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現代・妖怪じてん

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現代・百鬼夜行絵図。 誰の心のなかにもひそむ闇をカタログ化。
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妖怪図鑑10:甚兵衛文身

妖怪図鑑10:甚兵衛文身

 古代中国の歴史書『魏志倭人伝』には、当時の日本列島の住人の風貌について、こう書かれている。

 黥面文身、と。

 「黥」の部首は「黒」である。魚偏の「鯨」ではない。これは「墨」を表している。「黥面」とは顔に、そして「文身」とは身体に、入れ墨があることをいう。
 つまり、卑弥呼の時代の日本人は、全身に入れ墨を施していたということになる。その理由は明確ではないが、魏志倭人伝にはサメやウミヘビなどの

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妖怪図鑑9:一言居士

妖怪図鑑9:一言居士

 葛城の古い神、「すべてを一言で言い放つ神」とされた一言主(ひとことぬし)を起源とする。その名のとおり、やたらとコメントしてくる妖怪だ。
 とりあえず、一言、なにかを言わずにはいられないらしい。頼んでもいないのに、とりあえず口をはさんでくる。

 現代の記号化社会において爆発的な増殖を示し、インターネット、特にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で頻繁に遭遇することが知られている。

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妖怪図鑑8:疫病神

妖怪図鑑8:疫病神

 初めは「摺衣(すりごろも)」かと思った。

 しかし、忌まわしき邂逅の場から立ち去って、しばらく経つのに、心中のざらつきは治まることを知らなかった。

 そこで、はたと気がついた。
 これは「疫病神」だ、と。

 疫病神とは、祟りや穢れといった不穏なものを身に纏うものの名である。

 忌まわしき黒い靄のようなものが、ねっとりと渦巻きながら、その身体を覆い包んでいる。その霧に触れた者は、同じように

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妖怪図鑑7:依り耳(よりみみ)

妖怪図鑑7:依り耳(よりみみ)

賑やかな人混みのなかで、一瞬静寂が走ることがある。
妖怪「依り耳」がそっと近寄り、耳を支配した瞬間に他ならない。

依り耳は、取り憑いた人間の客観的な判断力を奪う。
依り耳に憑かれた人間は、言葉の内容ではなく、その言葉を発した人間が誰なのかによって、物事を判断するようになる。

その歴史は古い。

古代ギリシアの時代に、アリストテレスが『弁論術』の中で、聴衆を説得する方法として挙げたのが以下の三要

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妖怪図鑑6:浄瑠璃蜘蛛

妖怪図鑑6:浄瑠璃蜘蛛

美女から生えた無数の腕。その指先からキラキラと光を反射する細い糸が伸び、周囲の人々にまとわりつく。まるで人形浄瑠璃のように、見えるか見えないかという脆弱な糸で人々を意のままにあやつろうとする。

それが浄瑠璃蜘蛛である。

ひたすらに、周囲を支配することを欲する妖怪である。

その糸に捕らえられた犠牲者が、その意に従わないときは、激昂とともに激しく叱責する。極端な場合、異なる意見や自由な感想すらも

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妖怪図鑑5:やふさし(吝児)

妖怪図鑑5:やふさし(吝児)

餓鬼の一種。

他人を蹴落としてでも欲求を満たそうとした人間が、餓鬼道にも落ちず、現世をさまよう姿だという。いわば未熟な餓鬼。とりつかれると、他人の迷惑を顧みず、欲望に駆られるがままに行動しようとする。

その行動は2種類に分類される。

1つが、自分の利益を必死に追うパターン。

たとえば、他人を押しのけてでも電車の座席を狙うおばさん。たとえば、子どもや障がい者を排除してでも自分のペースで歩き続

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妖怪図鑑4:摺衣(すりごろも)

妖怪図鑑4:摺衣(すりごろも)

古き昔、現在の警察にあたる検非違使(けびいし)たちが身にまとっていた着物が、長い年月をかけて変化した妖怪。他人の顔色を気にする臆病な人間を見つけると、闇夜にまぎれてふわりと憑りつく。すると、憑りつかれた人間は、正義の代弁者かのように、ルールに従わない人々を、まるで犯罪者のように徹底的に糾弾しはじめるという。

「虎の威を借る狐」ということわざがあるが、この妖怪は「正義の威」をかさに着る。

正義の

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妖怪図鑑3:剛鬼

妖怪図鑑3:剛鬼

名前だけみると、猛々しい巨大な鬼の姿を想像させるが、小さな原猿類のような妖怪。いつのまにか、臆病な人間の心にとりついている。

とりつかれた人間は、以下のような状態になる。

① 乱暴な言動で、周囲を威圧しようとする。

② 怒りにより、周囲を支配しようとする。

③ 暴力や武術、武器、軍事など、力の象徴を好む。

剛鬼の原動力は、とりついた人間の劣等感である。

他人と比べて劣っていると思うから

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妖怪図鑑2:ケチツキ

妖怪図鑑2:ケチツキ

気がつくと、誰かの悪口を言っていることはないだろうか。

友達やクラスメート、テレビの芸能人やアイドルに、いちいちケチをつける。

批判したがる。評論したがる。言わずにはいられない。

妖怪ケチツキは、自分が満たされていない心にとりつく。

そして、いろんなものにケチをつけて、その価値を下げようとする。

相手の価値が下がれば、相対的に自分の価値は高まる。

そして、満たされない心は、満たされる。

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妖怪図鑑1:暗鬼

妖怪図鑑1:暗鬼

とんちで有名な一休和尚は、こんな歌を残している。

「鬼という恐ろしものはどこにある 邪見な人の胸に住むなり」

暗鬼(あんき)という妖怪は、人の心にとりつく。

とりつかれた人は、まわりの人や物事が、さも自分に悪意を持っているかのように感じるという。

「きっと、あいつは悪口を言って、笑っているんだ」

「こんなことすると、きっとバカだと思われている」

人は、そんなに他人のことは見ていない。

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