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わたしの本棚

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#みんなの文藝春秋

わたしの本棚142夜~「人生を豊かにする歴史・時代小説教室」

わたしの本棚142夜~「人生を豊かにする歴史・時代小説教室」

 とてもわかりやすい本で、面白かったです。3人の作家の先生(安部龍太郎氏、門井慶喜氏、畠中恵氏)のデビューまでの努力、目指す方向をオール読物編集長の川田氏がインタビュー形式で聞き書きされています。同時に、新人賞応募者向けの実践的アドバイスも書かれています。何より、歴史・時代小説の創作過程が現代小説とは全く違うというのがよくわかります。実際の歴史の出来事や人物をベースに書かれたものが歴史小説、舞台は

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わたしの本棚119夜~「彼岸花が咲く島」

わたしの本棚119夜~「彼岸花が咲く島」

 昨年韓国映画「マルモイ」を観て、母国語を変えられた人たちの悲痛な叫びを知り、今年、日本統治下の台湾でも日本語の強要があったこと知りました。そして、今回の芥川賞受賞作。二ホン語、女語が入り混じり、女性の統治と島全体が共同体のような架空の島を舞台にしたこの小説。読み応えありました。今回、文藝春秋9月号は、芥川賞2作品の全文掲載、選評もあってお得でした。

☆「彼岸花が咲く島」 李琴峰著 文藝春秋9月

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わたしの本棚116夜~「知的ヒントの見つけ方」

わたしの本棚116夜~「知的ヒントの見つけ方」

 立花隆氏が亡くなってから、追悼特集がテレビやネット、雑誌、本などのメデイアであり、近くの本屋さんや図書館も追悼コーナーが設けられています。そんなか、手に取った1冊です。文藝春秋の巻頭を飾った随筆(2014年8月号から2017年12月号)、特集記事と別のメデイアに頼まれて話をした記事をまとめた構成になっていました。

☆知的ヒントの見つけ方 立花隆著 文藝春秋 文春新書 920円+税

 「知の巨

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わたしの本棚109夜~「在宅ひとり死のススメ」

わたしの本棚109夜~「在宅ひとり死のススメ」

 今年は、在宅死に関する書籍、映画が話題になっています。長尾和宏先生の「痛くない死に方」(高橋伴明監督で映画化)、南杏子先生の「いのちの停車場」(成島出監督で映画化)どちらも医師の立場から在宅死の在り方、終末医療のあり方を問う作品で、読みごたえ、観ごたえありました。どんどん高齢化社会になっていく日本では避けては通れない問題です。そして、おひとりさまの立場から、上野千鶴子先生が書かれたのが「在宅ひと

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わたしの本棚103夜~「空白の天気図」

わたしの本棚103夜~「空白の天気図」

 緻密な調べによる熱量のある本でした。読後、ずっしりと胸に迫るものがあって、読書の幸福感を味わえた本です。

 2016年公開の片淵監督「この世界の片隅に」を30分長くした(シーンを増やした)2019年公開の「この世界のさらにいくつもの片隅に」のDVDを借りてみました。そこには、広島原爆のあと、9月17日の枕崎台風による被害も描かれていました。主人公すずさんの住む呉市の北条家も屋根が壊れ、家の浸水

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わたしの本棚98夜~「なんで家族を続けるの?」

わたしの本棚98夜~「なんで家族を続けるの?」

 面白かったです。樹木希林と内田裕也の娘として、家族団らんを知らずに育った内田也哉子。両親の不和で、巨大なブラックホールを抱えて思春期を過ごした中野信子。両親が仲良く、子どもがふたりぐらいいる、というのを理想の家族とする日本の、家族の模範形態。異議あり。いろんな家族のあり方を問う、多様な家族形態のなかでの幸せの追求、自身の家族をセキララに語るふたりの対談集です。

☆「なんで家族をつづけるの?」内

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わたしの本棚94夜~「満月珈琲店の星詠み」

わたしの本棚94夜~「満月珈琲店の星詠み」

 「読書の秋2020」で気になっていた課題図書です。京阪沿線沿いと京都市街が小説の舞台になっており、わたしの生活圏であることもあって、手にとりました。2000年代に流行ったケータイ小説を思わせるような、改行が多く、WEBのような、さくさくと読める文章でした。

   画像はApple bookさんのを借りました。 

 あとがきを読むと、SNS世代ならではの小説。占星術好きな作者がSNSで西洋占星

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