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月光の迷路

約束を交わさずに済んだのは
せめてもの救いになった。
金曜日の夜は月が青かった事
思い出せたから救われた。

夜に降る雨にだけ濡れる花を見た。
悲しく無いのに涙する夜に重ねていた。

最後の言葉を呑み込んだのは
青い月が雨を呼ぶ事を知っていたから。
子供の泣く声が雨によく沁み込んで
地面に落ちる前に消える煙草の煙。

声のある方に振り返っても、独り。
いつかどこかで会えると確信しながら
言い聞かせているのは忘れる事だけ。

いつかどこかで泣いていた子供の声。
過ぎ去る一切に忘れ掛けた迷路の中。

二人はお互いに迷子になっただけ。

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