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#59 「化けの皮」を被って生きています
(1612字・この記事を読む所要時間:約4分 ※1分あたり400字で計算)
日常生活の中で、ふとした瞬間「はっ」と気付かされて悲しい気持ちになることがある。
どんなに自然に振舞っているように見えても、自分は結局『擬態』して生きているに過ぎない、という現実を知らされた時だ。
以前のnote記事でカミングアウトしたように、私は「ADHD&ASD傾向あり」と診断された者である。
所謂グレーゾーンだ。
人間関係での温度差が掴めず、グイグイ距離を詰めてしまったり、
興味のある話をし出すと、会話が一方的になり話が止まらなくなったり、
言葉の裏の意味が分からず場の雰囲気を気まずくしてしまったり。
辛抱よく私の相手をしてくれた人もいたが、愛想が尽き限界を超えると、皆次から次へと離れていった。
「またやってしまった」という虚無感に包まれる時間が、とてつもなく苦痛だった。
ただこのままではいけないとも思っていた。
これから先数十年もの人生、「私はADHD&ASD傾向があるから」という理由で我を貫いてしまうと、自分も他人も苦しくなる。
社会生活も出来なくなる。
それと、私だっていつかは深い仲を築ける誰かと出会い、心を通じ合い愛し合うという経験をしてみたいのだ。
だからあれやこれやと工夫を繰り返し、試行錯誤をしてきた。
たくさんの本を読んだ、コミュニケーションのノウハウについていっぱい学んだ。
当事者会に頻繁に足を運んだ。
検査を受け、得意・苦手分野を洗い出して、「出来る」を伸ばし、「出来ない」を一つずつ克服していった。
ある程度仕事力があれば、多少のコミュニケーション力が無くても認めてもらえることを知り、色んなことを勉強した。
そうしていくうちに、助けてくれる人がどんどん増え、いつの間にか理解者に囲まれるようになった。
職場でも認められ、友達も一人、二人と増えていった。
多少時間がかかったとはいえ、無事に苦なく社会生活が出来るようになったのだ。
今は昔のような自己嫌悪感も随分と減り、ほとんどの時間を自信・自愛の気持ちで過ごせるようになった。
それだとしても、ふとした瞬間に思い知らされるのであるーー
どんなに自然に振舞ったって、
所詮『擬態』して生きているに過ぎない、と。
それは例えば誰かが何かを話した後、周りが一斉に理解を示す中、自分だけがまだ状況を掴めていない時。
話し方に気を付けなきゃと強く意識してきたものの、相手と仲が深まり自然体がぽろっと出てくる時に、「君の会話の仕方は乱暴で一方的だ」と指摘される時。
近いところまで来たとしても、誰かの心に入れない、且つ誰も自分の心になかなか入らないと気付いた時。
そんな時、「自然体」という化けの皮が剝がされたような気がして、うろたえてしまう。
ああ、私はやっぱり、どこか徹底的にズレているのだと。
恐らく私は人の感情や言語や、そういったソフトの部分においての理解と反応が、所謂「健常者」と根本的に違うのかもしれない。
今まで積み重ねてきた社会への溶け込み方も、結局は「分かる」フリをするスキル。
AIのように、ただパターンを覚えてリアクションをするといった程度のこと。
他人と共感しているかどうか、と掘り下げたらかなり怪しいのだ。
そして恐らく逆もしかりで、私が伝えたいことも、実は伝わっていないのではないか。
頭が良くて手際よく仕事をこなせたからって、
調和を乱さず、場の雰囲気作りが上手だからって、
外見が整っていて、美人やハンサムな人だからってーー
それが「お近づきになりたい」と他人から思われる理由にはならない。
ほとんどの人が関係を深めたいと思える相手。
それは「心を通わせられる人」、「自分の気持ちを分かってもらえる人」だからだ。
仲間達と和気あいあいと楽しんでいる時でも、私一人だけが別の空間にいる。
その気持ちの正体が恐らく、心レベル、気持ちレベルで他者とつながっていないからなのだろう。
ただこんな不格好な「化けの皮」だとしても、これがなければ今まで生きてこれなかったわけだ。
今日もぐっとそれを羽織り、静かに正体を中にひそめて生きる。
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