煙草の煙に包まれた

何を見てもあなたを思い出す世界に
独り取り残された。
変わらず笑い声に包まれた世界に
音だけを失くした。

暗闇ではなくただの黒い夜に
途方に暮れて
あなたの声に似ている音に
ただ手を伸ばした。

何を見ても過去に重ねて
時間を止めて。
何をしても過去に重ねて
今から目を背けて。

あなたの居ない世界で
光を感じてしまう事が
ただ怖くて。
壊れた夜の隙間に逃げた。

あなたの居ない世界で
初めての夜。
煙草の煙だけが
光を教えてくれる。

煙に透けた光に
あなたを感じなくなった朝。
忘れられない言葉を
思い出す事もなく
もう一度眠っていた。


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