29. 【詩】 花手水 (はなちょうず)
朝目が覚めて
自分の呼吸を確かめる
生きている
それは恵みだと
君が言う
どうしようもなく
寂しさの底の底で
水にくるまれる時でも
好きなものをスキとまっすぐに言えたら
それを幸せと名付けよう
無感動でなければ進めなかった
あの青い夜更けを漕いで
流れる方向に中指の先を浸す
水分に触れた感触も
そのままでいい
流れてゆくものは
後を断たない
けれどもし
ゆきたい世界があって
だけどほんの少し
足りない何かがあって
それを私が持っているなら
せめて半分だけでも
夕べ見た夢を教えて
まだ何もかも始まったばかりだから
一つひとつ一緒に言葉を探そう
犬ふぐりも蓮華も百合も
水面に揺蕩えば
単に茎から自由な花
水は澄んでいる
君も私も
今ここにいるのだ
ただそれだけでいい
この世
いろは
#創作大賞2023 #オールカテゴリ部門
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