キャパクラみたいに金を使わないのだろうと思っていた。先輩は「予算は一人3時間ぐらいいて延長含めて飲み放題で1万2千円くらいだよ」と言っている。
店に入るとカジュアルなダイニングバーといった趣だ。バックバーにはウィスキーやブランデー、リキュール類が並び、ワインセラーにはかなりの数のワインがあった。カウンター席は十数名座れそうだ。フロアにテーブル席が8つほどあった。真人はカウンターバーみたいだなと思った。違うのはカウンターの中に蝶ネクタイ姿のバーテンがいないこと。
そこに6人ほど並んでサービスしているのは、カジュアルな服装をしている女の子たち。おヘソをチラ見せしているセクシーTシャツを着た子もいた。制服はないんだな、と真人は思った。彼女らは胸元にネームカードを安全ピンで留めている。店の外でも呼び込みをしているのでガールズはもっといるんだろう。
システムは飲み放題、1時間がメイン。料金は4,000円。ビール、サワー、カクテル、ブランデー、ウィスキーが無料。一部有料ドリンクだった。延長30分で2,000円。ガールズへのスタッフドリンク1,000円。キャパクラよりもリーズナブルな値段だなと真人は思う。
先輩は「カウンターでいいんじゃね?」と言って真人たち四人はカウンター席に座る。フロアのテーブル席にはサラリーマンとOLと思しき4人グループやリーマンのグループがいて半分くらいがうまっている。結構繁盛しているんだな、と真人は思った。
先輩の正面に来た茶髪の女の子が「隆史さん、いらっしゃいませ。1週間ぶりですね」と声をかけていた。おなじみさんの女の子のようだ。真人の席の前にも女の子が付いた。おしぼりを渡された。「外は寒いでしょう?おしぼりをどうぞ。名前は愛です。ラブ」とニッコリ笑いかけてくる。
彼女はボートネックの橙色のサマーニットのプルオーバーに白のピッチリしたミニスカート姿。長袖を肘のちょっと下までまくりあげている。襟ぐりの広い服から濃紺のブラのストラップが見えた。サイズが大きいのか、時々ずり下がってくるのを直している。そのたびに、彼女の鎖骨の下くらいまで見えてしまう。身長は160以上かな?と思った。真人は背の高い女の子が好みだ。
横で先輩が女の子に「ドリンク飲む?」と聞いていた。なるほど。女の子にドリンクを飲ませてチップ代わりなんだな?と思った。先輩の女の子は「じゃ、私、ジントニック頂きます」と言っている。
真人も愛ちゃんに「俺はウィスキーの水割りをお願いします。キミはなにか飲む?」と聞いてみた。「ありがとうございます。私も同じもので。スコッチ?バーボン?ジャパニーズ?」と聞かれたのでバーボンと答える。愛ちゃんはタンブラーグラスを2個カウンターに置き、ジェックダニエルをカクテルメジャーでキチンと計った。真人にはダブル。彼女はシングル。
乾杯しながら彼女のプロフを聞く。パーサーだという。「パーサー?」「ええ、新幹線のサービス係。売り子です。でも、パーサーと言うと感じがいいでしょ?一応、シニアマネージャーなんだけど・・・」「そのパーサーが夜のバイト?」「そう。お給料が安いの。だから副業をしないと食べていけないの」「一人暮らしなの?」「いいえ、同僚と同居。東京駅の近くのJR駅のそば。一人暮らししたら破産してしまいます」「なるほどなあ。みんな生活が苦しいんだな。ああ、ゴメン。俺は真人。真実の人って書いてマコト」「これからもよろしくお願いしますね、マコトさん」
パーサーという接客業が本職なのか、彼女は客あしらいがうまく、飲ませるのも上手だった。いつの間にか真人は4杯、バーボンの水割りをお代わりしていた。彼女は真人にドリンクをねだらなかったが、ペースを合わせてご馳走した。これで4千円。彼女の取り分はいくらなんだろう?と真人は思う。
愛ちゃんは、ショートの黒髪。色白だ。飲むほどに肌がピンクに染まって色っぽい。首が細く鎖骨が浮いているのがいい。胸は大きい方だが垂れるほどじゃない。鼻筋が通っていて可愛い。
愛ちゃんは酔いが回るにつれて、饒舌になった。「結婚したいんですよね、もうアラサーになったの。そういうトシなのかなぁ?」
「25を越えると急に一人の淋しさが増しますよね。俺もアラサー。27になった。愛ちゃんとちょうど釣り合う年齢かな?」
「へへへ。私、マコトさんのストライクゾーン?年齢はね」と舌をぺろっと出した。コケティッシュだ。真人はちょっとドキドキする。「確かに淋しさは増しますね。それは思います。夜中とか」
「同僚の人と同居してるんでしょ?」
「同僚って女性だもの。パーサーの職場は女性ばかりで出会いがないんです。同居はしてるけど、でも夜中に目が覚めると、一人寝が寂しいんです」
「こういうガールズバーで出会いなんてあるの?」
「通ってくれる方はおられます。告白めいたものを言われるお客様も。やんわりとですけど。でも、告白を断ることで気まずい思いをしてしまうでしょ?来店してくれなくなったり。だから、今は誰とも付き合いたくないんです、と言いますよ」
「ふ~ん」
「でも、お相手も遊び慣れてるからか、それでもいいよ!愛ちゃんのこと応援する!と、返されました」
「へぇ~、俺も通っちゃおうかな?」
「マコトさん、是非是非!」
ここで、俺たちグループの背後から声がした。振り返るとベストと蝶ネクタイ姿の店員。「そろそろお時間です。よろしければ初めての方、女の子と連絡先を交換しませんか?」と言う。
店員が真人にメモ用紙とボールペンを差し出した。
「えっ、はぁ」
突然の出来事に真人は戸惑った。連絡先なんて交換する?普通ならマゴつく連絡先交換だが愛ちゃんが、
「せっかくだから交換しましょうか」とアッサリ言う。
「そうですね」こうも簡単に電話番号が聞けるとはと真人は思う。
「愛ちゃん、これ普通?俺、このお店初めてだよ?」
「ほとんど電話番号を明かすのを断るケースはありませんよぉ。全員が交換に応じます。ほら、マコトさんのお連れさんもそうでしょ?私もマコトさんに営業の電話をかけたりしません。まあ、気が向いたら、夜、寂しかったら電話してみてくださいね」
店員に聞いてみた。「他のガールズバーでもこういうシステムがあるんですか?」
「ウチはできるだけ多くの方が女の子と知り合っていただきたいのでこういうシステムにしました。もちろんお客様が電話番号を教える、教えないはご自由です。女の子も同じです。それで、おせっかいかもしれませんが、奥手な方も多いので、こうして出会いのお手伝いをさせていただいてます」
「ふ~ん、確かに自分から女の子に電話番号を聞くのって臆するもんなあ」と真人はメモ用紙に氏名とスマホ番号を書いて愛ちゃんに渡した。
「これ、私のカードです。ウフフ」と中央が空白になっていて、そこに彼女の手書きのイラスト、名前、電話番号が書いてある店の名刺を真人に渡した。内緒で番号を交換するイヤラシさがない。大ぴらでサッパリしている。真人は気に入った。もちろん、愛ちゃんも。話していて楽しい。
先輩がトイレに立った。真人も尿意を覚えて愛ちゃんに断って先輩のあとに続いた。隣り合った小便器で用を足していると、
「真人、いい子に当たったな」と言う。
「そうですね。色白で背もほどほど。美人だし、俺の好みですよ」と答えた。
「それはラッキー。あのな、真人、彼女、売りもするんだぜ」
「ちょっと。まさか。冗談でしょ?あんな清楚な子が?」
「清楚っぽいのと中身は違う。この店の半数の子は売りをする」
「ええ?!先輩の相手の子も?」
「ああ」
「先輩、既婚者でしょ?」
「単身赴任で溜まったら出すのは仕方ないぜ。恋愛しているわけじゃない」
「そうなんですか・・・意外だったな・・・」
「確か、彼女は大井町に住んでいると思った」
「先輩、彼女と?」
「してねえよ。浮気したら俺の女にバレて大事だ。この店は相手が決まったら変えないのが暗黙のルールだよ。彼女のことは他のお客に聞いたんだよ。確か終電が00:10分だから、11:40分ぐらいで彼女はオフ。スマホでLINEして聞いて見ろよ。それで外で待っていて、彼女が出てきて、彼女がお前を気に入ったら、最初はグズるけど『終電心配しなくてもいいから・・・』って言えばついてくる。ただし、あの子はラブホはダメだぞ。シティーホテルじゃないとダメだ。シティーホテルなら朝まで付き合ってくれる。諭吉2枚が相場だ。これ、タクシー代とか言って渡すんだ。売春じゃないんだから。もちろんお前次第だけどな。先に抜けてもいいぜ。払いは明日でいいから」いや、それって売春だろ?と真人は思う。でも、高校生ってわけじゃないし・・・。
「でも、連れの二人が・・・」
「さっき、小便した時、同じことを教えておいた。あいつらの相手の家は渋谷近辺なんで12時過ぎても大丈夫なんだよ」
「いいのかな?初めて会ったのに?」
「愛ちゃんがOKならいいんじゃないのか?自由恋愛だぜ」
席に戻った。真人はカウンターの下でさっきもらった愛ちゃんの番号に「仕事が終わったら予定あるの?ちょっと飲まない?」とメッセした。正面の愛ちゃんがポケットのスマホを取り出す。マナーモードで振動で気づいたようだ。「マコトさん、ちょっとゴメンね?」と言ってカウンターの奥のドアから控室みたいなところに引っ込んだ。
真人のスマホが振動する。愛ちゃんからだ。「でも、終電があるの」とレスしてきた。断るつもりならもっとハッキリと書くだろうな?と真人は思った。先輩に教えられた通り「終電心配しなくてもいいから・・・」とレスする。「う~ん、11:50に外で待っていて」とあった。どうかな?OKなんだろうか?脈はありそうだ。「了解」と返した。
11:40になって愛ちゃんが「あら、もう時間になっちゃった」と腕時計を見た。「マコトさん、みなさん、私オフの時間になりましたので、これで失礼いたします」と丁寧にお辞儀をする。さすがにパーサーだもんな、キレイなお辞儀だ、と真人は思った。愛ちゃんが控室に消えて、真人も「先輩、俺も時間なんで。失礼していいですか?」と聞く。「ああ、もう遅いからな。払いは明日だ。じゃあな」と真人を追い払う仕草をした。
11:40に店の外の電柱で待っていると愛ちゃんが店の横の路地からでてきた。雨が降ってきて真人はバックから折り畳み傘を出した。
愛は真人の傘の下に駆け寄る。「マコトさん、お待たせしました」
「愛ちゃん、オフなのにゴメンね。飲み直さない?駅前のエクセルホテル東急のバーなんかどうだろう?」と真人はホテルのバーなら部屋にすぐ行けて手間はかからないはず、と思って愛ちゃんに提案してみた。確か、エクセルホテル東急のバーは25階だから雰囲気もいいはずだ。スマホの検索では空き部屋はあるようだ。
「え~、でもマコトさん、愛の終電がね、00:10なのよ。もうギリギリ」
「ええ?じゃあ、バーで飲んでちょっと食べて、そのままホテルに泊まっちゃえば?」と軽い感じで誘ってみる。
「どうしよっかなあ~・・・でも、愛、マコトさん、タイプだから、付き合っちゃおうかなあ・・・」
「そうだよ。こうしている間にも終電に遅れちゃうよ」
「わかりました。愛で良かったらお付き合いさせていただきます」
「俺は愛ちゃんがいいんだよ。じゃあ、行こう。タクシーは・・・」
「エクセルホテル、歩いてすぐでしょう?歩きましょうよ」
愛ちゃんは真人の腕をとって胸をおしつけた。マコトさんの先輩の会社なら安心だものね、いい会社だし。ラブホなんて使わない。エクセルホテルのバーは好きなんだ。1、2杯飲んだら部屋に誘ってくれるのかしら?飲み過ぎたらできないもんね?と智子は思った。もう男とは10日間してない。優子としたのが5日前。ちょっとしたかったのよね、マコトさん、良さそうだし。匂いもいいわね。あ!いけない!優子だ!
「マコトさん、ゴメン、同僚に今日は帰らないって連絡する」と腕をほどいてハンドバックからスマホを取り出す。真人が「離れていようか?」と傘を渡そうとする。「別に聞かれて困ることでもないです」と真人の横を歩きながら優子に電話をした。
「もしもし、優子?智子だよ。あの終電に乗り遅れそうだから友達の家に今晩は泊まるね」
「智子ぉ~、夕飯作っちゃったよ。あなたの好物の筑前煮、ひじきと大豆の煮物、鯵の干物・・・」
「ゴメン、ゴメン。明後日食べるから」
「しょうがないなあ。智子、明日は新大阪便の朝勤だからね。遅刻しちゃダメだよ。この前みたいに目の下にくまをつくって顔面蒼白はダメよ。お局様に何を言われるのかわかんないんだから」
「ハイ、気をつけます!」
「夜遅いんだから、気をつけるのよ」
「ハイ、了解です!夕食、ゴメン。今度ご飯奢るからさ」
「わかったわ。じゃあ、私、もう寝るから。何かあったら電話するのよ!」
「ハイ、わかりました!お休みなさい」
「お休み」
真人が「智子?」と愛に聞く。「うん、私の本名。小林智子」「愛ちゃんよりも親近感がわく」「あら、智子なんて月並みな名前よ?」「そういうのがいいんだ。愛ちゃんなんてタレント名みたいでさ」
「ねえ、智子さん?」
「智子でいいです。私も真人と呼んでいい?」
「真人でいい。じゃあ、智子、同僚って年上の人なの?謝ってたけど?聞こえてしまって・・・」
「優子は同い年。同じ25才。でも、しっかりしていて、私に対してお母さんのように振る舞うのよ。でも、ありがたいの。職場のお局様たちからかばってもらっている。新幹線の勤務も彼女のほうがしっかりしているの。同じシニアマネージャーなんだけど」
「夕飯作っておいてくれていたんだ?」
「悪いことしちゃったわ。今日は終電で帰るって言ってしまったから」
「俺が誘って悪かった」
「大丈夫よ。気にしないで。冷蔵庫に入れておけば明後日までもつもの。明日は新大阪まで一往復半で新大阪泊り。明後日東京に帰ってくるの」
「へぇ~、そのパーサーの仕事の話し、もっと聞きたいな。でも、智子、『友達の家に今晩は泊まる』ってウソついたね?」
「それはぁ~、わかるでしょ?優子、お母さんみたいにうるさいのよ。交友関係も。だからってわけ」
「いい同僚なんだね。親友?」
「そうね、大学卒業して、もう四年?一緒の職場だから。頼りない私を助けてくれるの」
「智子は甘えん坊なんだ」
「そうよ。真人、今日は誘ってくれてありがとう。これから甘えさせてくれる?」
「お任せください!」
★ カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針
(平成19年8月9日カウンターインテリジェンス推進会議決定)の概要
● 第2部:政府統一基準
★ 秘密取扱者適格性確認制度
【漫画】自衛隊に実在する首相さえ知らない闇のスパイ機関!? 日本を防衛できるのは、法と己を捨てた者だけ─『陸上自衛隊特務諜報機関 別班の犬』【公式】
雨の日の美術館Ⅵ
2017年11月15日(水)、紺野と尾崎
俺は自宅マンションの駐車場から愛車のパジェロに乗った。平日の非番の日だったが、研究所に書類提出をしないといけない。錦糸町料金所から首都高7号小松川線にはいる。両国JCTで隅田川を渡り、首都高6号に。3月なら左手に桜が見えるんだが、今は十一月。日本橋からは都心環状線だ。
北の丸公園、千鳥ヶ淵、外堀を左手に、首都高4号新宿線、国立競技場、明治神宮、新宿料金所を左折、高井戸から中央自動車道、神代植物公園・JRA東京競馬場を右手、国立府中料金所を降り、日野バイパスを村上工業のところで右折、左折して甲州街道にのって、矢川通りで右折、南部線の踏切を渡って、左折して立川国分寺線、また右折して立川東大和線、中央線のガード下を通り、自動車整備振興会のところを右折。
左手は空き地、出入国管理局なんかのごっちゃの建物を抜けると、防衛装備庁航空装備研究所にたどり着く。左手には自衛隊東京地方協力本部、陸自東立川駐屯地なんかがある。研究所の敷地内に入って、いつも文句を言われるが、研究所の敷地駐車場に駐車した。
Googleで航空装備研究所を検索するとこの立川が出てくるだろうが、俺は普段ここにはいない。ここは総務課とか政治家に見せるショールームとか、まあ、あまり研究をするという場所ではないのだ。もちろん、研究棟はある。俺が普段居るのは、協力会社の研究所、航空装備研究所土浦支所、新島支所などだ。
土浦支所は、誘導武器の要素技術についての試験に関する業務のうち防衛装備庁長官の命ずるものをつかさどる、新島支所は、誘導武器についての試験に関する業務のうち防衛装備庁長官の命ずるものをつかさどる、なんて内規に書いてある。しかし、何をしているなんて、ホムペを見てもわからないだろう。いわゆる機密ってやつなのだ。
俺は総務課のある事務棟に向かう。航空装備研究所の特別管理秘密責任者に会って俺の身上明細書を提出するためだ。新たな交友関係が発生した場合、速やかに(5日以内に)身上明細書を更新し、秘密取扱者適格性確認制度に照らし合わせ適格性審査を受けることとあるのだ。もちろん、俺は「特別管理秘密」の適応される国家公務員というわけだ。
文書の提出は「情報へのアクセス管理」に規定してある「外部電磁的記録媒体への電子情報の保存」でデジタルデータを「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一技術基準」に基づいて提出してもいいのだが、この情報セキュリティ対策が面倒だ。幾重にもわたるセキュリティーをクリアしないといけない。慣れないと交友関係の更新項目なんて単純な記述の変更に1時間以上かかることもある。だから、俺は文書を手書きで書き、封筒に厳重に封印して、研究所の情報管理責任者に直接手渡すことにしている。
今回の身上明細書の更新は、この前の日曜日に出会った「比嘉(ひが)美香」と昨日会った「三國優子」の2名だ。責任者から提出された俺の書類は、自衛隊情報保全隊、公安警察、内閣情報調査室を回覧されて、申し訳ないが、美香さんと優子さんの身上調査も秘密裏に行われる。
分銅屋で飲んだ話は報告しない。身上調査が長くなる。おまけに、分銅屋なんて、防衛省、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、KEK(高エネルギー加速器研究機構)、東京大学宇宙線研究所宇宙線研究所(スーパーカミオカンデ所轄部署)の常連の集まる巣窟みたいなもんだ。
俺は分銅屋に盗聴器や隠しカメラが仕掛けられていても驚きはしない。なんせ口の軽い連中が集まっている。紺野、南禅、羽生、小寺、加藤恵がよく来るからな。俺もか。森絵美だって来やがる。おまけに女将さんの吉川久美子だって、今や森絵美の同僚、KEKの東海キャンパス所属で博士論文の作成中だ。第一、監視役の公安警察の富田まで来るんだからな。富田は現在は紺野三佐と同じく内閣情報調査室出向なのだ。
仏頂面の研究所の情報管理責任者(責任者という奴らは必ず仏頂面だ)が俺の封書を受け取る。受け取りはナシだ。デジタルデータに受領書は送信される。証拠は必要だからな。彼女は(実は大昔は美人であったろう40代後半の課長)俺の封書を彼女の背後の超大型電子金庫にしまい込む。やれやれ、これで今週は終わった。5日以内に新規更新を怠ると大目玉を食らう。
おばちゃんが俺に「尾崎くん、紺野三佐が待ってるよ。どうせここに来るだろうから先回りしたみたい。第三打合せ室に行って」と言う。「俺の車にGPSでも仕込んでるんですかね?」と言うと「仕込まれていても私は驚きません。私のだってそうだもの。さあ、行って行って。忙しいんだから」と追い出そうとする。
俺は長い廊下を歩いて第三打合せ室に行った。ノックをする。「尾崎です。入ります」と部屋内に入ると、ソファーセットに座った紺野三佐がいた。羽生三佐の元女房で俺と同期で防衛省に所属した。
「おやおや、内閣情報調査室の方がこんな立川まで何の御用で?俺に会いたかったのか?美千留?」
「何言ってんの?身上明細書の提出だろう?」
「よくご存知で。車にはたぶんGPSが仕込まれているだろうし、尾行もついているだろうからな。ああ、新しい交友関係の更新だ。日曜日に会った比嘉(ひが)美香さんと昨日会った三國優子さんだよ。もう知ってるだろう?」
「日曜日のその女の子はまだ報告がない。尾崎が非番だったしね。でも昨日の三國優子は調べた。キミが山形の会社に行っただろ?あの会社も監視対象だからね。それで山形から新幹線で東京駅に戻ってきた。喫煙室で三國優子に出会った。神田のバーに行った」
「なんで美香さんはまだ調べてなくて、優子さんは調べたんだ?」
「それがね、こういう偶然というのはキミみたいな対象者はハニトラを疑うんだけどね。三國優子はシロだよ。安心しな。だが、尾崎を尾行した富田の手下が念のため三國優子を尾行した。彼女、大井町から徒歩6分くらいのマンションに住んでいる。小林智子という同僚と同居している。小林智子もシロだ。しかし、尾崎を山形から尾行していたらしい女がいて、彼女が東京駅からキミの尾行から三國優子に切り替えたんだ。そいつは大井町の三國優子のマンションを確認すると品川方面に歩いていった。品川駅近くでタクシーに乗り込んだ」
「興味深いな。俺も尾行が十重二重に付いてうれしいよ」
「話を聞け。三國優子を尾行していた女、どこに行ったと思う?」
「早く言え」
「その女、無防備なことにだ、行ったのが、東京都港区元麻布3丁目4番地33号だ」
「そんな住所を言われても俺にはわからん」
「その住所にある建物は、駐日中華人民共和国大使館だ」
「おっと・・・おいおい、中国野郎が俺を?」
「そうだ。山形の会社はリチウムイオンキャパシタの開発だろ?中国は、レールガンも開発中。さらに中国の三番目の空母『福建』は電磁カタパルトを搭載しようとしているがうまくいってないようだ」
「だが、俺が偶然出会った新幹線でパーサーをやっている女の子がどう関係する?」
「それはわからない。彼女に脅しをかけてキミをスパイするかもしれないし。まあ、気をつけることだ」
「優子に明日も会うぞ。約束したんだ」
「こんどは大阪だろ?そこもキャパシタの開発企業だな」
「優子とのアポはキャンセルするか?」
「いいや、しないでいい。自然に会って酒でもなんでも飲んでくれ。ホテルに連れ込むのも自由だ。彼女はシロだからな」
「だが、彼女に危険が及ぶのは・・・」
「もう既に中国野郎にバレてんだから、逆に保護のためにもそのまま付き合え」
「参ったな」
「それで、尾崎、今度駐日中華人民共和国大使館に赴任してきた武官が曲者だ。ヤツのしっぽも掴みたい」
「誰だい、そいつは?」
「楊少校という女狐だよ。野心満々のやり手の人民解放軍の少校様だ。こいつに鈴をつけたいんだよ。こいつは人民解放軍東部戦区所属で、台湾侵攻、南西諸島攻略にも関わっているんだ」
「厄介な話だ」
「だから、明日の出張前に絶対にキミに会っておきたかったんだよ」
「わかった、わかった。じゃあ、もう用事はないな。俺は消えてもいいだろ?」
「私ももう用事は済んだが、尾崎の車で送ってくれ」
「どこまで?」
「決まってんだろ?オフになったら分銅屋だろ?錦糸町のマンションまで行って、車を置いて北千住までデートしようじゃないか?飲み台は内閣情報調査室で持つよ。水戸泉でも飲もうや」
「おいおい、俺の予定も聞かないで・・・」
「キミに今日の予定はないだろ?」
「よくご存知だな。プライバシーってものがないのか?この国は?」
「尾崎も私も特別管理秘密対象者だからな。分銅屋で飲むのが一番安全だよ。重要監視拠点なんだから」
「やれやれ・・・」
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