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太陽フレア

なぜ唐突に今「大規模な太陽フレアの影響」報告?「電磁パルス攻撃」の危険でも高まってきたわけ?

携帯電話が2週間使えなくなる? 東京が世界で一番被害を受ける都市? 「太陽フレア」の被害想定と対策は

「太陽フレア」と類似のガンマ線バーストの飛来のフィクションを書いてました。

A piece of rum raisin」、「A piece of rum raisin オリジナル」で登場人物が必死になっているのが『GRBによるEMP現象の防止』です。
GRBって何か?ガンマ線バースト(Gamma Ray Burst)のことです。
EMPとは?電磁パルス(ElectroMagnetic Pulse)のことです。

ギガジンでこれに関しての記事がありますので、引用しましょう。

宇宙最大の爆発現象「ガンマ線バースト」が何なのかをムービーで解説

ガンマ線は、紫外線やX線よりも高エネルギーな電磁波です。ガンマ線光子1個は可視光100万個よりも強力です。また、ガンマ線は電離放射線でもあるので原子の結合を破壊することも可能。

これは非常に危険な特性で、生物に必要な構造を破壊してしまいます。そんな危険なガンマ線ですが、地球にはオゾン層があるので宇宙から飛来するガンマ線がそのまま地上に降り注ぐことはありません。そのガンマ線が数秒から数時間にわたって閃光のように放出されるのが「ガンマ線バースト」です。ガンマ線バーストは、冷戦中にアメリカがソ連の核実験を監視するために使用していた衛星で初めて感知した物理現象です。地上から放出される核爆発による放射線を感知しようと衛星で放射線の観測を行った結果、宇宙から飛来する謎の放射線を感知し、ガンマ線バーストの存在が明らかになりました。

ガンマ線バーストの発生は、新たな天体誕生の瞬間でもあります。ガンマ線バーストには2種類あり、それぞれ発生源が異なります。発生源のひとつは超新星爆発。ガンマ線バーストが発生し、ブラックホールができます。

もうひとつの発生源は、2つの中性子星が合体する瞬間です。何百万年にもわたって重力波を出し続けた後、中性子星は徐々に近づいていきぶつかるとブラックホールができます。ブラックホールの周りには磁気を帯びた星の残骸のガスがあり、それが回転して磁場をつくると中心から熱い粒子がほぼ光速で放出されます。これがもうひとつのガンマ線バースト発生の瞬間。爆発は通常拡散しますが、中性子星が合体した際に放出されるガンマ線は集中しており、より遠くまで届くようになっています。ガンマ線バーストなどで発生したガンマ線は地球にも降り注いでいます。フェルミガンマ線宇宙望遠鏡によると、1日に1回ほど観測されている模様。

しかし、そのほとんどは無害です。その理由は、ほとんどのガンマ線が地球の存在する銀河系の外から来ているものだから。しかし、もしも地球から数光年の距離でガンマ線バーストが発生した場合、地球は少なくとも半分が丸焦げになります。それよりも遠くで発生した場合でも、十分に危険があります。数千光年先でガンマ線バーストが発生した場合、ガンマ線が徐々に拡散していき太陽系全体に影響を及ぼす可能性もあります。

オゾン層は太陽から地球上の生物を守ってくれていますが、ガンマ線バーストが数千光年の距離で発生して地球に降り注いだ場合、オゾン層は破壊されてしまい、地球は太陽に焼かれることとなります。オゾン層は再生に数年かかるため、地球上の生物は死滅するでしょう。実際、こういったことが過去に起きた可能性もあります。4.5億年前のオルドビス紀に起き、海洋生物の85%が絶滅した大量絶滅はガンマ線バーストが原因かもしれません。

それでは人類がガンマ線バーストに遭遇する可能性はあるのでしょうか?銀河内でガンマ線バーストが発生する確率は1000年に1度程度で、これが地球の近くで起き、なおかつ地球に直撃する必要があります。さらに、ガンマ線は光速なので、事前に知る術がなく、向かってきていてもそれと分かるのは死ぬ瞬間です。


『ガンマ線は光速なので、事前に知る術がなく、向かってきていてもそれと分かるのは死ぬ瞬間』とありますが、ガンマ線が襲ってくる前に、実はある素粒子がまず地球に飛来します。その素粒子がニュートリノです。日本の誇るカミオカンデが極超新星爆発をニュートリノ数の増大を検知できれば、ガンマ線バーストの襲来を予測できます。かといって、予測できたとしても、防止策なしでは地球の破滅は免れません。


第 20 章 第三ユニバース:神岡鉱山(1)
2025年9月8日(月)

 ハイパーカミオカンデは幸いなことに完成していた。岐阜県飛騨市神岡町の地下650mの大空洞である。高さ60m、直径74mの円筒形状を持つ巨大水槽に約26万トンの超純水を蓄え、内水槽の壁面に50cm径の超高感度光センサー40,000本、外水槽の壁面に20cm径の高感度光センサー6,700本を取り付けられていた。高感度光センサー、光電子倍増管(PMT、Photo Multiplier Tube)である。

 この検出器は、水中で荷電粒子が水中の光速よりも早く移動したときわずかに放出する「チェレンコフ光」を観測する。ニュートリノは電荷を持たず、観測可能なチェレンコフ光を出さない。しかし、 水分子中の電子と反応した場合、電子にエネルギーを与える。また、水分子中の陽子・中性子と反応した場合は、電子やμ粒子、そのほかの荷電粒子を生成する。これらの反応から生成した粒子が出すチェレンコフ光を観測することで、元のニュートリノの種別やエネルギーなどの情報を再構成する。

 PMTから出力される電気信号はQBEE(QTC- Based Electronics with Ethernet)と呼ばれる特別なボードによってデジタルデータに変換される。1枚のQBEEには24本のPMTが接続され、変換後のデータはFast Ethernetによって計24台の読み出し用計算機群に転送される。各読み出し用計算機は、 PMT約720本(外水槽は約480本)分のデータを読み出し、時間順に並べ直した上で6台のデータ集約・事象選別用計算機群に送る。データ集約・事象選別用計算機は、各読み出し用計算機からのデータを集約、検出器全体分にまとめた上で事象を選別、 12 kHz程度で事象データを記録している。

 事象選別後のデータは、大容量ディスク装置とテープに記録される。その後、解析用計算機群を用いて各事象のタンク内での反応位置、粒子数の同定、エネルギーや飛行方向、粒子種別の判定などといった「事象再構成」を行い、この出力を用いてニュートリノ振動の研究や陽子崩壊の探索が行われている。

 高さ60m、直径74mの水槽上部にある4つの小さな部屋には、光電子増倍管から送られてくる信号から情報を取り出すための電子回路や、光電子増倍管にかける高電圧電源などが設置されている。光電子増倍管には、約2,000ボルトの高電圧がかけられている。約40,000本の光電子増倍管からの信号は、70メートルケーブルを経由して、4つのエレクトロニクスハットに設置されている、電子回路に送られる。

 この電子回路では、光電子増倍管からのアナログ信号を処理して、光電子増倍管が受けた光の量と光を受けた時間についての情報をデジタル情報として取り出す。ハイパーカミオカンデのデータ取得システムは、1秒間に各光電子増倍管につき約14,000回ある信号のすべてを記録して解析に利用している。一日に取得するデータ量は約2テラバイトになる。

 スーパーカミオカンデでは、事象再構成までに25分かかった。ハイパーカミオカンデは、富嶽級のスパコンの導入により、PMTから出力される電気信号受信から事象再構成まで13秒とほぼリアルタイムで観測可能となった。
ハイパーカミオカンデは、24時間365日休まずデータを取り続けている。常に研究者が検出器の状態を監視し、データのチェックを行っている。地下650mのコントロールルームでは、朝8時半から夕方16時半まで当番の研究者が2人体制で、さまざまなチェックを行っている。その他の時間帯は、地上の研究棟から同じように監視を行っている。


 2025年9月8日(月)、朝8時、小平と加藤恵美はコントロールルームに降りていった。既に、東大の宇宙線研から派遣されている院生が2名が席に着いていた。そこに小平と加藤が現れたものだから、彼らは驚いた。重鎮2人がこの地下の穴蔵に予告もなく現れたからだ。

「小平先生、加藤先生、今日はまたどういうことでしょうか?ご訪問のお知らせを見逃しましたか?」
「いいや、神谷くん、予告なしですよ。老人でも現場を忘れてはいけないからね。柏からのこのこでてきたのだよ」
「それはご苦労さまです」
「それはそうと、ニュートリノの検知数が増大しているという連絡があったんだが・・・」
「そうなんです。昨日の朝からミューニュートリノ数が2千個を超えまして、最大2035個検知しました。今日はもっと多いんですよ。最大3124個です。1999年のGRB990123よりも多いですよ。なにが起こっているんでしょうか?」
「PMTの検知分布から、ニュートリノのやってくる方向はわかるかな?」
「スパコンに計算させました。おおよその方向は、赤経21h26m、赤緯+19°、天球図によりますとペガススからアンドロメダ方面のようですね」
小平と加藤は顔を見合わせた。加藤は顔をしかめて小平に言った。「先生、ペガスス座IK星Aでしょうか?」

 小平は顎をひねって、考えていた。「まず、連絡しておこう。神谷くん、東大の宇宙線研に連絡してくれ。所長に直接だ。小平から緊急だと言え。それから加藤くん、SNEWS(超新星早期警報システム、Supernova Early Warning System)の担当者、だれだっけな?」「デューク大のケイト・ショルバーグとミネソタ大のアレック・ハビッグだったかしら?」「そうそう、ケイトとアレックだったな。彼らにも連絡してくれ。それから、イタリアのLVD(Large Volume Detector)、Borexino、カナダのSNO、南極のアイスキューブ・ニュートリノ観測所も頼む。解析前の生データでいいから彼らに送っちまえ!小平から緊急だと言って!ペガスス座IK星A方向を調べろと言え!」
もう一人の院生の吉田が小平に言った。「小平先生、6千個を超えました!」

「イカンな。まずいぞ」と小平は言うと、手に持っていたタブレットでZOOMを起動させた。「もう、セキュリティーがなんのと言っておられんわい」と言うと登録してあるCERN(セルン)と高エネルギー加速器研究機構、JAXAを呼び出した。普通の登録ではなく、緊急登録のIDだから、相手も何か大事が起こっているのがわかるのだ。セルンから島津洋子とアイーシャが、KEKとJAXAから宮部明彦、森絵美、湯澤研一が画面に現れた。「あら、小平先生、何事です?」と洋子が訊いた。

「何事もかに事も、諸君、ペガスス座IK星Aのようだぞ」「え!超新星?!」「まだ、わからん。わかったら知らせる。念の為に諸君は地下に潜れ。セルンならLHCは地下106メートルじゃろ?その方が安全だ。宮部くん、森くん、湯澤くんは十分な厚みの構造物を探して潜り込め。ああ、それから、EMPで電源が切れたら、キミらのところの加速器の超電導が破れるぞ。クエンチが起こる。どうするのかわからんが、防止策を考えてくれ。起こらんかもしれん。準備だけはしてくれ。EMPで連絡が取れないようになるまで、このまま通信は継続しておくぞ!」

 神谷と吉田があっけにとられて小平の顔を見ていた。「先生、なにが起こっているんでしょうか?」と神谷が訊く。
「ああ、まだわからんが、もしかすると、若いキミたちには気の毒だが、ごく近い将来、私らと一緒に冥土の旅に出るのかもしれん。極超新星爆発によるガンマ線バーストで電磁パルス現象が起こって、地球は滅亡するかもだ」

 スマホで何箇所も電話をしていた加藤が小平に言った。「先生、ケイトとアレックには報告しました。確認の上、超新星早期警報システムを発令するかを決めるって言ってます。それから、LVD、Borexino、SNO、アイスキューブ・ニュートリノ観測所、こちらと似たような観測結果が出ています」
「加藤くん、本当にまずいぞ!ニュートリノ飛来からガンマ線の襲来までの間隔はどのくらいだろうな?」「それはなんとも・・・数分から数時間、数日、超新星内部の核反応次第ですわ」

「神谷くん、吉田くん、地上の研究棟には何名いる?」「12、3名だと思いますが・・・」「そいつらに、手近の食料と日常生活品をひっかついで、20分以内に全員ここに降りてこいと言ってくれ。それから、圧縮空気ボンベを満タンにしておけ。地上との連絡ダクトを閉じないといけないかもしれん。幸いここには超伝導装置はないからクエンチの心配はいらんが、光電子増倍管への約2,000ボルトの高電圧電源はすぐ切れるように人員配置をしないとイカン。水は、水槽内はガドリニウム入れちまっているが、超純水装置の貯水タンクで飲み水は持つだろう。吉田くん、X倉庫の鍵はあるかね?」「・・・ありますが・・・あの倉庫、なんですか?」「あそこには、所長に内緒でわしが緊急食糧をギッておいたんだ。ここにいる4名と上の12、3名が食っても数ヶ月は持つだろう。数ヶ月生き延びられても、オゾン層とバンアレン帯が剥ぎ取られて、放射線が降ってくるがな。オゾン層が再生する数年後までは生き延びられんよ」

 やがて、世界各地で、低緯度地方にまで空にオーロラがあらわれるようになった。


第 21 章 第三ユニバース:神岡鉱山(2)
2025年9月8日(月)

 地下650メートルのハイパーカミオカンデのコントロールセンター。小平と加藤恵美は、東大院生の神谷と吉田とともに、地上の研究棟にいるスタッフ12、3名を待っていた。ZOOMで交信中のCERN(セルン)の島津洋子とアイーシャ、高エネルギー加速器研究機構の宮部明彦、森絵美、JAXAの湯澤研一は待機していた。

「フフフ、小平先生、みんな、私が若い頃に聴いたドアーズの『The End』が聞こえますわ。陰鬱なジム・モリソンが歌ってましたわね。でも、私、『もう、これで終わり』とは思えませんのよ。私たちの分身、第一、第二にいる類似体がおめおめとこの第三ユニバースが壊滅するのを黙ってみていられるもんですか。彼らがなにかしますわ。アッと驚くことを。私は、私自身を、私たち自身を信じます。最後まで諦めません・・・でもねえ、結婚してみたかったな。自分の子供を持ちたかったわね」とメグミは小平とタブに映っている五人に話しかけた。「まったく、かくも優秀な素粒子物理学者、天文物理学者が、小平先生を筆頭にみんな独身なんて、人類にとって損失だったわね」

「メグミくん、まあ、この期に及んで子孫の話かね。独身で良かったんだよ。子供や孫がいれば、その心配までせにゃあならんところだ」頭をかきかき小平が言った。

「あら、小平先生、今からでも私相手なら子作りできますことよ?」「何を言ってるんだね、メグミくん」「まあ、人生最後にすることはセックスじゃあありませんからね」

「あ!そうだ。島津くん、アイーシャくん、LHCのトンネルに逃げ込むなら、106メートルの地下だからガンマ線の電磁波と太陽からくる電磁波は防げるが、非常電源も何も切れるぞ。地上のヘリウムの冷凍機がはおしゃかだ。超電導が切れてクエンチが起こる。LHCは8セクターだったな。1セクターあたり保有するヘリウムは15トン。合計120トン。どれだけクエンチで流出するかわからんが、コライダーのトンネル内はヘリウムで充満するだろう。『ビッグバン・セオリー』のシェルドンがヘリウムガスを吸い込んでキンキン声になったレベルの量じゃない。あれば酸素マスクを装着、トンネル内では立ち上がっちゃいかん。腹ばいにならないと、トンネル上部に滞留するヘリウムを吸い込むぞ」

「酸素マスクは研究室からひっつかんできましたよ、先生」とアイーシャが言う。「いつまで保つかわかりませんけどね。カミオカンデは十数名ですが、セルンは何千人避難してくるのかわかりませんわ。食料もないし、どうしようもないでしょう。出来得る限り生き延びる努力はいたしますけど」

「ああ、頑張ってくれ。メグミくんが言ったが、われわれの分身、第一、第二にいるわれわれの類似体がおめおめとこの第三ユニバースが壊滅するのを黙ってみているわけがないじゃないか。そのことを信じて生き延びる努力をしよう」
「小平先生、私と宮部くんはKEK-Bのトンネル内に逃げました。LHCよりも浅いですが、構造体があります」と絵美が言った。
「私もJAXA宇宙科学研究所の研究棟の地下にいます。気休めですが、遮蔽物がなにもないよりマシでしょう」と湯澤が言った。

「みんなは生活物資がないなあ。困ったもんだ」と小平。

「メグミが言うように私たちの分身がなにかしてくれるでしょう」と宮部が言う。

「それを信じよう。おお、そうだ」と小平が院生の神谷に「地上部隊が来たら、地上との高圧線をいつでも切れるように遮断器に数名配置だ。それから斧を探して、遮断器を落としたら、遮断器の下流側の高圧電線をたたっ斬れるようにしよう。電線がつながっていると、電磁波が伝搬しないとも限らない。非常電源の発電機の燃料も確認してくれ。いつでも起動できるように。光電子増倍管は非常電源では15%程度しか稼働できまい。千鳥でブレーカーを落として、15%くらいが稼働できるように設定しよう。光電子増倍管がないよりもマシだろう。最後まで観測は続けたい」

 十数時間、小平たちは生き延びようと無駄な努力を続けた。日本は地球という惑星の夜面に入っていた。ニュートリノの飛来に続いて、十数時間遅れでガンマ線バーストのショートバーストが地球を襲った。それはコンマ数秒という短い時間だったが、太陽が発する電磁波エネルギーの数年分が一時に地球のバンアレン帯を破壊し、オゾン層を剥ぎ取った。その時、地球の昼面にあった北米大陸では、バンアレン帯もオゾン層もなく、太陽からの電磁波を直接浴びた。空を飛ぶ鳥は舞い落ち、地表から十数メートルの地表の生物は大部分が死滅した。続いて、ロングバーストが襲来した。残ったオゾン層もほとんど消えた。

 北米大陸だけではなく、夜面にあった欧州大陸、ユーラシア大陸、アフリカ大陸、日本、オセアニア各国の電力グリッドが消失した。電子・電気部品を載せた機器は使用不能となり、あるものは火を発した。

 大気中のオーロラは、太陽風のプラズマが低緯度地域まで高速で降下し、酸素原子や窒素原子を励起させ、燃え盛った。北欧神話もラグナロクもこれほどではあるまい。

 スイス、ジュネーブのセルンでは、クエンチ発生の超電導破れで60トンの液体ヘリウムが600倍に気化した。島津とアイーシャはそれを生き延びた。

 北米から太平洋、オセアニアと地球は時点で昼面に移っていく。ハイパーカミオカンデが地下650メートルにあるとはいえ、日本列島が昼面になった時が、自分たちの最後と小平は思っていた。

「メグミくん、もうイカンようだな。今までどうもありがとう」と小平はメグミに言った。「小平先生、いままでご指導くださって、ありがとうございます。分身でもどうしようもなかったんですね。残念です」とメグミも小平に言った。

 そして、二人はブラック・アウトした。


第 22 章 第三ユニバース:高エネルギー加速器研究機構(6)
第三ユニバース:CERN(セルン)(2)
2010年5月11日(火)

 記憶がドンと音を立てて脳内に堕ちるわけがない。そんなことはありえない。しかし、2010年からGRBの起こった2025年までの記憶、それに第一ユニバースからの記憶が、筑波の高エネルギー加速器研究機構に集まっていた小平、宮部、湯澤、森、加藤とセルンの島津とアイーシャに転移した。

 そんなバカなことはありえない。記憶転移装置に入っているわけでもなく、生身の人間に直接記憶が転移されるわけがない。しかも、異なるユニバースではなく、一部の記憶は、同じ第三ユニバースのものなのだ。

記憶転移装置のある部屋に行くのだ

 小平の頭に自分の声が響いた。「諸君、記憶転移装置のある部屋に行こう。こっちは通信回線を保つ。メグミくん、タブレットでいいから、こことセルンの回線を保持して、タブを持って装置部屋に行くんだ。島津とアイーシャはそのまま待機していてくれ。会話はタブからの通信で聞こえるだろう」

 五人は記憶転移装置のある部屋に入った。装置は誰がオンしたのか稼働していた。そして、装置のスピーカーから小平の声がした。

「そちらの、第三のわし、聞こえるか?わしは第一ユニバースのおまえだ、小平だ。こっちは、宮部、湯澤、森、加藤、島津とアイーシャ、それに岬くん、南禅くん、羽生くんもおるぞ。間に合ったのかね?どうなのかね?応答してくれたまえ」と確かに小平だと思われる人間が話した。

「私は小平一平だ。キミも小平一平なのか?」
「こりゃあ、どうにも自分が自分に話しかけるなど驚天動地だ。今、そちらは西暦何年だ?」
「こっちは西暦2025年・・・じゃない、2010年だ」
「こちらも同じく2010年だ。そっちとこっちで生まれ年が違うからな。こっちは64才になっとる。そっちは・・・え~、52才だろう?わしのほうが年上じゃ」
「おいおい、これはどうなってるんだ?こっちはさっぱりわからんぞ」
「そりゃあ、そうじゃろう。2025年から全員引き戻したんだから。2025年じゃあGRBには間に合わんからな。だから、記憶を15年引き戻した。こちらは、80年代から準備を始めて、記憶転移装置も完成させた。そちらの湯澤くんとアイーシャくんの物より改良したんだ。だから、転移装置ー人間のこの苦痛を伴う転移もこれが最後だ。装置がなくても今回のように2025年から2010年に転移可能なのだ。それから、このおしゃべりしている通信もそうだが、転移装置ー転移装置間の記憶データや技術データの送信が可能だから、もう頭に無理やり類似体の記憶を突っ込まれることもなくなる」
「よく聴いてくれ。こちらは、ついに、新国連の組織化を達成した。水爆搭載のICBM6,000発が発射準備段階に入っている。水爆の弾幕でGRBが防げれば良いんじゃが。そちらも、こちらが送るデータで、そちらの機能しない国連を解体して、新国連の元、水爆の弾幕が張れれば、GRBも防げるじゃろう。なあに、2025年まで15年もあるのだ。まだ、間に合う」

 第三の高エネルギー加速器研究機構にいる五人とセルンの二人は、互いに顔を見合わせた。

 メグミが言った。「ほおら、御覧なさい。私たちの分身、第一、第二にいる類似体がおめおめとこの第三ユニバースが壊滅するのを黙ってみていられるもんですかって、言ったでしょう?その通りになったわ」
するとスピーカーから同じメグミの声で、「あら、そちらの私も元気みたいね。結婚できたの?」と言った。
「残念でした。こちら第三はみんな独身よ」
「どうしようもないわね。みんな結婚に縁がないのかしら。まあ、こっちもみんな結婚はしてないけどね。できちゃった、はあるけど」

「ちょっと、メグミくん、そういう話は後にして」と宮部が割って入った。「そちらの小平先生、第二はどうなったんですか?」
「ああ、第二はな、こっちの観測だと、大丈夫なんだ。すべてのユニバースで、同じGRB現象が起きるとは限らん。不幸にして、第一と第三は、ペガスス座IK星A のGRBの直撃方向にあったんだが、第二は太陽系の位置が多少違っていて、ペガスス座IK星A のGRBは起こるんだが、直撃コースからはずれているんだよ」
「ほ、本当ですか?」
「たぶん、この観測結果は正しい。だから、第一も第三も第二も助かる公算が高いのだ。まだ、水爆の弾幕が有効かどうか、余談を許さないがな。まあ、苦労したよ。話すと長くなるが、こっちの第一では・・・」 


 メグミがKEKの記憶転移装置のある部屋にソォーッと忍び込んだ。明彦に邪魔されて、あっちの私とお話できなかったのだ。無念である。それで、むこうの小平先生のなが~あい話が終わった後、むこうのメグミにテキストメッセージを流したのだ。3時間後にお話できない?って。

 むこうのメグミも「大丈夫だよ!」と返信してきた。39才であろうと、21才であろうと、むこうのメグミは52才だっけ?三つ子の魂百まで、なんだわよ。

 記憶転移装置は電源を落とさないように取り決めた。いつ緊急の連絡があるかわからないからだ。メグミは、テキストメッセージで、むこうのメグミに「メグミ、いる?」と送信した。「いるわよ。大丈夫、だれもこっちにいないわよ」とレスが返ってくる。「わかった。スピーカーとマイクをオンするね。ボリューム落として」「ラジャー!」

「もしもし?そっちのメグミ?」と第三の39才のメグミがマイクに話す。
「あ!私の別のメグミ、こんばんは」と第一の52才のメグミ。
「さすが、分身、気が合うわね?」と第三のメグミ。
「ベースが一緒だからね。いくつになっても」と第一のメグミ。
「あのね、さっき気になること言っていたじゃない?」と第三のメグミ。
「なになに?」と第一のメグミ。
「あなた、言ったじゃない?『こっちもみんな結婚はしてないけどね。できちゃった、はあるけど』って。誰が誰の子供をできちゃったの?気になって、気になって」と第三のメグミ。
「うふふふ、知りたい?」と第一のメグミ。
「もちろんよ、知りたい!」と第三のメグミ。
「あのね、それはね、私。私よ」と第一のメグミ。
「え?私?」と第三のメグミ。
「いや、だから、私!あなたじゃないでしょ?」と第一のメグミ。
「わかったから、焦らさないで、教えてちょうだい!誰の子供なの?」と第三のメグミ。
「へへぇ~、あのね、父親は明彦。洋子から分捕ってやったわ!安全日だって騙して、妊娠したのよ。もちろん、結婚なんて迫らなかったけどね」と第一のメグミ。
「さすがねえ、さすが私だわ。私もまだ39才だから高齢だけど妊娠可能ね?私もやっちゃおうかしら?」と第三のメグミ。
「あのね、第三の男女関係は知らないけど、私と明彦は記憶転移がある前から肉体関係にあったんですからね」と第一のメグミ。
「そうかあ、それじゃあ、状況はこっちと違うわね。悔しい!」と第三のメグミ。

「それよりさ、そっちのメグミ、こちらは、ブッシュ家なんかのNWO(新世界秩序)を壊滅させたけど、そちらは手つかずでしょう?その問題をそちらの小平先生も明彦も気にしてなかったのが気になるのよ」と第一のメグミ。
「あ!そうか!そちらは1979年以来動いていたけど、こちらは放置したままだったのを忘れていたわ」と第三のメグミ。
「そうよ。早く手をうたないと。NWOが邪魔するわよ」と第一のメグミ。
「ラジャー!これは至急手を打たないと。こちらでも相談する」と第三のメグミ。「ところで、子供って女の子?男の子?」
「フフフフ、娘よ」と第一のメグミ。
「可愛いだろうなあ。今度写真送ってね」と第三のメグミ。
「送るわよ。私自身と話すって楽しい!」と第一のメグミ。
「うん、同感。じゃあ、交信終了!ありがとう!」と第三のメグミ。
「こちらこそ。お話できてありがとう。交信終了!」と第一のメグミ。


携帯電話が2週間使えなくなる? 東京が世界で一番被害を受ける都市? 「太陽フレア」の被害想定と対策は

TamithaSkov - Space Weather News

A Big Whoosh & with New Flare Players | Space Weather News 06.17.2022


第一章『プロローグ』* ー ガンマ線バースト(Gamma Ray Burst、GRB

マガジン、”A piece of rum raisin

第 20 章 第三ユニバース:神岡鉱山(1)、2025年9月8日(月)
第 21 章 第三ユニバース:神岡鉱山(2)、2025年9月8日(月)

第 1 章 第一ユニバース:覚醒(1)1978年5月4日(火)
第 2 章 第一ユニバース:覚醒(2)1978年5月6日(木)
第 3 章 第一ユニバース:覚醒(3)1978年5月7日(金)
第 4 章 第三ユニバース:KEK(1)2010年5月11日(火)
第 5 章 第三ユニバース:KEK(2)2010年5月11日(火)
第 6 章 第三ユニバース:KEK(3)2010年5月11日(火)
第 7 章 第三ユニバース:KEK(4)2010年5月11日(火)
第 8 章 第三ユニバース:KEK(5)2010年5月11日(火)
第 9 章 第三ユニバース:CERN(セルン)(1)2010年5月11日(火)
第 10 章 第一ユニバース:新橋第一ホテル(1)1978年5月7日~12月23日
第 11 章 第一ユニバース:新橋第一ホテル(2)1978年5月7日~12月23日
第 12 章 第一ユニバース:新橋第一ホテル(3)1978年12月24日(土)
第 13 章 第一ユニバース:新橋第一ホテル(4)1978年12月25日(日)
第 14 章 第一ユニバース:御茶ノ水 1979年2月17日(土)
第 15 章 第一ユニバース:新橋第一ホテル(5)1979年6月13日(水)
第 16 章 第一ユニバース:原宿(1)1979年6月13日(水)
第 17 章 第一ユニバース:原宿(2)1979年6月13日(水)
第 18 章 第三ユニバース:CERN Control Center(1) 2008年9月15日(月)
第 19 章 第一ユニバース:原宿(3)1979年6月13日(水)
メグミちゃんの「A piece of rum raisin」第16章、第17章の解説

マガジン、”A piece of rum raisin オリジナル

第 1 話 第二ユニバース:殺害(1)1983年7月18日(月)
第 2 話 第二ユニバース:殺害(2)1983年7月28日(火)
第 3 話 第二ユニバース:殺害(3)1985年12月7日(土)
第 4 話 第二ユニバース:殺害(4)1985年12月8日(日)
第 5 話 第二ユニバース:殺害(5)1985年12月10日(火)
第 6 話 第二ユニバース:殺害(6)1985年12月10日(火)
第 7 話 第二ユニバース:殺害(7)1985年12月12日(木)
第 8 話 第二ユニバース:殺害(8)1985年12月12日(木)
第 9 話 第二ユニバース:殺害(9)1985年12月13日(金)
第 10 話 第二ユニバース:殺害(10)1985年12月13日(金)
第 11 話 第二ユニバース:シンガポール(1)1987年7月2日(火)
第 12 話 第二ユニバース:シンガポール(2)1987年7月2日(火)
第 13 話 第二ユニバース:シンガポール(3)1987年7月2日(火)
第 14 話 第二ユニバース:シンガポール(4)1987年7月4日(木)
第 15 話 第二ユニバース:モンペリエ(1)2000年4月30日(日)


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参照:フランク・ロイドのマガジン

私のトップページを見ても、続き物が多いので、何がなにやらわかりません。できれば、下記のマガジン一覧から追っていただければ幸いです。


マガジン「A piece of rum raisin」

マガジン「A piece of rum raisin オリジナル」


マガジン「縄文海進と古神道、神社、天皇制

マガジン「ヒンズー教と仏教の原風景

マガジン「フランク・ロイドのエッセイ集」

マガジン「フランク・ロイドのサイエンス」

マガジン「フランク・ロイドの音楽」

マガジン「エレーナ少佐のサドガシマ作戦」

マガジン「フランク・ロイドの『総集編』」

マガジン「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス」

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