秋村有意
ごく普通の短編小説です。どれも面白いので是非。
不定期で日記書いてます。その日あったことやその日に考えたことを大抵は書いてます。
色々な人から写真を貰い、それを見て考えついた物語を書きました。そこそこ面白いので是非。
Phrase Plusで作った単語をお題にして、短編小説を書きました。わりに良いのもあるので是非。
#1 もし、もしだよ? と君が頬を赤らめながら切り出してきた。僕は彼女と窓の奥にある美しい夕暮れを見ながら、うんと頷く。 「一日、何をしても幸せな日になるとしたら、誰と過ごす?」 それは高校生にしては幼すぎる質問だった。僕は思わず吹き出してしまう。片手間にやっていたゲームをやめてスマートフォンの画面にロックをかけ、机に置いた。そうして、彼女に顔を向けた。そもそも、こんな質問をするなんて彼女にしては珍しかった。普段は物静かで、あまり人と接しているタイプではないからだ。僕も初め
1 じいちゃんが亡くなった。母方のじいちゃんは僕が小学二年生の時に亡くなっていて、記憶はほぼない。どっしりしていて、撫でる手が大きかったことはほのかに香る程度に覚えている。しかし父方は関わりがほぼなく、何度か会いに行ったくらいだ。電話で話すことは多々あった。というのもクリスマスプレゼントをわざわざ送ってくれたりお年玉を父経由で頂いたりしていたからだ。電話でお礼を言うと必ずと言っていいほど、「自分のことは自分でなさい」と叱咤された。当時はよく分からなかったし、反発していたように
才能ないやる気ない、これといって熱中することもなく、悪戯に時間を浪費している。 今の仕事だって生活費を稼ぐためにやってるだけだし、何かスキルを身につけるためにやっているわけではない。 しがらみから離れ、ドロドロした環境から抜け出し、一人音楽だけを諦観と共に聴くのもひとつの人生ではないか。外を見れば、僕は鳥籠に幽閉されている小鳥なのかもしれない。しかし肯定さえすれば、素敵な人生、多様な幸せのひとつなのではないか。 死ぬ勇気も、生きる勇気もない僕には案外合っている生き方のような気
1 何か書きたいのに、書けない。描きたい気持ちすら本物なのかすら分からない。文章として成り立っていなくても、自分の気持ちを整理していくように書き連ねていこうと思う。あるべき棚に僕の気持ちを整理していくのだ。正しく、あるべき場所に。 仕事を辞めたい。仕事がしんどい。自分より大変な人たちがいるのは分かってるけど、しんどいんだから仕方ない。職場の環境、関係何もかもなくして自由になりたい。しかし自由になったところでじゃあ僕は何をするんだろう? 怠惰で、無価値で、無意味で、どうしようも
ついこの間までは夏だったのに、あっという間に冬になった。冬になってようやく冬服を買った。冬は夏よりも好きだ。だけど冬特有の寂しさがやって来て僕をいじめる。冬を共有できないという寂しさ。僕はこの冬を一人きりで乗り切らなければならないという絶望。 駅前はイルミネーションが施されて、浮き足立っている。僕だけがしっかりと地面に着地している。はずなのに、ずぶずぶと沈んでいくような感覚にとらわれる。 世界は僕を残してどんどん進んでいく。周りの同級生が年齢を重ねているという事実を受け止めき
仕事柄(と言うとなんだか仕事出来る人間みたいだけど)、外国の人が多い。国籍も様々で、アジア系からヨーロッパ系、北欧系だっている。僕が仲良いのは、ネパールの人。人当たりのいいおばちゃんで、僕が挨拶すると必ず僕の名前を呼んだ。仕事の部署は違うけれど、連携してやるわけだし、しょっちゅう話しかけられる。「忙し?」、「今日暇ね〜」、「早く帰りたよ」と。全部カタコトだ。休憩時間が被ると一緒に昼ご飯を共にする。よく愚痴を聞いてもらったりする。僕は別に外国人ということを考慮しないから分かって
虫は飛んだ、空を夢見て。そして死んだ。 22日に給料日が入って、嬉しい反面、このまま1ヶ月間この給料は増えることなく減ってく一方なのだと思うと悲しくなった。僕は貯金なんてしてないから、増えることはない。じゃあ貯金しろよってね。 うるさいバカ、何万と貯金したって死ねば使えないんだぞ! 僕の貯金肯定派と否定派が争った結果、否定派が勝った。というより欲に負けて好き放題使ってるだけだ。まぁいいや、今が良ければそれで。未来に苦しむことが分かってても、目先の楽には勝てっこない。 夏が台風
一人の夜が必要になる時、お前は独りじゃないと思い出すべきだ 一人の夜、僕はなるべくベランダに出るようにしてる。ベランダならタバコ吸ってもバレないし、空が見える。もしかしたら同じ空を同じ気持ちで眺めてる人がいるかもしれないじゃないか。 難点なのは、飛び降りて自分を痛めつけたくなるくらい。 「あのね聞いて!」って小さい子供に言われた。知り合いのお子さんで、僕は子守り(と言っても小学一年生くらい)をしていた。 「今日ね、〇〇ちゃんがね」 と嬉々として僕に話しかける。僕はうんうん
特に言うことはないけどさ、と僕はいわれた。含んだ言い方に「すいません」と何かをした訳でもないのに謝った。謝ったもん勝ちだ。向こうが気に障っていたのなら謝って正解だし、向こうが何も思ってないのならこっちが謝り損するだけ。なんて素晴らしいことだろう。少なくとも、怒られることはない。僕の自尊心だけがガリガリもかき氷機のように削られて溶けていくだけ。 僕の知人ももう何人かが仕事を辞めた。新しく仕事をする人もいるし、ふらふらとしてる人もいる。僕もそろそろ限界なような気がする。限界、なん
もう夏は終わりました。今は夏ではなく、残暑という最も要らない季節です。秋ほど涼しくなく、夏ほど煌びやかではない季節、それが今。夏を取り戻そうと必死に足掻き、無駄に終わる今。昨日は半袖、今日は長袖、明日は半袖、それが今。カンカン照りだったはずがやたら重い雲が空を支配する。タバコを吸うと蚊に血を吸われるのに、少し肌寒い。 曖昧で、ぼやけてて、どうしようもない人達からエモい、なんてバカにされる季節。 大抵薄暗いし、ずっと頭が痛くなるし、可哀想な季節。 でもきっとその季節を好きにな
夏といえば、朝焼けだ。というのも僕は七月、八月にかけての夏、ホテルの朝食番として働いていたからだ。朝の四時くらいには起きて、六時前にはホテルで働いていた。朝食番というのは平日は忙しくないものなのだが、夏だけは違った。常に百人程度の宿泊者が朝ご飯を食べに来ていた。 朝焼けは好きだった。キラキラしていたし、何より、駅のホームには誰もおらず独り占めしているような気分が好きだった。惜しむらくは高いところから一度も見れなかったことだ。 夏の思い出を探ったけれど、良いことなどひとつもなか
渋谷の交差点は狂乱とも取れるような喧騒で震えていた。僕のように落ち着いてる人たちもいたが、それは仕事で来ている人や待ち合わせで1人になっている人だけだった。背広を着たサラリーマンは白い吐息を出しながら、早々と街を歩いていた。僕のように誰かを待っている人はみな、スマートフォンに目を向け、他人の視線を遮断させているようだ。僕はぼんやりと上空を眺める。冬特有の澄んだ空気(とはいえ渋谷だけれど)と、雲ひとつない青空。背の高いビル群があった。 僕は震えるはずのないスマートフォンが震える
隻羽の天使は飛べない 片っぽしか羽がないから 飛べないから天使なんかじゃないと、みんなから嘲笑われてる 彼女は自ら自分の羽を切り落としていた 鋸でぎこぎこと付け根の部分を切断しようとしていた 彼女は羽について何も話さない きっと、話したところで誰にも理解なんてされないから。 彼女の気持ちも、何もかも 理解されない、ひとりぼっち 飛べないから地上にいるけど、人間からは嫌われてる 羽が生えてるのが気持ち悪いから 天使たちからはばかにされている 彼女は泣か
タバコを吸うことで、吐き出す時に何かこの心の奥にある不安も一緒に出るのではないかと思い、タバコを吸っている。しかし一切そのようなことはなく、僕の財布からは金だけが消えていくのだ。 今僕は大きな大きな崖にいる。飛び降りれば確実にその命を散らすことが出来るくらいの高さだ。 さて、と僕は立った。飛び降りるのは勇気がいるので、まず手元にあったスマートフォンを投げた。音もなく、僕の相棒は死んだ。 青い海と空、うるさい白鳥、波の音、潮風、磯の香り、鳥肌になってしまうほどの気温、恋人の温も
年が明けた。成人した。何か問題でも? 小説は結局年内に書き終えることは出来なかったし、嫌な2022年の幕開けだ。どうせ、機械のように働く年になるのだから、良い年になるわけが無いのは何となくわかっていた。そういえば事業計画書というのを自主的に作っていて、小説が遅れているっていうのもある。正直、自分には経営する才能がある気がする。かなりいい線をいったコンセプトの喫茶店&バーの計画を練っている。一生こき使われる人生なんて嫌だから。 でも何でそんな自信があるのか分からない。だから「か
昨日、DMで話していた幼馴染を僕が言葉で殺してしまいました。僕が君なんて不必要だとか、生きる価値がないとか弱っている彼女にそんな酷い言葉をかけなければ、彼女は首を吊ることはなかったのだと思います。彼女の家は騒然としていて、僕の家は近くだったので余波がこちらにまでやってきました。別に僕は罪悪感なんてありません。彼女は元々死にたがっていたのですから、おそらく本望だったのでしょう。それが構ってほしくて言っていたのか、もう真偽は確かめられませんが。 しかし言い訳がましく言いますが、僕