妖怪図鑑6:浄瑠璃蜘蛛
美女から生えた無数の腕。その指先からキラキラと光を反射する細い糸が伸び、周囲の人々にまとわりつく。まるで人形浄瑠璃のように、見えるか見えないかという脆弱な糸で人々を意のままにあやつろうとする。
それが浄瑠璃蜘蛛である。
ひたすらに、周囲を支配することを欲する妖怪である。
その糸に捕らえられた犠牲者が、その意に従わないときは、激昂とともに激しく叱責する。極端な場合、異なる意見や自由な感想すらも許されず、敵対的行動として問題視される。周囲に求められるのは、ただ服従ばかりである。
支配や管理は、その場に秩序を生む。
しかし、その場にいる一人ひとりの自由は失われる。
浄瑠璃蜘蛛が求めているのは、秩序ではなく、まさに「自由を奪うこと」なのだ。他者の自由を奪い、他者が服従する姿を見ることで、ようやく自分の影響力を実感することができる。そして、安堵のため息をつく。
浄瑠璃蜘蛛の正体は、打ち捨てられたボロボロの操り人形である。それゆえ、他者から見捨てられることに強い不安を抱きつづけ、異質なまでに肥大した劣等感を抱く。
私は、常に、上位者でなくてはならない。完璧でなくてはならない。人気者でなくてはならない。優越感を感じなくてはならない…。
その根底にあるのは、自分自身の人生に対する根深い不満、そして自分が見捨てられることへの強い不安である。
その姿は、他者の目線に縛られている不幸な操り人形そのものではないだろうか。
■退治方法
①自分が憑りつかれた場合
・支配欲は、自身の弱さゆえの反動だということを理解する。
・カナダの精神科医エリック・バーンの名言を唱える。
「他人と過去は変えられない。自分と未来は変えられる」
・秩序を生むのは、方法論の共有ではなく、目的意識の共有である。
②憑りつかれた人を相手にする場合
・関係を断ち切れるならば、断ち切る。
・表面上は同意することで、場を納める。
・支配されているようで、支配しているのはこちらだということを意識する。
・他者の評価に怯えている姿を見抜く。