狂気と人形
突き飛ばされた駅のホーム
貴方の躊躇いで死なずに済んだ。
人混みに紛れた貴方の顔
忘れるはずもなかった。
他人の靴を履いた様な違和感が
私を包む電車の中。
他人の視線が捻れてぶつかり熱く
私は異物の様に焦げる。
駅のホームは今日も人に溢れて
私はいつもと同じ最前列で俯く。
私の知らない他人が
私の事を知っている。
貴方を知らないはずの私は
貴方をずっとさがしている。
いつもの風景なのに
貴方だけがいない。
気紛れ死にかけた私は
迷子になった貴方に殺されかけ、
日常に溶けた貴方は
私の違和感の中で輪郭を残す。
誰が死んだか分からない世界で
今日も私は探し続けている。
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