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言霊になれない言葉たち。

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記事一覧

クラクションとサイレン

海のある街に育った私は
波音だけが聴こえない。
夜が堕ちた砂の上は
間際の声を並べて攫われ続けているだけ。

事実と結果だけを突き付けられる人生。
産声を上げた側から塞がれていくのと同じ。

引きづられる流木が月明りに浮かべば
溺れる赤ん坊の手に見えた。
夜に向かう波に紛れて
私だけを誘う声が聴こえ続けている。

目が覚めても闇の中。
産声がもう聴こえない。

握り締めてた筈の赤ん坊の手が月明りに

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藻屑

藻屑

美味しいと食べながら、笑う。
痛いと擦りむいた手を見せて、泣く。
今日ねと目を輝かせて、喋る。

大丈夫だと、何度も何度も笑う。
痛くないと、何度も何度も笑う。
今日ね、と何度も何度も笑う。

2人共バカと小さく、言う。
2人共好きだと、言う。

最後に行った場所は海。
3人で何を見ていたのだろう。

夜の誕生日

夜を見つめる幼い目。
強く手を握り怯えている。

暗いのが怖いわけではない。
別に誰を頼るわけでもない。

口笛が高く切り裂く道の途中。
どちらも正しい別れ道がある。

夜が明けるのを見つめる幼い目。
時間ではなく太陽を待っている。
怯えているのではない。
逃げない様に捕まえていた。

迷子になった私は声を高く響かせ
繋いだ手から溢れた汗を拭う。
どちらも正しい別れ道。
それでも私は選べない。

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他人事の人生

他人事の人生

夕日が溺れて黙り込む隙間に
焼け付いた日常を重ねてただ見ている。
海の底から見上げた光
音もなく黙り込んでまだ見上げ続けている。

誰かが叫ぶ声に耳を塞いで目を閉じて。
私は此処に居ないと叫んでいた。

憧れて東京

憧れて東京

このまま無口に追えば良かった。
自由に見つめているだけで良かったのに。
いつしか知って欲しいと願ってしまった。
あのまま知らずに逃げていれば良かった。

砂時計を逆さにしても
時間が経つのを愛しく思えて
次第に暮れる窓にカーテンを敷く。
映らない幸せを信じ過ぎて
涙が溢れて砂が乾く。

惨めに夜目覚めカーテンを捲る。
暗闇に浮かぶ私を愛しく思う。
独りよがりの幸せを掻き集め
手の平の砂を弄び朝を待

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独り言

独り言

優しいだけの言葉に救われていた。
嘘だらけ。
それでも私は救われた。

部屋の匂いはコンクリート。
ほこりだらけ。
だから私は生きて来れたんだ。

落ちる涙は沁みる事なく弾かれた。
泣く事の無意味さを
いつまでも教えてくれている。

冷たい言葉を抱きしめて
夜に浮かんで弄ぶ。
少し月に例えた悲しみは
夜に沈まない涙に変わればいい。

海を見上げれば

海を見上げれば

貴方の為だけに現れた夕日が
今日も夜に潰されていく。

貴方の為だけに祈る唄が
灯台の光の瞬きに消えていく。

今日の終わりを手で探り
深海へと続く生きる事への渇望が
まだ見つからない。

私の朽ち果てた身体の中
音だけが命を教えている。
貴方から途切れた音を探している。

今日の続きを手で探り
月へと続く道を沈みながら歩いて行く。

私の沈んだ後に見上げた月は青い。
音だけが無く眩しさに目を瞑る

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日陰

日陰

明日から独りで生きて行く事は
私以外みんな知っていたのね。
少しづつ話し合いを重ねて
私以外みんな納得していたのね。

タバコを吸って吐いた先にある
長い影を引きずる女は
どこか私に似ている。
溜め息も出ないで吐いた息が
いつかの夜の月を隠すだろう。

そう言えば
パパとママのどっちが好きだと
交互に毎晩尋ねていた。
何て答えていれば
独りにならずに済んだのだろう。
そう言えば
私は産まれて良かっ

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煙草の煙に包まれた

何を見てもあなたを思い出す世界に
独り取り残された。
変わらず笑い声に包まれた世界に
音だけを失くした。

暗闇ではなくただの黒い夜に
途方に暮れて
あなたの声に似ている音に
ただ手を伸ばした。

何を見ても過去に重ねて
時間を止めて。
何をしても過去に重ねて
今から目を背けて。

あなたの居ない世界で
光を感じてしまう事が
ただ怖くて。
壊れた夜の隙間に逃げた。

あなたの居ない世界で
初めての

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生まれた嘘

生まれた嘘

初めて見たのは泣き顔。
ただ光に包まれた小さな生命。
抱き締めながら私は
自分の強さと弱さを知りました。

正しい事への怖さを
それを貫く脆さを
闇の中でしか光は射さない事を、
奪われた時間が囁いている。

最後に見たのは笑顔。
ただまっすぐ見つめる幼い生命。
抱き締めながら目を背ける私は
吐かれた純粋な嘘に憩おう。

涙だけでは癒せない傷。
死ぬ事でも戻せない時間。
概念ではない事実だけが転がる

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狂気と人形

突き飛ばされた駅のホーム
貴方の躊躇いで死なずに済んだ。
人混みに紛れた貴方の顔
忘れるはずもなかった。

他人の靴を履いた様な違和感が
私を包む電車の中。
他人の視線が捻れてぶつかり熱く
私は異物の様に焦げる。

駅のホームは今日も人に溢れて
私はいつもと同じ最前列で俯く。

私の知らない他人が
私の事を知っている。
貴方を知らないはずの私は
貴方をずっとさがしている。

いつもの風景なのに

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青い祈り

青い祈り

目が覚めれば独り切り。
朝の光が輪郭を滲ませていた。
昨日の残像を思い出すのは
夢から覚めた悪夢。
瞼の裏に色が継ぎ足されていく。

押さえつけながら始まる朝。

目を閉じても独り。
月の光が熱帯夜を運んでいた。
寝言で呟く祈りの言葉。
縋り付き引き摺る長い影に怯える。

それでも生きている私。

もうすぐ会えるから
待っていてねと笑う。
月の光は太陽だと知らずに。

土曜日の昼

土曜日の昼

魚の焼かれる匂いがする。
吐き気がするほど腹が減る。
隣の家からだと気が付いて、
ランドセルを投げ捨てた。

ブランコは
いつも夕暮れに揺れている。
砂場は猫と一緒に眠る場所。
ブランコは
いつも夜に止まる。

母を演じる他人が夫婦の舞台から降板し
寂しさを演じる子供の目に映る世界を
僕は探している。

駆け出せば坂道
転ばないと止まれない。

月光の迷路

月光の迷路

約束を交わさずに済んだのは
せめてもの救いになった。
金曜日の夜は月が青かった事
思い出せたから救われた。

夜に降る雨にだけ濡れる花を見た。
悲しく無いのに涙する夜に重ねていた。

最後の言葉を呑み込んだのは
青い月が雨を呼ぶ事を知っていたから。
子供の泣く声が雨によく沁み込んで
地面に落ちる前に消える煙草の煙。

声のある方に振り返っても、独り。
いつかどこかで会えると確信しながら
言い聞かせ

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